16.決戦

俺とアリシアは緊張した面持ちで待ち合わせの場所へと向かう。街から少し離れた廃屋の中にモナが監禁をされているようだ。



「デスリッチのやつはやっぱり浄化しておくべきだったよ!! モナを傷つけたら絶対許さないんだから!!」

「仮にも自分の子孫だしそんな手荒な真似はしないと思うが……あいつはアリシアとかを恨んでるって言うよりも先代勇者と聖女を恨んでいるはずなんだよなぁ……わざわざモナを攫って何を考えているんだろう」



 あいつとは一時期共闘状態になったりなどしたが基本的には敵同士である。だけど、あいつの考えは少しわかっているつもりだった。これが仮に勇者と聖女の血を引く人間を攫ったというのならわかる。だけど、モナやアリシアは違うのだ。

 単純に今までの恨みを返すっていう可能性もあるが、サティさんが近くにいるのにそんなことをするものだろうか? 今度こそあいつ消されるんじゃねえかな……



「おーい、アルトとアリシア!! よかった。今からお前を呼びに行こうと思っていたんだ」

「マッシュ? なんでこんなところに!?」

「大丈夫? 随分と息をきらしているけど……」

 


 手紙の場所へと向かっていた俺達が出会ったのは、いつの間にか姿を消していたマッシュだった。彼はよほど必死に走ったのか、肩で息をしながらこちらへと駆け寄ってくる。



「ああ、モナがアンデッドにさらわれるのを見たからあとをつけていたんだよ。捕らえた場所を見つけたから、今からお前らを呼ぶところだったんだ」

「本当? モナは怪我とかはしてなかった? エッチな事はされていないよね!!」

「ああ、すぐに気絶をさせられていから、そんなに大きな怪我はしていないと思うぞ。それにアンデットはチ〇コは腐ってるからエッチな事もされていないと思うぞ」

「マッシュ……女の子にチ〇コとか言うなよ……」



 必死な表情のアリシアにマッシュが少しびびりながら答える。マッシュの言葉に顔を赤くするアリシアが、なぜか俺の股間を見つめた。俺のは腐ってねえよ!? このエロ勇者め!!

 しかし、俺はマッシュの行動に違和感を覚える。なんでわざわざこんなに必死にモナのために動いるんだ? 仲間や友人ならわかる。だけど、こいつはモナとは少し会話しただけのはずだ。もしや、こいつロリコンなのか……確かにでかい体をしているから小さいものに惹かれるのかもしれない。



「マッシュ……俺はお前を応援しているぞ」

「いや、何の話だよ? それより、モナを助けるんだろ。案内するぞ」

「ありがとう、マッシュ!! ちなみにアンデッドは何体くらいいた?」

「そうだな、三体くらいだ。不意打ちだったからな。例え勇者パーティーの魔術師とはいえどうしようもなかったんだろう」

「え? モナがアンデット三体ごときに……」

「まあ、完全な不意打ちじゃあな……仕方ないだろうよ。それよりもマッシュ、廃屋はどこにあるんだ」



 俺はアリシアの言葉に強引にかぶせて会話の主導権を奪う。彼女が怪訝な顔をしてこちらを見るが、ウインクをして俺の言う事を聞いてくれとアピールして騙らした。てか、なんでそれで顔を赤くするんだよ。なんか俺が勘違い野郎みたいじゃねえかよぉぉぉ




 そして、俺達はマッシュの案内の元廃屋へと向かった。ご丁寧に地図通りの場所にあるようだ。罠なのか、それとも何らかの意図があるのか……そして、俺は少し気が進まないながらも鑑定スキルを使用する。

 ああ、予想通りかよ……俺はため息をつきながら呻く。



「ついたね、じゃあ、開けてもらっていいかな。アルト兄」

「ああ、気をつけろよ。敵がいつ襲ってくるかわからないからな。マッシュは背後の奇襲にそなえておいてくれ」

「え? アルトそんな正面から侵入を……」

 


 アリシアが俺の背後で聖剣を振り上げながら言った。俺はマッシュの言葉を無視をして乱暴に扉を開ける。それと同時に彼女が光輝く聖剣がその力を発揮する。



『はーっはっは、良く来たな、勇者アリシアと二股男アルトよ、警告だが……』

「喰らえ、エクスカリバー!!」

『にぎゃぁぁぁぁぁぁ!!』



 デスリッチらしきやつが何かを言う前に廃屋の中を聖剣のまばゆい光が爆裂して満たす。聖剣は魔物以外にはダメージが無いからな。これでアンデットを倒しつつモナを助けにいけるはずだ。

 


『ぐぅぅぅぅ、クソ勇者が……問答無用で攻撃をしてくるとはな……』

「モナ!! 大丈夫!?」



 完全な不意打ちで悶えているフードを被ったデスリッチが呻いている間に、アリシアがモナの方へと駆け出した。他のザコアンデット達は聖剣の一撃ですぐさま浄化されたようだ。



「んーんー!!」



 猿轡をされて、縄でしばられているモナが何かを言いたそうに俺の方を見て喋っている。ああ、わかっているよ。モナ……



「これ以上近づいたらそこのロリっ子がどうなるかわかっているだろうな。アリシアよ」

「デスリッチこそ……この私の聖剣が君を浄化するよ」



 アリシアとデスリッチはお互いに後一歩踏み出せばお互いの間合いというところで、動きを止める。彼の言う通り、アリシアの聖剣が早いか、デスリッチの魔術がモナを襲うのが早いのか微妙なところであるためお互い動けないのだ。

 だが、デスリッチにはどこか余裕があるようだ。まあ、その余裕はもすぐなくなるんだけどな。



「おいおい、恐ろしいな、アルト……それで、これは何の冗談だよ?」

「もういいんだ……マッシュ。お前さ……もう死んでいるんだろ?」



 俺は剣を背後から襲い掛かろうとしてたマッシュの喉元に剣を突き付けながら言った。正直信じたくなんてなかった。だけど……鑑定スキルは嘘をつかないんだよ……

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