23.エピローグ
あの後、帰宅した俺は三日三晩ほど、地獄のような筋肉痛に襲われて、部屋に引きこもっていた。何あれ、マジで地獄だったんだけど……この年で介護をしてもらう事になるなんて思わなかったよ……一歩歩くだけで涙が出るほどの激痛に襲われるんだぜ? おかしいだろ……
ちなみに介護は主にアリシアがしてくれたが、サティさんも仕事帰りに来てくれて、二人が鉢合わせて料理対決をしたりもして、嬉しいような、悲惨なような目にあったのだが……まあ、それは機会があれば語るとしよう。
サティさん料理はできないんだな……彼女が作ってくれた料理を思い出して俺は思わずお腹をおさえる。
そして、俺とアリシアは今臨時でパーティーを組んでいる。アリシアは冒険者ではないため、俺がリーダーという事になっているのだが、いかんせん強すぎるんだよなぁ。
だって、6.5ブラッディクロスだぜ。ここいらの魔物なんて瞬殺だよ。俺が敵を鑑定する前とかに倒しちゃってるんだもん。
その代わり細かい作業は苦手なので採取クエストは俺の独壇場である。
そんなこんなで一緒に行動しているのだが一つ問題があるのだ。その……スキンシップが激しすぎるんだけど……今もアリシアは俺の腕を抱きしめるように掴んで歩いている。おかげで、やわらかいものが当たって冷静そうな顔をするのも一苦労である。
こちらとして、勘違いで彼女を傷つけたという弱みがあるために、強くは言えないんだよなぁ……そのおかげか、冒険者たちの視線が痛い。特に女冒険者に至っては俺をゴミのように見てやがる。
なんでかって? それはな……
「アルトぉぉぉぉ、サティさんという素晴らしい女性がいながら、何で他の女とそんな風にイチャイチャしているのだ。うらやま……じゃなかった。許される事ではない。このブラッディクロスが成敗してやるぞ!!」
俺とアリシアを見たブラッディクロスさんが絡んでくる。そう、俺とサティさんは付き合っているという事になっているままなのだ。誤解を解こうとしたのだが、どうやら誰かが、俺の宿に看病しに行くサティさんを見かけたらしく、筋肉痛から解放されて冒険者ギルドへ行った時には噂は広まってどうしようもなくなっていた。
「ねえ、ブラッディクロスさん……アルト兄に手を出したら……わかってるよね」
「ひぃ!!」
アリシアが感情の無い目でにこりと笑いながら、話しかけると、ブラッディクロスさんが情けない悲鳴を上げる。そう、一回ブラッディクロスさんと一緒の依頼を受けたのだが、その時にアリシアの圧倒的な力を見せつけられたのである。
だが、ここで引くブラッディクロスさんではない。四天王の一人アグニを撃退した男はやはり違う。
「サティさん!! 見てください。この男はあなたというものがありながら、別の女性にお兄ちゃんとか呼ばせる変態プレイをしていますよ!! こんな男よりも私の方があなたを幸せにできます!! というわけで今度お食事でも行きませんか?」
「ごめんなさい、仕事の方とはプライベートではお会いしないようにしているんです。あと、何か勘違いしているようですが、アリシアさんはアルトさんの妹のような幼馴染なんですよ。ね、アルトさん」
「それは昔のことだよ、今は私の事も少しは異性として見てくれているもん、それに私が作ったご飯を「美味しい、毎日でも食べたいな」って言ってくれたもんね、これは実質プロポーズだよね、アルト兄」
「あー、それはだな……その……」
矛先が俺にきたぁぁぁぁぁぁ。待って、こういう時は俺はどんな返しをすればいいんだよぉぉぉぉぉ!! 二人から凄まじいプレッシャーを感じた俺は思わずブラッディクロスさんに視線で助けを求めるが……
「すまない、ちょっと用事を思い出した……まあ、リア獣は死ね」
見捨てられたぁぁぁぁぁぁぁ。あんた、最近は何回フラれても、サティさんをご飯に誘ってたから、『不死身のブラッディクロス』とか呼ばれてんじゃん。逃げるなんてらしくもないぜ!!
「まあ、いいや、とにかく、依頼は終わったから報酬をちょうだい」
「ずいぶんと早かったですね。まだ、お昼すぎですよ。ゴブリンの退治の依頼だったのでもっと時間がかかるかと思ったんですが……」
「ふふ、私を舐めないで欲しいな、魔物を倒すのは私の専門だからね」
得意げな顔をしているが、こいつがやったことと言えばゴブリンの巣に魔術をぶち込んだだけである。威力がやべえからか、その一撃で洞窟が崩落したんだよな……
などと考えているとアリシアに腕を取られる。
「さあ、今日の仕事は終わったし、デートしよ!! カップル専用のパンケーキを売っているお店があるんだよ」
「いや、俺らは別にカップルじゃないだろ……まあ、それくらいならいいけどさ……」
「じゃあ、お仕事頑張ってね、サティさん」
「あ、ずるいです!! アルトさん、今日の晩御飯はいっしょに食べるっていう約束を忘れないでくださいね。アリシアさんも……ちょっと驚くかとおもいますがよろしくお願いします」
挑発するようようなアリシアの言葉にサティさんは唇を尖らせながらも答える。そう、この後、俺達は三人で魔物達がいるあのお店へと行くのだ。
サティさんと出会ったことによって魔物への偏見もなくなってきたアリシアに皆を紹介したいらしい。これがサティさんの当初の目的である人と魔物の共存につながればいいなと思う。
鑑定スキルでいつも優しい巨乳な受付嬢を魔王でパッドな事を知ってしまったことから色々始まった物語だったが、ようやくひと段落してきたようだ。
このままサティさんともっと仲良くなれたらなと思うがどうだろうね。とりあえずは……今夜の食事会を楽しみに俺は冒険者ギルドを出るのだった。
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エピローグですがアリシア編が終わるだけです。
まだ続きますのでご安心を。
面白いなとおもったら星や、レビューを頂けると嬉しいです。
それではまた明日。
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