23.決戦準備
「あ、アルトさん、わざわざ会いに来てくれたんですか!? この服装はどうでしょうか? ちょっと派手でかなと思うのですが……私はいつもの服でよいって言ったんですがエルダーがどうしてもというので……」
サティさんの部屋に訪れた俺を出迎えたのは、レースをあしらった黒いドレスを身に纏っている彼女だった。もちろん、谷間は布によって完全ガードをされている。これなら色々と安心だな。
その表情が少し緊張しているのを俺は見逃がさない。リラックスさせるためにと軽口を叩く。
「とても、似合っていますよ。これならみんな見惚れちゃうかもしれませんね」
「もう、からかわらないでくださいよ……それに他の人に見惚れられなくもいいんです。アルトさんに似合っているっていってもらえるのが一番嬉しいんですから。なーんちゃって」
冗談ぽく笑うけどサティさんは顔を真っ赤にする。クッソ可愛いなおい!! そしてそんな彼女の笑顔を守りたいという想いがより強くなる。
出来れば誰よりも近い所で……そうだよ、簡単な事だったんだ。資格とか他人がどう思うとかじゃない、俺がどうしたいか、そして、サティさんがどう思っているかが一番大事なんだ。
「もう、何か言ってくださいよ。なんかすごい恥ずかしいじゃないですか……」
「サティさん……今回のパーティーが終わったら大事な話があります。俺達の関係に対しての大事な話が……」
「え? それってまさか……」
俺の言葉にサティさんは口をパクパクとしてから、信じられないとばかりに俺を見つめる。
「ふふ、どうです? スピーチの緊張が飛んだでしょう?」
「もう、アルトさんの馬鹿ぁぁぁ、これから話す内容が飛んじゃったらどうするんですか!! でも……楽しみにしてますからね」
「はい、俺もサティさんとのスピーチ楽しみにしてます。もちろん、その後も……」
そうして、しばらく見つめ合った後俺はサティさんの部屋から出る。これで逃げ道はなくなった。俺は心の中でジャンヌに礼を言う。彼女のおかげで一歩踏み出す勇気がでたのだ。
俺のヘタレな恋話を聞いて彼女はどう思っていただろう。呆れながらも俺に喝をいれてくれた彼女はどう思っていたのだろう。わからない……だけど、今度は俺が頑張る番だ。
「デスリッチの記憶に残ればいいってさ……自分は寿命が短いからいいんだってさ……サティさんの事を語る俺をあんな羨ましそうな顔で見つめといて何言ってんだよ。デスリッチの事をあんなに嬉しそうな顔で語っておいて何を言っているんだよ!!」
俺はジャンヌのあの顔を見たことがある。それは親を亡くした直後のアリシアだ。世界に何も期待していないような顔だ。勝手にあきらめるなよな。お前を救いたいって言うやつは結構いるみたいだぜ。
俺はエルダースライムの分体が導く方に向かう。そこは、街を囲む城壁の上だった。ここならばこちらに向かってくる集団がいればすべて見えるだろう。
「やっぱりさ……好きって言ってもらったら好きになっちゃうよな、まんざらでもないんだろ。デスリッチ」
俺は先に待機をして、難しい顔をして外をながめているデスリッチの肩を叩く。
『ふん、勘違いをするなよ。我はカレンの様な顔をしているあの女が悲しむのが気に喰わんだけだ」
「まあ、いいさ。それでどうするんだ? 侵略している騎士を倒すんだろ」
『ふん、あんなやつらは四天王の敵ではない。我らの目的はジャンヌを再び攫う事だ。貴様の鑑定スキルで妖しい奴を見つけつつ、ジャンヌを探せ。後は我が何とかする』
そうして俺達は作戦を開始するのだった。
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