3.二人っきり
「あの……せっかくですし、アルトさんの部屋を見てみたいです」
「別に良いですけど、引っ越して結構立ってますし、あまりものは残っていないですよ」
「はい……それでもいいんです。どんなところで育ったのかなぁって気になりまして……ダメでしょうか?」
親父が出て行って、二人っきりになったサティさんはそんな事を言った。ちょっと照れくさそうにそんな事を言う彼女はともて可愛らしい。それだけ、俺の事を知ろうとしてくれているというのも嬉しいしな。
しかし、俺の部屋に女の子か……アリシアくらいしか来たことないな。なんか緊張してきた。
「ダメじゃないです。じゃあついてきてください。その……本当に大したものはないですからね」
「うふふ、楽しみです。こんな風に男性の部屋にあそびに行くのははじめてで……緊張してしまいますね」
はにかんでいるサティさんを自分の部屋へと案内する。そして、そのまま階段を上がって扉を開く。俺が出た後も定期的に掃除をしてくれていたのだろう。意外と埃っぽくはない。
家を出た時に整理整頓したため荷物はあまり残っていないが……俺は机の上にやたら綺麗にならべられている本を見て、嫌な予感がして冷や汗を垂らす。
母さんまさか!!
俺が慌てて、その本を掴むと同時にやたらと肌色の多い表紙が目に入り、さっと隠す。だけど、もう遅かったようだ……
「アルトさんどうしました? いきなり本を隠して……ふーん、『巨乳勇者調教計画』ですか……いい趣味をしてますね。私と正反対の女の子がタイプなようで……アリシアさんに抱き着かれていた時も嬉しそうでしたもんね」
流石魔王、すごい動体視力だぜ!! サティさんの目が冷たい。くっそ死にてえ!! この年にもなってエロ本が見つかるなんて……
てか、なんで世の中の母親はこういう事をするんだよぉぉぉぉ。気づかなかった事にしてくれよ。あんたらだってこういう事をしてるんだろ。だから、俺が産まれたんだろォォォォ!! 脳内で母さんに文句を言いながら必死に言い訳を考える。
「いや、これはですね……あれです。親父の本なんですよ。なんで俺の部屋にあるんだろうなぁ……あははは」
「なーんちゃって。別にごまかさなくても大丈夫ですよ。アルトさんが巨乳好きって言うのはもう知ってますから。でも……アルトさんは胸だけで人を判断するようなタイプじゃないっていうこともちゃんと知ってますから……」
「サティさん……ありがとうございます。ベッドに腰掛けてください。なんか飲み物でも持って……うおおおお!!?」
そう言ってちょっと拗ねているけど、笑顔でそう言ってくれたおかげで空気が少し軽くなった。まあ、こんだけ一緒に行動をしていれば巨乳好きはばれるよな……
俺がほっと一安心して立ち上がると同時にサティさんの胸元が暴れた。ホラーかな?
「きゃぁ!! エルダー!?」
『失礼します』
その言葉と共に、服の中からスライムがはい出てきた。一瞬黒い布が見えたのは気のせいではないだろう。あれってまさかブラ……いや、落ち着け俺!! 深呼吸だ。迂闊な事をしたらエルダースライムに殺される可能性がある。
「いきなりなんなんですか、エルダー!!」
『ちょっと予定を思い出しました。私は席を外しますね。ちなみにちょっとにやけているアルトさん、黒は魔王のでは勝負服を意味します。意味は分かりますね』
「え? 私の下着見えてませんよね? アルトさん!!」
「いや、その……なんにも見えてませんよ。あははは」
やっぱりブラジャーだったぁぁぁぁ。そして涙目になりながらずいぶんとスレンダーになった胸元を抑えているサティさんの言葉に俺から目をそらして答える。
そんな事をしている間にもエルダースライムは窓から飛び降りて行った。いやいや、街中にスライムいたらみんなビビるでしょ。『ぷるぷる、悪いスライムじゃないよ」っていっても信じてもらえるかわからないし、あいつはどちらかというと性格が悪いスライムだよ……
最後にガッツポーズをして何かを訴えたエルダースライムを見て俺はサティさんの正体を知った時の会話を思い出す。
『あなたは友人と言いましたが、この子の番になる気はありませんか? 責任をとるというのなら、私は席を外しますよ』
そう、エルダースライムは言っていた。そして、黒は魔王の勝負服らしい……つまり黒い下着は勝負下着という事では……
そこから導き出される答えは……
「サティさん、ちょっと飲み物を取ってきます!!」
急な展開についていけず俺は逃げるように部屋から出るのだった。脳内でエルダースライムが「へたれ」と言った気がした
宣伝です。
『トイレの聖女』と言われた彼女に『聖水』を要求するとなぜかやたら顔を真っ赤にしながら渡してくるんだがなぜだろう?』
という作品を投稿してみました。こちらも読んでくださると嬉しいです。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます