10.ポロリもあったよ(涙
「アルトさん、どうしましょう!!」
「と、とりあえず、そのスライムをしまってください。エルダースライム、さっさと正気に戻ってくれ!!」
「はい、ああでも溢れちゃう!!」
さっきまでの良い雰囲気はどこに行ったやら、俺は背を向いて彼女が自分の水着にスライムを戻している音を聞く。そんな場合じゃないのはわかってるが一言いい? 女の子とスライムってちょっとエッチですね!!
しかし、なんでこうなった? そういえばエルダーが酒を飲んでいるところはみたことないな。いや、そもそも一緒に食事すらしたことないな……スライム自体は液状の魔物である。ワインの入ったお湯を直接吸収してしまったせいか、酔いが回ったのだろうか?
「アルトさん……」
「サティさん、どうです? 収まりました?」
「その……申し訳ないんですけど……スライムの形が崩れてしまっていて……アルトさんのお力を借りてもいいでしょうか?」
「もちろん、大丈夫ですけど……どうやって」
どうやらスライムパッドが崩壊してしまったらしい。水着の中どうなっているんだろうと思っていると、背中からぎゅっとした感触がして、背中に吐息がかかる。
え、もしかして抱き着かれているのか? でも、こんなのが初の抱き着きでいいのだろうか?
「すいません……このまま女子更衣室の前まで移動してもらえますか?」
「え、ええ、もちろんです」
恥ずかしそうに漏らす声が何ともセクシーである。全然いいな!! グッジョブパッドスライム!! そうして、俺はサティさんに後ろから抱き着かれたままゆっくりと女子更衣室へと向かって歩く。
混浴とはいえ別にカップルばかりではない。「こんなところでいちゃつくんじゃねーよ、クソが!!」という視線を感じるぜ。特に男子グループから……そんなやつらに俺はこう思うのだった。
はっはっは、虚乳で美人な女の子とイチャついている俺はうらやましいだろう。お前らもがんばれよ。
いやいや、怒らないで欲しい。ハプニングとは言えずっと憧れていた女子とこんな風にくっつけているのだ。ちょっとくらい調子に乗ってもよくない?
しかし、そんな気持ちはそっと彼女の様子をうかがった時に霧散した。サティさんは不安そうに俺の身体を押さえて唇を嚙んでいるのだ。
そりゃあ、そうだよな。他人にとってはギャグかもしれないが、サティさんにとっては本当にコンプレックスなのだ。それが公衆の面前でさらされそうになっている。気が気でないのだろう。
「大丈夫ですよ、サティさんの胸は俺が守りますから」
「アルトさん……ありがとうございます」
俺が言葉をかけると抱き着いている手がより強くなった。これで少しは安心させる事はできただろうか。そう思いながら女子更衣室への前まで送る。
「サティさん、着替えたら扉で待っていますから」
「助かります……本当にありがとうございます」
そうして、俺はさっさと男子更衣室へ戻って着替える事にする。ついでに、アリシアを探したがみつからないんだよなぁ……まだ『豊乳の湯』にならんでいるのだろうか。
そして、準備を整えて扉の前で待っていると、胸元を押さえたサティさんが切羽詰まった顔で走ってきた。まだスライムパッドが暴れているんだろうか?
「アルトさん大変です。私の下着が盗まれてました……そして、つけていた下着の代わりに……Aカップのブラが置いてあったんです……」
「なんでだよぉぉぉぉぉ!!」
え、このホテルって下着交換サービスとかあんの? 余計なお世話過ぎない? 俺の絶叫にあたりの人の視線が集まるのだった。
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