24.エピローグ

「アルトさん、アリシアさんこの度は申し訳ありませんでした。せっかくの温泉旅行だったのに、我々魔王軍のせいでこんな事になってしまって……」

「お詫びと言っては何ですが、お二人にはハコネィのパスポートを渡しますわ。次に来た時は温泉と最高級のごちそうをおたのしみくださいませ。本当に申し訳ありませんでした」



 エルダースライムと一緒に俺達が部屋に戻ると、サティさんと元のサイズに戻ったウィンディーネに頭を下げて謝られてしまった。

 いや、ウィンディーネはともかく、今回の件はサティさんは悪くないと思うんだけど……アリシアも同意見だったらしく、口を開いた。



「別に今回はサティさんは悪くないんじゃない? 四天王のウィンディーネの暴走でしょ」

「いえ、私がちゃんとウィンディーネと話し合っていればこんな事にはならなかったですし、部下が……いえ、友達が間違った時は私も一緒に謝るべきですから。きゃっ」

「サティィィィィィィ。なんてお優しいんですの。このウィンディーネ感激致しましたわぁぁぁぁぁ」

 


 そう言って泣きながら、サティさんの胸に顔をうずめるウィンディーネ。いや、こいつ本当に反省しているのか? てか、パッドとはいえサティさんの胸元に抱き着くとかくそ羨ましいな、おい。



「ウィンディーネ、慕ってくれるのは嬉しいのですが、アルトさん達に今回の件の顛末を説明していただけますか?」

「はい、もちのろんですわー!! 今回の件があって、信仰力の一部は源泉ではなく、空気中に返すことになりました。これで信仰心を使って願いを叶えることは不可能になりましたわ。また、非常に……非常に……遺憾ですが、女神教は……解散となりましたわ……」



 ウィンディーネは本当に悔しそうに、涙を流しながらそう言った。その態度を見てサティさんがあきれたようにウィンディーネを責めるようにジト目で問う。



「ウィンディーネ……本当に反省していますか?」

「もちのろんですわーーー!! ちゃんと反省をしてますし、もう二度とあのような事はしないと女神……じゃなかった自分の心に誓いますわー」



 大げさに謝って、サティさんに再び抱き着くウィンディーネ。その様子を見て、疑わしく思った俺は鑑定スキルを使用する。

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名前:ウィンディーネ

職業:四天王兼ハコネィの支配者

戦闘能力:99999

スキル:洗脳、水魔法、特殊な効果があるお湯を出すことができる、教祖のカリスマ

信仰度:99999

サティさんへの好感度:99999

備考:四天王の中でもっとも魔王を慕う精霊。魔物ではないが魔王軍の仲間になり、四天王まで上り詰めた。サティさんが友達と思っていた事を知り興奮状態。かつては女神教を率いていたが解散されられた。だが、すでに信者の一部が真女神教を布教している。サティ様への愛と信仰は永遠ですわーーー!!

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 うわぁ……だめだ、こいつまるで反省してねえわ。やっぱり四天王はろくなやつがいねえな……むしろ友達になった分より質が悪くなってそうだ。

 そんな事を思っていると、俺の肩にいたエルダースライムが口を開く。



『そうですか、反省しているならばちょうどいいですね、あなたにはハコネィから離れて、私の補佐をやってもらいましょう。サティは、しばらく、魔王城には帰ってこなくて大丈夫ですよ。この子には、罰としてサティと遠ざけることにしようと思います。それが一番効果があると思いますから……それに、そろそろ四天王選抜試験もあるので、忙しくなりますしちょうどよかったです。まあ、精霊ですし、一週間くらい寝なくても大丈夫でしょう』

「え? エルダースライム様の補佐ですか……勘弁してくださいまし!! 魔物使いが荒いエルダースライム様の下で働いたら、サティ様の抱き枕を愛でる時間すらなくなってしまいますわぁぁぁぁぁ」

『ご安心を、今回の罰としてサティグッズも全て没収です。さあ、ワイバーンをすでに呼んであります。早く行かないとわかっていますね?』

「せめて、サティの肌着をくださいましーーー、くんかくんかしたいですわぁぁぁぁぁ、サティィィィィィ!!」



 そうやって叫んでいる間にエルダースライムに窓の外に放り投げられて、絶妙なタイミングでワイバーンが咥えていった。そして、エルダースライムはサティさんの胸元からウィンディーネの水球を追い出して、定位置のパッドに戻る。その様子を少し呆れた顔で俺達は見ていた。

 


「なんていうかすごいね……」

「ああ、そうだな……」

「うちの四天王が本当にすいません……」



 呆然としている俺達の言葉にサティさんが胸元を抑えながら謝る。なんか違和感なく受け入れていたけど、今目の前ですごいことがおきていたな……俺は床に落ちている精霊パッドを眺めながら思う。

 そして、そういえば気になる事を言っていた。



「サティさん、エルダーが四天王選抜試験とか言ってましたがなんなんでしょうか?」

「ああ、デスリッチがリストラされたじゃないですか。その代わりを探すんです。有力な魔物から推薦があれば、魔物ではなく精霊や人間だって受けられるんです。少しですが人間の方もエントリーしてくださっているらしいんですよね。これまでの頑張りが認められたようでありがたいですよね」



 そう言うとサティさんはよっぽど嬉しいのか「えへへ」と笑う。四天王選抜試験か……でも……そうか……人間でもできるのか。

 もしも……もしもだ。サティさんを支えるならば、四天王としての立場があった方が楽なのではないか……そんな事が一瞬頭をよぎった。



「アルト兄、何を難しい顔をしているのさ。せっかくだからさ、三人で温泉に入ろうよ。家族風呂ってのがあるんでしょ」

「そうですね……アルトさん、アリシアさん、色々ありましたし、今日は全てを忘れてゆっくり楽しみませんか?」

「ああ、いいですね、せっかくだし最後に温泉を楽しみましょう!!」



 ナイスアリシアァァァァ。その一言で難しい事を考えていた頭は吹っ飛んだ。そうだよ、俺はそもそも温泉に入りにきたのだから。これからどうするかはこれから考えよう。

 そして、最後に俺達は三人で温泉を楽しむのだった。どうだったかって? 聞くなよ、やはり虚乳も巨乳も最高であるとだけ言っておこう。



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三章完結です。

面白いなって思ったらレビューや星を頂けると嬉しいです。


次は勇者パーティーが登場します

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