15.サティさんの気持ち

「それでウィンディーネなぜあなたがこんなところに……」

「少々お待ちくださいな」

「え? きゃ!! あ、ありがとうございます。元に戻りましたぁ!!」



 ウィンディーネが体の一部である水球を飛ばすと、それがするりとサティさんの水着に入っていき、まるで胸の様にその存在を主張した。おお、すごい、スライムパッドから精霊パッドになったぜ。

 ていうか、これで四天王全員がサティさんがパッドだって言う事が知ってることが判明をしているんだけど大丈夫?



「それで……ウィンディーネ、あなたはなぜこんなところに……」

「サティ様が家族風呂を予約したと聞いたものですから、久々にゆっくり話せるかと思いここにいたのですが……その、そこの殿方と逢瀬をしているものですから邪魔をしてはいけないと思い身を隠していたんですわ」

「な……別にアルトさんとはまだ、そう言う関係じゃないですよ。ね、アルトさん」

「えー、俺はいつかそう言う関係になりたいとおもっているんですが……ひぃ……」

「もう、アルトさんったら……本気にしちゃいますよ」



 俺が冗談ぽく返すと、サティさんは少し恥ずかしそうに俺を叩くふりをする。そのたびに偽乳が揺れるのだが、やはりスライムパッドの時と違い、動きに違和感がある。ってそんなことはどうでもいいんだよ。

 ウィンディーネが一瞬無表情でこちらを見てきたんだけど!! この目は俺とアリシアが婚約をしていると勘違いをした時のサティさんの目だ。こわっ!! しかも鑑定が使えないから何をかんがえているかわからなくて普通にこわい。



「ふふふ、サティ様は素晴らしい友人を手に入れたんですのね。最近いらっしゃらなかったのは彼らといたからですの?」

「え、ああ。そうですね……ちょっと今別の任務がありまして、彼にはその協力者をやってもらっているんです。そっちの仕事と、魔王としての仕事で最近はろくに休みもとれなかったもので……」

「ああ、確かサティ様は勇者と接触して、場合によっては和解するために話し合うんでしたのね……それで、勇者とは接触できたんですの? その仕事が終われば魔王城に帰ってきてくれるんですわよね? サティ様が帰ってくるならば私もここの管理は別の者に任せて、魔王城で補佐を致しますわ」



 そう言えばサティさんは元々勇者であるアリシアと和解するために、アリシアの故郷である俺がいる街にいたんだよなぁ……今ではすっかり冒険者ギルドの虚乳な受付嬢のお姉さんって感じだが、実際魔王と受付嬢の二束のわらじはしんどいんじゃないだろうか? 

 もしも……サティさんがいなくなったら嫌だなと思う。



「ありがとうございます、ウィンディーネ。ですが、まだ勇者は見つかっていないんですよ。もう少し時間がかかってしまいそうです。幸いエルダーが頑張ってくれていることもあり、魔王としての仕事にも支障は出てませんし、もう少しあの街に潜伏していようと思います」

「え……」



 俺はサティさんの予想外の言葉に思わず聞き返してしまった。だって、勇者はアリシアなわけで……彼女とは和解どころか友達になっていて……

 だから、本当はもう、魔王城にかえっていてもおかしくはないのだ。それでも嘘をついてまで俺達といる理由は……きっと俺が一緒にいるのが楽しいように、サティさんも俺やアリシアと一緒にいるのだが楽しいっていうことでいいんだよな?

 


「サティさん、俺はちょっと部屋に戻っていますね、ウィンディーネさんとは久しぶりなんでしょう? ゆっくり話をしていてください」

「え、でも……」

「ありがとうございますわ。気が利きますのね」



 サティさんの言葉を聞いて俺は決めた。さっさとサティさんの下着を取り返して、安心してもらおう。それに……ウィンディーネがここにいるならば安心だろう。今がチャンスである。



「サティさん、その嬉しかったです。これからもよろしくお願いしますね」

「え……はい、よろしくお願いします」



 俺はこれからもを強調して言った。サティさんが一瞬驚いた後に微笑みをかえしてくれる。ウィンディーネは怪訝な顔をしているがまあいいさ。多分嘘までついて俺達と一緒に入れてくれていることへの感謝への気持ちは伝わっただろうから……

 そして、風呂から出た俺はアリシアと合流するために自分の部屋へと戻る。だが、その前には誰かがいるようだ。



『ようやく帰ってきたか、小僧』

「お前はデスリッチ……いったい何の用だ?」

『貴様らに用があってな……あの勇者の小娘とも一緒に話をしたい。何、敵意はない。何なら鑑定で見てみるといい』



 そして、俺は意外な相手と共闘をすることになるのだった。

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