16.デスリッチの提案

「ねー、アルト兄、なんでこいつがいるのさ。聖剣の錆にしていいかな?」

『やめんか、小娘。聖剣を気軽に振り回すでない。いや、ほんと止めて、浄化されるぅぅぅぅ』

「アリシアやめてやれ……こいつは戦闘力下がってるからまじで死ぬぞ」

「えー、仕方ないなぁ、私を利用したことを許してないんだからね」


  

 俺の言葉でようやくアリシアが聖剣を鞘に納める。デスリッチと合流した俺はアリシアも呼んで俺の部屋で会議をしていた。とはいえ、アリシアとデスリッチの仲はあまりよくないようだ。まあ、気持ちはわかるんだが……



『貴様ら……魔王の下着をウィンディーネから取り戻そうとしているんだろう? 我ならばその場所を知っているぞ』

「マジかよ、でも、なんで俺達に手を貸すんだ?」

『決まっているだろう!! あのクレイジーサイコレズめ、毎日毎日集会と言って変な歌ばっかり歌わせおって、気が狂うわ!! せめてもの嫌がらせよ!! あいつがご神体と言っているものがなくなればきっとへこむにちがいないわ。フハハハハハ、ざまぁ」

「うわぁ……器の小さい男だなぁ……」

『それに貴様らが、我が魔王の下着を奪い返すのを手伝ったと言えば魔力も少しは返してもらえるだろうしな』



 狂ったように笑うデスリッチに対して呆れたようにつぶやくアリシアだったが、あの狂気の集会を見た後だとデスリッチに同情してしまうんだよな……

 毎日あれに付き合わされるのは拷問だろ……そんなことを思いながら一応鑑定スキルを使ってみる。


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名前:デスリッチ(生前:オベロン=アンダーテイカー) 

 職業:従業員、元四天王、元先代勇者の仲間

 戦闘能力:10

 スキル:死霊魔術・策略・精霊魔術・掃除・料理

 信仰度:10

 性癖:幼馴染NTR、年下にこき使われる。パッド……?

 備考:かつては復讐のために色々としていたが、ことごとく失敗。最近料理に目覚めてきた。パッド……!最近上司に変な宗教に勧誘されていて迷惑がっている。パッド♪ スライムパッド♪

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 なにこれぇ、なんか信仰度あがっているし、色々バグっているんだが!? こいつもこいつで自分の状況がやばいと思って行動をしてきたのかもしれない。だったらまあ、協力くらいはしてもいいだろう。



「でもさ、手を組んだ後に裏切ったりするなよ」

『ああ、もちろんだ。我もこのままウィンディーネの部下のまま終わるわけにはいかんのだ。それに勇者やアルト、貴様らにとっても、重要な話なのだぞ。このままでは魔法の威力が弱まる可能性がある。それでもいいのか?』

「どういうことだよそれ」

『それは後々話すとしよう。貴様らではおそらくウィンディーネには勝てん。我らが手を組んだのがばれる前に即座に行動をする必要がある』

「それは一体どういう……まあ、いいや、嘘はついていないみたいだし、行くならさっさと行くか」

「アルト兄!?こいつを信用するの?」

「ああ、こいつに戦闘力はないし、悪意もないからな……それに、いざとなったらアリシアが守ってくれるだろ」


 

 そう言いながら彼女の頭を撫でるとアリシアは嬉しそうにえへへと笑った。くっそ可愛いな……



『この勇者ちょろすぎるな……』

「うるさいなぁ、そんな事よりもサティさんの下着はどこにあるのさ」

『ああ、聞いて驚くがいい。魔王の下着は『豊乳の湯』の源泉にて、精霊たちの信仰心をため込んでいるのだ。それを奪いに行くぞ!!』

「「はぁー!!」」



 俺とアリシアが同時に声を上げる。いや、『豊乳の湯』って本当に効果があったのかよ!?

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