5.迷惑サプライズ
俺達は疑問に思いつつも宿へと向かっていたが道中に色々とおかしな事に遭遇することになった。
「お客様、よかったらこちらを食べていきませんか、今ならなんと無料ですよ!!」
食べ物が売っている屋台の前を通ると、販売している精霊に声をかけられ、こちらが何かを答える前に一番高い肉串を渡される。
「お客様、そこの美しい方!! よかったらマッサージを受けていきませんか? 代金はハンカチ一枚で構いません。よろしければご友人達もご一緒に……」
お風呂上がりのお客狙いのマッサージにはそんな風に声をかけられる。いや、そのハンカチは何に使われるんだよ。てか、無料でマッサージってエッチな本の導入じゃん。
そんなことが重なって、ちょっと怖くなった俺達はそのまま宿まで走って逃げ出すことにした。
「えー、せっかくだからマッサージしてもらおうよー」
「あほか、タダより高いものはないんだよ!! サティさん、この街で一体何をしたんですか? なんか無茶苦茶サービスをされるんですけど!! やっぱり魔王って精霊たちの間でも素敵なんですか?」
「いや、本当にわからないんですよ、受付嬢をやる前は一年に一度は来てましたが、その時は普通でしたし……それに精霊たちからしたら魔王は別に特別扱いするような存在でもないですからね……魔王と言えど普通の魔物と同様に扱われるはずなんですが……」
俺が名残惜しそうなアリシアを引っ張りながら走って、サティさんに質問するが彼女も答えはわからないらしく困惑した様子で首を横に振る。
試しに今度見かけた精霊に対して鑑定を使ってみるか……でも、精霊って人とも魔物とも違い普段なじみがないせいかいまいち鑑定が効きにくいんだよなぁ……
「とりあえず、ついたんで中で話し合いましょう」
「そうですね、外ではあまりゆっくりできませんし……」
「わーい、すごい広いね、楽しみ!!」
俺達の泊まる宿は今回かなり奮発したためか結構豪華なホテルである。大理石だろうか? 光沢がある石材で作られた建物はまるで貴族の屋敷の様で、庭には木々が生えており、屋台では無料でトロピカルジュースを振舞っている。
しかし、気になったのは……庭の中心に何か見覚えのある顔をした石像が噴水の役目を果たしていて、俺は怪訝な顔をして、サティさんを見ると……
「まさか……」
とボソッと呟いていた。うわぁぁぁぁ。絶対心当たりあるやつじゃん。もう、嫌な予感しかしねーよ。そんな風に思いながら宿に入ると同時に、パァンと小気味の良い音と共に、歓迎の声がかけられる。
「おめでとうございます!! お客様は当ホテルの推定53万人目のお客様になります!! つきましては部屋のグレードアップと……」
「すいません、責任者を呼んでいただけますか!!」
嬉々とした表情で歓迎の言葉をさえぎって、サティさんは頭を抱えながらそう言った。53万って全然きりが良くないじゃん。戦闘力だったらやばいけどさ、やっぱりやらせだよなぁ……これ……
「ですが……」
「いいから早くしてください!! サティが来たと言えばわかります」
「わかりましたー」
そう言うと精霊は慌てた様子で奥に引っ込んでいった。その様子に俺は嫌な予感がどんどん大きくなっていく。
「サティさん今のは……」
「そんなに急かさなくても、敬愛すべきサティ様に呼ばれれば私はいつでも会いにいきますわよ」
「ウィンディーネ……これはあなたの仕業ですね……」
そういってやってきたのは体が水でできた小柄な女性だ。フリフリのレースがたくさんついた服だが、見た目が優れているからかやたらとしっくりとくる。
ロリ可愛い女の子の形をしたその精霊はサティさんを見つめて可愛らしい笑みを浮かべた。
------------------------------------------------------------------------------
名前:ウィンディーネ
職業:四天王兼ハコネィの支配者
戦闘能力:99999
スキル:秘密ですわ
**度:99999
備考:人間風情が精霊の秘密を知ろうとするだなんて破廉恥ですわよ♡
-------------------------------------------------------------------------------
え、なにこれぇ……全然鑑定できないんだけど……しかも……この女、俺が鑑定スキルを持っていることを知っているのか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます