14.お二人でお風呂

家族風呂というのは規模こそ小さいもののちょっとした露天風呂になっているらしい。本来は事前に予約が必要らしいが、たまたま空いていたそうなんだが、ちょっと怪しいよな……

 それはさておき、俺達は家族風呂までの道のりを無言で歩いていた。いや、なんかさ、こういうのってすごい緊張しない? いいなって思っている人と一緒にお風呂だぜ。しかも二人っきりで……隣のサティさんも同様なのか、胸元をタオルなどで隠しながらも固い表情で歩いている。



「お、つきましたよ、楽しみですね」

「そうですね、えへへ、なんか緊張しちゃいますね。私……その、異性とお風呂に入ったことあるのは父くらいなんで変な感じです。あ、でも、アルトさんはアリシアさんと一緒にお風呂に入った事あるんでしたっけ?」

「子供の頃の話ですよ。いや、マジで!!」



 そう言ってちょっと拗ねたように唇を尖らせてサティさんはジトーとした目で言った。アリシアのやつめ余計な事をいいやがって。

 俺が心の中で文句を言っていると一つの事に気づく。あれ? 更衣室一個しかないんだけど……っていう事は一緒に着替えるっていう事かよ……

 俺達が沈黙したまま着替えていると服のすれる音がきこえてしまい、否が応でも意識をさせられてしまう。やべえ、アルトのアルトが暴走してしまう!!



「サティさん、先にいってますね!!」



 俺はさっさと上着を脱いで水着になって、サティさんの返事も待たずにさっさと温泉のほうへと向かう。エルダーがいたら確実に「へたれ」と罵ってくるだろうが仕方ない。俺の心臓がもたねえんだよ。



 お風呂の種類は流石に少ないが、空を眺めると月夜が何とも綺麗だ。へぇーお風呂は……『天然温泉』『豊乳の湯』か……ちょっと待って、こっちにもあるじゃん!!

 サティさんが俺を誘ったのって、このお湯目当てじゃ……俺は少しへこみながらもとりあえず『天然温泉』の方に入った。



「アルトさん、早いですよ。おいていかないでください」

「いや、ちょっと恥ずかしくて……あ、温泉にタオルはマナー違反ですよ」

「うう……理由はわかってるくせに……お湯に入るときはとるから許してください」


 

 そういって入ってきたのは水着の前にタオルを持って体のラインがばれないようにしているサティさんだった。

 そう言うと彼女は俺に背を向けながらタオルを取って当たり前のように『豊乳の湯』に入る。距離が結構あるんだけど!! 一緒にお風呂に来たい意味ないじゃん。だからといって俺が『豊乳の湯』に入ってもなぁ……



「そう言えばウィンディーネってどんなやつなんです? サティさんをすごい尊敬というか崇拝しているみたいですが……」

「ああ、彼女ですか……彼女は私にすごい懐いてくれているんですよ。ちょっと一生懸命にやりすぎるところがあるんですが、私は彼女に感謝をしています」



 そう言ってほほ笑む彼女からはウィンディーネへの強い信頼が感じられる。そいつサティさんを神にしたよくわからねー宗教を作ってますよ、しかも下着を盗んだのは彼女ですよ……とは言えなそうな雰囲気である。

 そして、また沈黙が世界を支配したと思ったらサティさんが口を開く。

 


「ねえ、アルトさん……こっちに来て一緒に入りませんか?」

「え、はい……」



 顔を真っ赤にして明後日方向を向きながら彼女はそう言って俺を温泉に誘う。その様子と、可愛らしい彼女に俺は思わず生唾を飲み込んだ。

 そこまで言われたら断れねえよ。俺の胸もおっきくなるかもしれないが仕方ねえ!! 俺は『天然温泉』から出てサティさんの方へと向かう。しかし、つい関係ない話をしてしまうのは許してほしい。



「あー、でも、サティさんはウィンディーネを本当に信用しているんですね」

「はい、あの子が四天王として私を支えてくれなかったら、魔王としてやっていけたかわからないくらいお世話になっているんです。父の代から四天王だった、エルダーや、アグニ、デスリッチと違って、私の力になりたいっていって四天王にまで成り上がってくれた彼女がいたから私は自分に自信が持てたんです。ああでも願わくば私は……きゃあ!!」



 しんみりと語っていたサティさんだったがそれを遮るように『豊乳の湯』が溢れ出した。なんだよ、これ? こんなサービスあんのかよ。


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名前:ウィンディーネ

職業:四天王兼ハコネィの支配者

戦闘能力:99999

スキル:秘密と言ってますわ

**度:99999

備考:アルト!! 貴様見ていますわね!!

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 え、なにこれぇ……俺は『豊乳の湯』を鑑定したはずなんだが……そうと思っているとお湯がどんどん人の形になっていった。



「サティ様!! 私の事をそんな風に思ってくださっているなんて感激ですわ!!」

「ウィンディーネ!? これは一体何がおきて……」



 いきなりお湯がウィンディーネと化して驚いているサティさんと目があう。そして、今のサティさんはタオルがなく、水着姿なわけで……俺はそれを見て……いや、ノーコメントで……別に人間胸じゃないもんな。でも、ついついいつもの違う胸に目がいってしまった。



「きゃぁぁぁ、アルトさんの馬鹿ぁ」

「ジャッジメントですわ!!」

「にぎゃぁぁぁぁぁぁ」



 サティさんが悲鳴を上げると同時に、ウィンディーネの体の一部が飛んできて俺の目に入りやがった。お湯が熱いよぉぉぉぉぉ!! ふざけんなよぉぉぉぉぉぉぉ!! 

 あまりの痛さに俺は床の上で目を押さえながら転げまわる。



「うふふ、ハレンチですわね。私の精水の味はどうかしら」


 

 そう言って得意げに笑いながらサティさんに抱き着くウィンディーネ。人の下着を掲げて興奮しているお前ほどハレンチじゃねえよ。と思いながら俺は自分の目を抑えるのだった。てか精水って字面が最低だな……

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