15.作戦会議
「アルト兄どうしよう!!」
「落ち着け、アリシア!! 手紙には何が書いてあるんだ?」
手紙を手にして震えているアリシアを宥めながら、彼女の手から手紙を取ってその中身を確認する。
『このほっぺたぷにぷにロリっ子は預かった。返してほしくば、街外れの倉庫に勇者アリシアとその幼馴染であるアルトと二人で来い。もし来なければ……わかっているな』
もちろんこれを書いた相手の名前はない。アリシアは勇者だ。魔物が狙う理由もわかる。だけどなんで俺まで……? そして、誰がアリシアの命を狙っているんだ?
魔物にしても、四天王のほとんどが人間と手を組む感じになっている今、わざわざ目立つようなことをする必要はないと思うんだが……疑問を解決するために鑑定スキルを使用した。
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名前:手紙
備考:達筆な字で書かれた手紙。少し死臭がする。
製作者の残留思念:こいつマジでNTRNTRうるさいんだが!? 我の子孫ながら将来が心配である。どうしてこうなったというのだ。親の教育がきになるな。NTRは素晴らしいと言うのに……
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やっぱりデスリッチかよぉぉぉぉぉぉ! 子孫とか言ってんじゃん。しかもマジでNTR目覚めてんじゃん。もう犯人確定じゃん。くっそ、一気に茶番じみてきたな……でも、正直今回の件に関しては動機が読めないんだよな。
だって、せっかく逃げたのならばなんでわざわざサティさんの近くでこんな騒ぎをおこす必要はないだろう。
などと考えていると横にいたブラッディクロスさんが手紙を覗き込んだ。
「フッ、なるほど……典型的な誘拐だな……ふん、相手はアリシアの命が目当てか……だが、腐っても勇者パーティーの一員であるモナを誘拐するとは相当な手練れと見た!! 相手は魔王の四天王クラスかもしれんな!! それでどうするのだ、アルトよ」
「え、そんなもん助けに行くに決まってるだろ。アリシアの親友だし、こうなったのは俺とアリシアのせいなんだからさ。なあ、アリシア」
「うん、当たり前だよ……それに、私はちゃんと話さないといけないから……」
「フッ、そうか……ならば私もできる限りの協力をすると誓おう」
俺達がうなづくと、ブラッディクロスさんはなにやら嬉しそうに微笑んだ。隣のアリシアはさきほどまでへこんでいたが、モナのピンチにやる気が戻ったようだ。相手はデスリッチだし、何とかなるだろ。
そう思っていると周りが騒がしい事に気づく。
「なっ……四天王クラスの魔物だって……?」
「マジかよ……アグニといい、この街は最近どうなっているんだ?」
ブラッディクロスさんの言葉がたまたま聞こえてしまったのだろう冒険者ギルドが大騒ぎになる。そうだよな……俺とかしょっちゅう四天王と一緒にいるからあれだけど、普通の人からしたらやばい連中なんだよな……
「フッ、皆の者、落ち着くがいい!! お前らの目の前にいるのは誰だ? そう、四天王の一人のアグニを撃退せし、ローグタウンの英雄ブラッディクロスである!! 四天王ごとき相手ではない!! お前らは私の四天王撃退のパーティーの準備をしておけ!!」
「うおおおお、ブラッディ!! ブラッディ!!」
「頼んだぜ、英雄ブラッディクロス!!」
ブラッディクロスさんの言葉に冒険者達が歓声をあげる。さすがだぜ、ブラッディクロスさん!! これでチラッチラッとサティさんの方を見てウインクをしていなければもっとカッコよかったんだけどな。
そのサティさんだが俺の方へとやってきてこっそりと耳元で囁く。フワッ香る甘い匂いがなんとも心地いい。
「矢をうったのはスケルトンでした。捕らえたのですが、自我はなく、情報を得る事はできませんでした。お役に立てずすいません……」
どうやら、矢が撃ち込まれたと同時に外の敵を捕えに行ってくれたようだ。さすがはサティさんである。俺は申し訳なさそうにしているサティさんにほほ笑んだ。
「いえ、助かりました。それに犯人はもうわかっています。手紙を鑑定したのですがデスリッチが絡んでいるようです」
「またですか……本当にあの男は……そろそろ成仏をしてもらうしかないようですね……」
俺の言葉にサティさんが頭を抱えて呻く。そんなサティさんを慰めるように肩を叩いているととすさまじい殺気を感じた。
「ええい、リア獣が……今の私の行動でサティさんの好感度が上がるはずだったのに……」
え、ブラッディクロスさんこんな殺気だせんの? いや、違ったわ。その奥にいるアリシアだわ。すごい不満そうに頬を膨らませている。肩を叩いただけじゃん。お前は昨日もっとやばいことしてたじゃねえかよぉぉぉぉ。
「とっ、とりあえず、俺はアリシアとブラッディクロスさんの三人とモナを助けに行ってきます。サティさんはデスリッチが何をしようとしていたかを探っておいてもらえませんか? どうも、あいつらしくない気がするんです。あいつが先代の勇者や、聖女に手をだすならわかります。でも、今回あいつは自分の子孫のモナや、アリシアへの攻撃をしています。なんというかあいつらしくないんです……」
そう、俺がアンデットを見つけてもデスリッチとむすびつけられなかったのにはそれがある。あいつがアリシア達に捕らえられたのは、かつての勇者と聖女の子孫が治めていた領土で、アリシアを騙してサティさんを襲ったのもすべては先代勇者への復讐のためである。
あいつはいつも先代勇者への復讐のために生きてきたのだ。わざわざモナやアリシアを襲う理由がないのだ。
「構いませんが……私がついていかなくても大丈夫ですか?」
「はい、デスリッチ相手ならアリシアがいれば何とかなると思いますし、それに、俺には秘策がありますから」
「フフ、なんかアルトさんも頼りになりますね。ではそっちは頼みます。私は魔物達にデスリッチに関して知っていることがないか聞いてみますね。あと……エルダー!!」
「うおおおおおおお、またサティさんのおっぱいが小さく……なってない!?」
一瞬で右のおっぱいがへこんでエルダースライムが飛び出して俺の服に入っていくと同時に、新しい胸がサティさんに追加された。そんな予備のおっぱいだと!?
「ふふん、実はこれはウィンディーネが非常時にと言って渡してくれたんです。友情の証だそうです。っきゃぁ……失礼しました。時々勝手に服の中で動くんですよこれ……」
サティさんは誇らしげに言っているが、絶対に友情の証じゃねーよ。欲望の証だよ。あのおっぱいも絶対自我があるよ。
まあ、世の中には知らない方がいい事があるものだ。
「よし、アリシア、ブラッディクロスさん、まずは俺の家と本屋によってからいくぞ。俺に策がある」
「でも、アルト兄……手紙では私とアルト兄だけって話だったけど、ブラッディクロスもいて大丈夫なの?」
「策があるって言ったろ。大丈夫さ」
そうして、俺達はデスリッチの元へと向かうのだった。
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皆様にご報告です。この作品が電撃の新文芸様で書籍化されます。
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