19.ルシファー=エスターク
サティさんの言葉で場の雰囲気がすこし変わった。こいつがサティさんのお父さんだって!? 俺は目の前の相手が本当にサティさんのお父さんなのか鑑定スキルを使用して、見極める。
-----------------------------------------------------------------------------
名前:ルシファー=エスターク
職業:ただの屍 生前:元魔王、風俗レビュアー
戦闘能力:99999
スキル:闇魔術・死霊魔術・支配者のカリスマ・状態異常無効・文才・鑑定(全種族の女性のバストサイズ限定
煩悩:99999
性癖:巨乳好き、女勇者にお仕置きされるプレイ
備考:武道派の魔王に育てられ、本人も戦闘の才能があったため歴代の最強の魔王と呼ばれていたが、本人は戦闘が嫌いで、人間との和平の道を選んだ。
風俗レビュアーとしての才能もあり、エロスのペンネームで彼が作成した本は全世界の男性がお世話になっている。
--------------------------------------------------------------------------------
うおおおお、なにこれぇ!! てか、俺の鑑定スキルってこれ戦闘能力がカンストしているだけだな。魔王もデスリッチ以外の四天王もみんな99999じゃねえかよ。
それにしても、エロスという名前には覚えがある……この人の風俗レビュアー読んだことあるわ。何なら冒険者ギルドの皆で回し読みしてたわ。魔王なのにマジでなにやってんの?
脳内でつっ込みを入れていると、サティさんから視線を感じる。ああ、やはりニセモノかどうか気になるよな。
「サティさんのお父さんの名前はルシファー=エスタークで間違いないでしょうか? それなら彼がそうです……」
「やはりそうですか……放浪の旅に出ていたのですが、こんなところで再会をするなんて……」
サティさんの表情は暗い。そりゃあそうだよな。結構憎まれ口を叩いていたけれど、何だかんだ好きだったのだろう。彼が風俗レビュアーだったという事は墓場まで持っていこう。
しかし、沈んだ顔も一瞬だった。彼女は冷たい視線を送りながらデスリッチに問う。
「あなたはどうやって父の死体を手に入れたのですか? あなたごときでは不意打ちをしたところで父にはかなわないと思いますが……」
『いいのか、聞いたら後悔するぞ』
「構いません、覚悟はできています」
デスリッチの言葉にサティさんは迷わず答える。見た所デスリッチは絡め手は得意だが、相手は歴代最強の魔王のようだ。どんな卑怯な手を使えば勝てるというのだろうか?
『その……『巨乳美少女ファンタジー王国』で腹上死していたから死体を回収したのだ……』
「は? え? は?」
「ねえ、アルト兄、『巨乳美少女ファンタジー王国』って何?」
何ともしょうもない理由の死因にサティさんは呆然とした表情で、アリシアは何のことかわからないのか、無邪気に聞いてくる。
仕方ない、説明してやろう。
「説明しよう!! 『巨乳美少女ファンタジー王国』とは、Eカップ以上の美少女達のみが在籍する娼館だ。女の子が可愛く巨乳なのは基本として、女騎士へのくっ殺プレイ、王女と英雄の身分違いの恋プレイ、聖女によるエッチな浄化プレイなど多岐にわたるプレイを網羅した、去年の口コミNO1の娼館だ。ちなみに金額は金貨一枚。平民の一か月分の収入だな。オプションを付けるともっとかかるから気を付けたほうがいいぞ」
「ふーん、ずいぶんと詳しいんだね……」
「って、ブラッディクロスさんが言ってたぞーーーー」
やらかしたーーーーー、聞かれたからついノリノリで答えてしまったが、アリシアがゴミを見るような目で見つめてきやがった。まずい、好感度が一気に下がった気がする。
「く……本当に……私の父は、エスターク家の恥ですね……」
『だから聞かん方が良いといったのに……』
マジでへこんでいるサティさんに、デスリッチも同情の声をあげる。確かに自分の親が風俗に行っていて、しかもそこで死んだとかなったらきついな……
「まあ、父の事は置いておきましょう、あなたがアリシアさんに、私がアルトさんを魅了しているとか、私がスライムパッドをしているとか、色々なデマ情報を流して唆したことを許すわけにはいきません。あなたを四天王から追放させていただきます」
『ほう、魔王よ、貴様にそんなことができるかな? こやつは貴様の父なのだぞ』
「関係ありませんよ、死者は眠るべきですからね!!」
挑発するようなデスリッチの言葉を無視して、そのまま漆黒の刃がデスリッチたちを襲い掛かった。しかし、それはルシファーが放つ漆黒の盾によって防がれる。
