1.買い物

「アルト兄に、サティさんまで、私の買い物に付き合ってくれてありがとう」

「いやいや、気にしないでください。私もお友達と買い物って憧れてましたし……」

「それにしても、アリシアがこの街に住むって大丈夫なのか? 勇者なんだろ、王都で色々あるんじゃないか?」



 アリシアはこの街にしばらく住むことにしたらしく、俺とサティさん、アリシアで買い物をしているのだ。

 それにしてもこの街ってただの田舎なのに、魔王と、四天王の一人に勇者まで来ちゃったんだけど大丈夫? なんか色々とかたよりすぎじゃない?



「大丈夫でしょー、だって、魔王はここにいるし、四天王も、好戦的なやつはいないんでしょ?」

「そうですね……、エルダーは元々人間との共存に賛成でしたし、アグニにはこの前にしっかりとお仕置きをしておきました。デスリッチは……もうリストラしましたから問題ないですよ」

「そういえば、もう一人いますよね、ウィンディーネでしたっけ? その人はどんな方なんです?」



 俺はあまり期待しないでサティさんに質問をする。正直今まで四天王を見てきてろくなやつがいない気がするんだよなぁ……性根が腐っているか、なんかえぐい性癖を持っていそう。

 


「彼女は真面目でしっかりした女性ですよ。外見こそまだ若いですが、精霊としての特性を活かして、観光業をやっており、魔王城の資金源として稼いでくださっています。私の世話をすぐに焼こうとしますが、懐いてくれていて、可愛いんですよ」



 そう言うとサティさんは少し自慢げに語る。おお、話を聞く限りまともそうじゃん。年下だけど、主の世話を焼こうとするメイドさんタイプだろうか。絶対ヤバイやつだって思って変な事をいってごめんよ、ウィンディーネ。

 あれ、でも、デスリッチが何かいってなかったっけ。いまいち思い出せない。



「精霊かぁ……あんまり人や魔物には懐かないらしいけどすごいね、どうやって仲良くなったの?」

「ふふ、特に特別な事をしたわけではありませんよ。ただ一人でいたところを保護しただけですから。魔物も人も、精霊だって、争うより、共存した方がいいですからね」



 サティさんは軽く言うが、その言葉には不思議な重みがあった。現に彼女はそのために色々と行動をしているのだから……

 きっと彼女の姿勢は子供の時に形成されたもので、ずっと変わらないのだろう。だからこそウィンディーネだって、慕っているのではないだろうか? そういうの本当にいいなって思う。



「俺もサティさんのその夢をかなえるのに力を貸させてください。俺にできる事なんてたかが知れてますが……」

「ありがとうございます。その……アルトさんがそう言ってくれるだけで私はすっごい頑張れるんですよ」

「はーい、二人だけの空間をつくらないで!! 私だっているんだからね。福引券だってさ、三枚あるからそれぞれで回そうよ」



 俺とサティさんが見つめ合っていると、アリシアのやつが割り込んできた。くっそ良い雰囲気だったのに……でも、福引か……景品を見てみる。


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4等 ポーション

3等 商品券

2等 冒険者ブラッディクロスさんとの握手券

1等 温泉旅行券ペアチケット

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 よし、2等以外はあたりだな。ブラッディクロスさんはあんなんでも、アグニを倒したりして街の英雄扱いされているから、人気があるんだよな。



「あー、くっそーー4等だぁぁぁ」

「私は3等でした。アリシアさん、まだまだ色々と入用でしょう? 商品券をあげますよ」

「本当!? サティさんありがとーー今度お礼にご飯を作りに行ってあげるねー!!」

「ありがとうございます。その……この前みたいに料理を教えてくれるのもお願いしたいです」



 さっそく福引をひいた二人がなにやら盛り上がっている。一時期は一触即発だった二人だが今ではすっかり仲良くなったようだ。

 そんなことを考えながら俺が福引のくじを引くと一等と書いてある。



「おお、おめでとう!! お兄ちゃん。温泉旅行ペアチケットだ!! 楽しんでくれよな」

「え、まじか……?」

「よかったじゃないか、どっちが本命かわからないが、あの子たちの水着姿が見れるぜ」



 驚いている俺に福引所のおっさんが厭らしい笑みを浮かべながら囁く。そう、温泉とは疲労回復のあるお湯のようなもので、男女混合で水着で入る施設なのである。

 でもさ、ペアって……この場合どっちを誘えばいいんだよぉぉぉ


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