20.ウィンディーネの気持ち
「ウィンディーネ……私の大事な友人であるアルトさんと、アリシアさん、ついでにデスリッチに危害を加えた上に、このようなよくわからない歌を精霊たちにうたわせて……これはどういうことでしょうか? 説明をしていただけますか?
「サティ様なぜここに……」
「部屋に戻ったらアルトさんもアリシアさんもいない、そして、山の方へと向かっていくあなたを見たのです。これは何かあるなと思ってつけたんですよ」
「うう……これは……その……」
驚きの表情でしりもちをついているウィンディーネにサティさんは淡々と問う。冷徹な目に圧倒的なまでの威圧感を纏うその様子はかつてのアグニと対峙したときと被って見えた。
これが魔王としてのサティさんだ……このままアグニの時の様に罰して終わるのだろうか、そう思っていたが、サティさんの様子に違和感を覚える。漆黒の刃を纏ったその手が震えているのだ。まるで……ウィンディーネを罰したくないとでもいうかのように……
『アルト君、今ならウィンディーネの本心もわかるはずだ。彼女とサティを頼んだよ』
そんなルシファーさんの声が思い出される。そうだ……結局ウィンディーネがなんでこんな事をしたのかはわかっていないのだ。彼のアドバイスに従って再度ウィンディーネを鑑定する。動揺している今ならばきっと彼女の本心もわかるはずだから……
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名前:ウィンディーネ
職業:四天王兼ハコネィの支配者
戦闘能力:99999
スキル:洗脳、水魔法、特殊な効果があるお湯を出すことができる、教祖のカリスマ
信仰度:99999
備考:四天王の中でもっとも魔王を慕う精霊。魔物ではないが魔王軍の仲間になり、四天王まで上り詰めた。サティが最近ハコネィに来てくれないので何が何でも興味を持ってもらおうと必死だった。なんで私はサティ様をこんなにも思っているのに、私といた時よりもあの人間達と一緒に仲良さそうにしているのだろう……あと、デスリッチの死肉が臭い……クレームが来ている……何とかしないといけませんわ。
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ああ、そうか……ウィンディーネは必死だったのだ。サティさんは前は定期的にハコネィに来ていたが、俺達の街で受付嬢をやるようになってから忙しくて中々いけないと言って残念がっていた。
だけどウィンディーネはその事を知らない。もしかしたら飽きられてしまったと思ったのかもしれない。もしかしたら嫌われてしまったのかもしれないと、彼女はそんな事を考えてしまったのかもしれない。
だから、サティさんが来たとわかったら、すごい豪華なサービスをして喜んでもらおうとしたり、家族風呂で、サティさんがウィンディーネの事をどう思っているかを言ったら、本当は隠れているべきなのに顔を出してしまったのだろう。気持ちはわか……らねえな。
どんな状況でも、サティさんを宗教化したり、下着をご神体としてあがめたりはしねえっての!! それに、そんなに辛かったらサティさんにちゃんと言えばよかったんだよ……言葉にしなければわからないって事はあるんだから。
サティさんとウィンディーネの関係がどんなものかを俺はちゃんと知らない。だけどさ、このままお互いの本心を言わないままじゃ、すっきりしないだろ。
「ウィンディーネ……あんたがなんでこんな事をしたかは大体わかったよ。だからサティさんにそれを説明するんだ。サティさんは絶対あんたの話を聞いてくれるから」
「あなたに何がわかりますの……まさか、私を鑑定したんですの!?」
そういうと彼女は俺を親の仇の様ににらみつけてきた。それと同時にあたりに漂っていた水が刃の様に鋭利な形をとって周囲を舞う。
こわ!! ビビった俺とウィンディーネの間にサティさんが割り込む。
「アルトさん、大丈夫です。あなたは私が守ります。そして、ありがとうございます……ウィンディーネ、あなたが何を思って、なんでこんなことをしたのか正直に話してくれますか?」
「サティ様……」
そう言ってウィンディーネに声をかけるサティさんには先ほどまでの冷徹さはない。まるで、喧嘩をした友人を気遣うようなそんな視線だ。俺が知っている優しいサティさんだ。
「サティ様……引かないで聞いてくれますの?」
「はい、話してください、ウィンディーネ」
恐る恐る訊ねるウィンディーネにサティさんは優しく微笑んだ。そうして、彼女はなぜこんな事をしたのかを語り始めるのだった。
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