6.精霊のネックレス

全然鑑定できないことに俺が驚愕していると、ウィンディーネは一瞬こちらに妖しい笑みを浮かべた後にサティさんに対して、やたらと丁寧なお辞儀をする。



「サティ様が久々にこちらに来ると部下から聞いたもので、つい気合を入れてしまったのですけれども、ご迷惑でしたかしら?」

「お気持ちは嬉しいですが、このチケットは私の友人が取ってくれたものですし、私は今回友人と一緒に遊びに来たので、私だけ特別な部屋などにはしないで欲しいのです。それと……私は今は彼らと魔王サティ=エスタークではなく、ただのサティとして来ています。だから他の精霊たちにも特別扱いをするのはやめるように伝えていただけますか?」

「サティ様に……友人ですか……ドッキリではなく?」



 サティ様の言葉にウィンディーネが驚愕の顏でつぶやきを漏らした。すげえ反応をされているんだけど……そんなに友達がいることが衝撃的だったのだろうか?



「ねえ、アルト兄……何だか胸が痛くなってきたよ……」

「まあ、魔王だし、色々あるんだよ……だから、アリシアはサティさんの友達でいてやってくれよ……」


 

 ウィンディーネの反応にアリシアが憐みに満ちた感情でサティさんを見つめたのでフォローをしていると、視線を感じたので、見つめ返すとウィンディーネもこちらを見つめていた。だけど、その瞳には激しい感情が宿っている気がした。

 俺がその感情の正体にたどりつく前に彼女はサティさんに麗しい笑みを浮かべながら答える。



「そうですか、わかりましたわ。それでは同ランクですが、三人で過ごしやすい部屋に用意させていただきますわ。それくらいの好意は受け取ってくださいませ」

「ええ……まあ、それくらいなら……皆さんも構いませんか?」

「私はいいよー、元々アルト兄と一緒の部屋の予定だったし……」

「んなわけねえだろ、元からサティさんと、アリシアがペアの部屋で俺は一人部屋だっての……」

「えー、アルト兄。私と一緒ならラッキースケベのチャンスもあったのに本当によかったのー?」



 そんなことを喋りながら俺達は自分たちの部屋へと向かうのだった。アリシアの考えているラッキースケベとはなんだろうと思ったが、それ以上に、彼女の……ウィンディーネの俺を見つめる目がなぜか気になったのだった。





 案内された部屋の扉を入ると、すぐに二部屋にわかれており、片方が一人用、もう片方が二人用となっているようだ。こちらの部屋はベッドにテーブルがあるシンプルなつくりである。

 元々家族や、グループで来た人間用なのかもしれない。確かにこれなら、お互いのプライベートは守られるな……でも、同じ部屋だったら……ラッキースケベとかあったんだろうか……俺は先ほどのアリシアの言葉を思い出して紳士ぶったことをちょっと悔やむ。

 そんなことを考えながらテーブルに置かれているクッキーを齧りながら、説明書きと共にペンダントネックレスを手に取る。革で作られた紐に水色の石が埋め込まれたペンダントトップが何とも美しい。



『このネックレスは、当館でのお財布代わりになります。商品やサービスの支払いはもちろんのこと、ちょっとしたステータスアップ、困った時にこれに念じれば精霊が助けに参りますのでお気軽にお使いください』



 うおおおお、すげえな。多分マジックアイテムか何かなんだろうか? どういう仕組みなのかちょっと気になったので鑑定をする。久々にものに対して使った気がする。

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名前:精霊のネックレス 

効果:魔術への耐性アップ、装備しているものの意志を支配下の精霊たちに伝達をすることができる。かっこよさが4アップ。精霊や霊などを引き寄せやすくなる。

 

備考:四天王の一人ウィンディーネが効率化のために作成した。外見も結構よいため、女性にも人気。


製作者の残留思念:うふふふ、これをサティお姉さまがつけてくださるときの事を考えると、たまりませんわーー!!

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 ちょっと待って……なんか今見えちゃいけないものが見えた気がする。そんな事を思っているとノックの音が聞こえてきた。



「どうぞー」

「アルトさーん、私達はそろそろお風呂に入りますけど、よかったらご一緒にどうですか?」

「ああ、もちろんです、今行きます!! すぐ行きます!! 待っていてください!!」



 鑑定内容で気になる事があったがまあ、いいか……俺はそんなことを忘れて、サティさんとアリシアの水着を楽しみにさっさと準備をするのだった。

 やっほーーーー、水着だぜぇぇぇぇぇl!!

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