9.一緒にお風呂

「気持ちいいなぁ……」

「生き返りますねぇ、やはり事務仕事だと肩が凝るんですよ」



 俺達は温泉の湯につかりながら、それぞれ楽しんでいた。でもさ、サティさん、あなたの肩が凝るのは、胸元にスライムを常にいれているからでは? と思ったがつっ込んだら死にそうな気がしたのでやめた。

 てか、スライムって水中でも息ができんのかな? そんな事を考えていると、一人うろうろしていたアリシアが人だかりの多い湯を指さした。あそこ女子しかいないんだけど、何なの?



「あ、アルト兄、見てよ『豊乳の湯』だってさ!! ちょっと入ってくるね。もっとセクシーになって魅了してあげるからね!! サティさんもいこーよ」

「いえ、私はこれ以上大きくなったら困りますので」

「「え?」」



 俺とアリシアは思わず声をあわせて聞き返す。これってボケなの? マジなの? どっちなの? 俺達が何も言えずに固まっているとサティさんが唇を尖らせた。



「もー、なんですか、少しくらい見栄を張ってもいいじゃないですかー!!」

「あ、私はもう行くね、アルト兄。任せた!!」

「おい、アリシア!? 逃げやがったな。あいつ……」



 俺はさっさと『豊乳の湯』の方へと逃げ出したアリシアを恨めしそうに睨んでいると、背中をつんつんと指でつかれた。

 なんだろうと思って振り返ると、サティさんは少し恥ずかしそうにもじもじしながら言う。



「それに……あっちだと、アルトさんとは一緒に入れないじゃないですか」

「サティさん……」



 確かに俺があの湯に入ろうとしたら痴漢扱いされるよな。可愛らしく上目遣いでそんな事を言うサティさんに胸がバクバクする。くっそ可愛いな、おい。そうだよな……俺達は一緒に遊びに来たんだ。だったら少しくらい積極的になってもいいよな。

 


「じゃあ、俺達は色々なお風呂に入ってみましょうか、あ、あそこに樽風呂がありますよ、中はワイン風呂みたいです。面白いですね」



 どうやら、少し大きめのワイン樽に赤ワインの混じったお湯が入っているようだ。少し、ワインの匂いがするが酔うほどではない。

 そういえば最初に食事に行った時はサティさん酔っぱらっていたなぁって思い出してにやけていると、お湯の中に何かが入ると音がすると同時に、何かが俺に触れる。

 え? ちょっとまって……



「やはり二人だとちょっと狭いですね」



 そう言って恥ずかしそうにサティさんがワイン樽に入ってきた……のか? いやいや、ちょっと待って。違うんですよ、俺は別々のワイン樽に入ろうとっていう意味で言ったわけですしね……あ、でも、あっちがいいならべつにいいんじゃないかな? てか、これってやべえよ、サティさんの吐息が首にかかる。胸がバクンバクンしてきたぁぁぁl!!

 落ち着け俺、後ろにいるのはブラッディクロスさん、後ろにいるのはブラッディクロスさん……俺は必死に自分に言い聞かせる。



「どうしました、アルトさん。勇気を出したんだからこっちを向いてお話をしましょうよ」



 向いていいんですかぁぁぁ。いや、でも彼女が望んでいるんだ。俺は意を決して振り向くと、そこには天使がいた。いや、魔王なんだけどさ……

 色白の肌は上気しており、どこか艶めかしい。普段は服で隠れた肩とか、華奢な体つきとかすべてが魅力的である。あとやっぱりおっぱいやべえよ、スライムだとわかっていてもセクシーだもん。虚乳がプカプカしてやがる。



「なんか恥ずかしいですね……でも、アルトさんとなら不思議とイヤじゃないんですよね」

「サティさん……」



 なんだろう、無茶苦茶いい雰囲気なんだが!! これはもう告白してもいいんじゃないか? いや、流石に気が早いだろ。だからせめて褒めよう。思いっきり褒めよう。こういう時は俺は意を決して口を開く。



「なんですか……?」

「おっぱいが浮いてるぅぅぅぅぅ!!!!」


 

 あまりの事に俺の意識は別の事に飛んでいた。だってエルダースライムが水着の間から浮いてきたのだ。なんか真っ赤になってるけど、こいつまさか、ワイン風呂で酔ったのか?

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