3.モナ=アンダーテイカー

俺達冒険者は強さを重視する。だからというわけではないが、ゴブリンの死体の後処理をした後に俺達はモナと雑談をしていた。身分の高いであろう彼女は冒険者に過ぎない俺達に難色を示すかと思いきや、そんなことはなく、むしろ泥臭い冒険譚に興味を持ってくれたようだ。



「へえー、王都からわざわざ来たのか、道中大変じゃなかったか? あ、飴食べる?」

「子ども扱いをしないで欲しいわね。私は王都でも強力なパーティーを組んでるんだからね。もらうけど」



 文句を言いながらも飴を口にして、「美味しい!!」と年相応に目を輝かしている少女を見て、俺は微笑ましい気持ちになる。

 王都で強力なパーティーか……まあ、彼女の実力ならばありえるだろう。でもさ、俺は勇者とパーティーを組んでいるんだぜと内心得意げな顔をする。



「それで、王都で活躍している魔法使い様がこんな田舎にまで何をしに来たんだ? 別に名物とかもないが……」

「ああ、ちょっと人探しに来たのよ。私のパーティーメンバーで大切な親友がいるんだけど、その子の恋人がこの街にいるらしくて、会いに行って帰ってこないのよ」

「あー、そういう感じかー。恋人に久々に会って色々ともりあがっちゃったのかもしれないな……それで連れ戻しに来たっていう感じか」



 俺はモナの話を聞きながら、時々聞く話だなぁとうなづく。王都に出稼ぎに行っていた職人なり冒険者が田舎に里帰りして、そのまま帰ってこないという話はよく聞く。

 ここから王都は結構離れているし、王都で活躍するほどの腕前があるなら食べるには困らない。モナの友人はお金や名誉よりも、恋人と一緒にいる事を優先したのだろう。


 でも……わざわざ王都から様子を見に来るっていう事はよほどの重要人物か、この子にとって大切な人なのか……はたまた両方だろう。



 こりゃあ揉めそうだなぁと少し心配していると彼女は少し寂しそうな顔をしながらも首を横に振った。



「ううん、あの子が幸せならいいのよ。私としては寂しいけれど、あの子がその人のためにどれだけがんばっていたか知っているもの。ただ、その恋人が二股していたり、あの子の強さを利用していたら絶対許さないわ」

「おう、そうか……」



 俺はいきなりすさまじい殺気を込めながら街の方を睨みつけるモナに一瞬ビビってしまう。まあ、それだけ大事な人っていう事だよな……ならローグタウン出身の俺なら力になってやれるかもしれない。それに、探し人もひょっとしたら知り合いかもしれないしな。

 そこまで考えて違和感に気づく。最近街に来た中で強い冒険者か……あれ? アリシアくらいじゃない? ちょっと待って……なんかムチャクチャ嫌な予感がしてきたんだが……


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 名前:モナ=アンダーテイカー

 職業:魔法使い

 戦闘能力:999

 スキル:精霊魔術・連続魔・高速詠唱・魔物殺し・etc

 ぷにぷに度:999

 備考:王都にて勇者の仲間の魔法使いとして育てられた才女。英雄オベロンの血筋のものであり、その血を誇りを持っており、子供の頃はジョン=カルディックとよく勇者ごっこをしていた。大切な親友のアリシアの様子を見にきた。非公式だが、王都ほっぺたぷにぷにコンテストの優勝者。ただし勝手にほっぺに触るとまじで切れる。甘いものが大好きで最近体重を気にしがち。NTRは絶対許さない。

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「ひぃ!!」


 やっぱりかよぉぉぉぉぉ。こいつアリシアの関係者かよ。ほっぺたぷにぷにコンテストとか気になる単語はあったがそれどころではない。あれじゃん、親友の恋人って絶対俺じゃん。恋人じゃねえよ、ちゃんと誤解解いとけよぉぉぉぉぉ。

 しかも、今の俺って敵を速攻でアリシアが倒しちゃうせいで彼女の力を利用してクエストをクリアしてるように思われても無理はないんだが!!



「どうしたの? 大丈夫。酔ったらならこれを飲みなさい、状態異常に効果があるポーションよ」


 

 そういうと、彼女は鞄から惜しげもなくポーションを取り出して俺に差し出す。これ結構高いはずなんだが……無茶苦茶いい子なんだろうなぁ……さっきも、お金もらっていないのに魔物を倒していたし……



「いや、大丈夫だ……その、一つ質問なんだが、もしもその親友の想い人がさ、他の女の子の事も気になっているとか言ったらどうする?」

「ははは、面白い事をいうわね」



 そう言うと彼女は一切目が笑っていない状態で微笑んでから吐き捨てるように言った。



「そんなクソ男なら、半殺しにして、意地でもあの子を連れて帰るわ。だって、あの子には幸せになってほしいもの」

「ですよねーーーー」



 なんだろう、胃が無茶苦茶いたくなってきた。

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