12.女神教の素晴らしさ

さーて、どうするか? 相手は腐っても四天王である。真っ向勝負をするとしたら、勝ち目はないし、姿が隠れているとはいえこの人数だ。下着を奪い返すことは至難の業だろう。

 てか、もう、帰りたくなってきた……こいつらこわいよう……



「パッド♪ パッド♪ スライムパッド♪」




 そんな事を考えている間にも会場は熱狂に包まれている。いや、人の下着でここまで盛り上がれるのって精霊たちやべーよ。発想が思春期の男子じゃん。



「みんなありがとうですわーー!! それと、今日も少し信仰心の足りない方にサティ様のすばらしさを教えて差し上げるとしましょう!! では、連れてきなさい」



 まさか、俺の存在が気づかれたか? と警戒していると精霊の一人がスケルトンを台の上に引っ張り上げている。スケルトンは抵抗しているようだが、精霊のほうが力が強いらしく、結局台の上にのせられた。

 てか、あれってデスリッチじゃん。あいつマジでなにやってんの?



「あなたは勤務中に『パット魔王のどこがいいのだ』などと失礼極まりない発言をしたそうですね。あなたにはサティ様の素晴らしさをもっと教える必要があるようですね」

『だから、それが余計なお世話だと言っておるのだ。口を開けばサティ様、サティ様と、このクレイジーサイコレズめ!!』

「ふふふ、レズ? いいえ、違いますわ。私のサティ様への感情は恋ではありませんわ……あのお方は水を出せずにお湯しか出せなくて人生に悩んでいた私を救ってくださった神にも等しい存在なのです。そうこの気持ちは恋を超え、愛を超え、信頼をこえ信仰へと至りました!! あのお方の幸せこそが絶対なのですわ!! そして、あのお方についていけば幸せになれるのです!! デスリッチよ、あなたは未だ報われる事の無い愛に囚われているのでしょう? ならば私と一緒に魔法の言葉をとなえましょう。気が楽になりますよ。そして、共にサティ様を信仰するのですわ!! パッド♪ パッド♪ スライムパッド♪」

「「パッド♪ パッド♪ スライムパッド♪」」

『うおおおおおお、なんじゃこれーーー、脳が汚染されるぅぅぅぅ。まさか、精霊の力か……能力のある変態ほど厄介なものはないな!!』

「ふふふ、真に素晴らしいのは巨乳でも貧乳でもありません、自らを偽ってでもかっこよくあろうとする気高さ。そして、その偽りがばれた時のいじらしさ。つまりパッド女子こそが最高なのです。わかりましたね、デスリッチよ」

『うぐぐぐ……パッド……パッド……スライムパッド……』



 うわぁぁぁぁぁぁぁぁ、洗脳されているぅぅぅぅぅぅ。なにこれ無茶苦茶こわいんだけど!!  俺は死んだ目で(もう死んでいるが…… 呟き始めるデスリッチを見て戦慄する。



「さて、皆様、不真面目な信者改心してくれましたし、そろそろ通常の業務に戻りましょう。わかっていると思いますが、サティ様には失礼のないようにしてくださいね、これは後で私の部屋に運んでおくように」



 そう言うとウィンディーネはブラジャーを神棚らしき、高価そうな木材作られた女神像の前にお供えした。どうやらこれで集会は終わりらしいな。



「ウィンディーネ様、サティ様のご友人はどうされますか? 彼等にもサティ様のすばらしさを教えるべきでしょうか?」

「うーん、そうですわね……彼らはこのままでいいと思います。サティ様は幸せそうですし……ただ……彼らがサティ様の事を侮辱したり、この集会の事を知ったら……わかってますね」

「イエス!! パッド♪ パッド♪ スライムパッド♪」



 そう言うとウィンディーネと質問をした精霊は出口の方へと向かっていった。どうなるんだよぉぉぉ。てか、俺やべえじゃん。この現場に普通にいるんだが!!

 とりあえず今は下着の回収はまだあきらめたほうが良さそうだ……サティさんにはとてもじゃないがいえないからアリシアに相談しよう。



「幼馴染……パッド……幼馴染……」



 とりあえず、何やら呻いているデスリッチはほうっておいて俺も自分の部屋に向かうのだった。

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