だけど、それだけでは終わらない。
「私も手を貸すよ!! デスリッチめ、よくも私を騙してくれたな!!」
その声と共にアリシアが光り輝く聖剣を構えて、デスリッチたちの方へと向かう。魔王と勇者がタッグを組んだのだ。これでデスリッチもどうしようもないだろうと思った瞬間だった。
悲鳴を上げて吹き飛ばされたのはサティさんとアリシアだった。
『甘いわ!! 平和ボケした魔王や、本来の仲間もいない勇者が武闘派の魔王に勝てると思うなよ』
「サティさん!! アリシア!! こいつ攻撃と防御を同時にできるのかよ」
ルシファーの盾の一部が漆黒の刃となって、二人に襲い掛かったのだ。サティさんは壁に吹き飛ばされて、アリシアの鎧は紙のように切り裂かれて、肌が露出してしまっている。
マジかよ……現在の魔物最強と、人間最強の二人がなすすべもなくこのざまかよ……俺に至っては敵とすら認識されていないようだ。
『勇者よ、貴様の幼馴染を思うその一途な気持ちには敬意を表す。もしも、今後我の邪魔をしないというのならば命は助けてやる。アルトというクソガキと一緒にどこにでも行くがいい』
「え……私は勇者なのに見逃すって言うの?」
デスリッチの意外な言葉にアリシアが困惑する。そうだよな、普通だったらありえない事なのだろう。だけど、こいつは幼馴染萌えなのだ。幼馴染を先代勇者に奪われた復讐心で、アンデットになったくらいなのだ。だからこそ他の幼馴染には幸せになってほしいのかもしれない。
そして、今のこいつにとっては勇者ですら敵でもないのだろう。だから見逃すと言っているのだ。
『そして、魔王よ、貴様の口から魔王軍による王都への進軍を命じよ。断ればどうなるかわかっているだろう』
「あなたという人は……私の命を奪うというのですか……ですが、私とて託された志があります!! 確かに父は残念なところも色々あります。ですが、人との共存を選んだ。その一点だけは素晴らしいと思い私は誇りに思っています!! そして、ようやく開けた道を私が壊すことは絶対しません!! 例えこの命を奪われても私は首を縦に振りはしませんよ!!」
『いや……流石に我も魔王軍には恩があるし、貴様を殺しはせんよ。ただ……民衆の前でそのスライムパッドを引きはがさせてもらう!! 民衆は貴様をパッド姫と嘲笑し、魔王像の胸は削られるだろうな!! その屈辱に耐えられるかな?」
「いやぁぁぁぁぁぁ、そんなことをされたら生きていけませんーー!!」
デスリッチの世にも恐ろしい脅迫にサティさんが悲痛な声を上げる。何て恐ろしい事を思いつくんだ。流石四天王一の知将だぜ!!
「アルト兄……アリシアなら勝てるって言ってくれないのかな? そうすれば私はまだ頑張れるからさ」
「アリシア? お前は戦うのか?」
俺は彼女の意外な言葉に驚く。ここまでアタックをされたのだ。アリシアが家族としてではなく、異性として俺の事を想ってくれているという事にはいくら馬鹿でも気づく。ならばデスリッチの言う事を聞くかもしれないと思ってしまっていた。
それに魔王であるサティさんは勇者であるアリシアとしても倒すべき存在にはなりえても、守るべきものではないはずだ。
だから、彼女はデスリッチの言葉に従うものだと思ったのだが……
「今回の事はさ、私がデスリッチに唆されちゃったからおきちゃったんだよね。サティさんは人と共存を願っているのに、私のせいでそれが台無しになっちゃうんだ。それに……ここで逃げだすような女をアルト兄は絶対好きに何てなってくれないってわかるからさ。だから、私は戦うよ!!」
「アリシア…お前……」
そういうとアリシアはボロボロの体で起き上がり剣を構える。鎧はボロボロで、そこらかしらの肌も露出してしまっている。
だけど、彼女の瞳には決意の光が輝いていた。
「違うな、アリシア……アリシアが勝つんじゃない。俺達で勝つんだ!!」
「アルト兄……うん、私頑張るよ!!」
そう言うと彼女がガッツポーズをとる。すると、ボロボロの鎧からのぞく谷間がバルンバルンとその存在を主張する。
いやいや、今はそんな場合じゃねえだろ、俺!! そう言い聞かせて、デスリッチたちを睨むと、ルシファーがこちらを……いや、アリシアのごく一部のパーツを凝視していた。
こいつまさか……
「その……俺達が力を合わせれば勝てるかもしれない」
「え? さすがアルト兄!!」
純粋な尊敬の目で俺を見つめてくるアリシアに罪悪感を感じながら俺はうなずくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます