1.パーティーの後で

「ふー、緊張したぁ……あんなに注目をされたのは初めてですよ」

「すいません、まさか、あんなに囲まれるなんて……配慮が足りなかったです。でも、どうしてもアルトさんと踊りたくて……」



 サティさんとダンスを踊った後に俺達は魔物や人に囲まれて二人はどんな関係か、俺が何者かを聞かれたのだ。

 魔王であるサティさんが一言、言えばいいのだろうが、「もしかして恋人ですか?」という質問に顔を真っ赤にしてテンパってしまったのである。

 


「助けてくれたエルダーには感謝ですね。彼女がいなければまだあそこでまだ質問攻めだったかもしれませんね」

「そうですね、でも、あいつマジでどこにでもいるな……」



 サティさんの言葉に苦笑する。結局エルダースライムの分体が「大事なお客様です」と言って、俺達をこの部屋に避難させてくれなかったら、どうなっていたことか……あいつには感謝だなと思っていると机の上に手紙があるのに気づく。



『お疲れ様です。イベントの後の男女は燃えやすいと聞いています。頑張ってくださいね。なお、この部屋は防音ですのでご安心ください。避妊は……任せます。その代わり責任を取らなかった場合は……わかってますね?』

「うおおおおお、あのクソスライム!!」

「急にどうしました、アルトさん?」



 俺は手紙をびりびりに引き裂いて、ごみ箱に捨てる。サティさんが心配した声を上げるがそれどころじゃない。

 変に意識しちゃったじゃないかよぉぉぉ。いや……これはむしろチャンスじゃないか?



「?」



 きょとんとした顔をして首をかしげるサティさんの胸はすとんとまっ平だ。今はスライムパッドを外しているのだ。エルダースライムが空気をよんだという事だろう。

 パーティーが全滅して想いを告げることができなかったマッシュを思いだす。酒場でのジャンヌの想いを告げるべきだという言葉を思いだす。いつか立派になったらじゃない……いまだ……俺は今想いを告げるべきなのだ。



「サティさん……パーティーが終わった時に伝えたいことがあるって言っていたことを覚えていますか?」

「え……はい。もちろんです!!」



 俺の様子にただならぬものを感じたのだろう。彼女は一瞬きょとんとしてから、俺の言葉の意図を察したてくれたらしく真面目な顔で向き合ってくれた。視線がぶつかり合う。。

 彼女のその潤んだ瞳とか、最強なはずなのに、どこか抜けたところとか、顔を真っ赤にして緊張した様子でこちらの言葉を待っている様子を見て、自分の気持ちがより強くなるのを感じる。



「サティさん……俺はあなたを守れるほど強くはないです。魔王の仕事を支えれるかはわかりません。でも、サティさんが嬉しい時は一緒に喜んで、悲しい時は一緒に泣いたり、慰めることはできます。もしよかったら、俺にサティさんの横を歩ませていもらえないでしょうか?」

「え、それって……その……そう言う事ですよね。私の隣にずっと一緒にいてくれるって事で……つまり、私と友人よりも上の関係になりたいって言う事ですよね……嬉しい……」



 サティさんが俺の胸元に飛び込んでくる。ダンスの時よりもより近く、彼女の柔らかい感触と、甘い匂いが俺の鼻を刺激する。

 だけど……それ以上に身体の距離以上に心が近くなった気がする。俺とサティさんは見つめ合い、徐々に唇が近づいて……



「これ以上はちゃんと気持ちを口にしてくれないと嫌です。私って結構めんどくさいんですよ」



 唇に指を置いて止められた。しかし、デレデッレに嬉しそうな笑顔を浮かべているサティさんを見れたのでむしろテンションが上がる。

 そうだよな。ちゃんとこういうのは口にしないと相手を不安にさせてしまうってブラッディクロスさんも言っていたな。



「サティさん、俺はあなたの事が……」




 この時俺達は完全に二人っきりの世界に入っていた。だから普段なら気づいた気配にサティさんも反応できなかったのだろう。

 いきなり扉があいて入ってきた銀髪の女性が、抱き合っている俺達を見て驚愕に目を見開いていた。



「すいません、ちょっとお話が……サティちゃんが人間の男と抱き合っているぅぅぅぅぅぅぅ!!」

「うおおおおお!!!」

「きゃぁぁぁぁぁ!? リリス叔母様何でここに?」



 突然の乱入者に俺達は慌てて距離を取る。彼女はサティさんと同様に銀髪だが、子供のように小柄な女性だ。

 胸もサティさんと同じくらいだろう。そして、彼女は再度サティさんを見て、大声を上げた。



「サティちゃんの胸がなくなってるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!!」



 あ、スライムパッドの事知らなかったのね。

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