8.勇者と魔王
「え? あ、はい。よろしくお願いします。あ、アルトさんこの方は……?」
いきなりアリシアに挨拶をされたサティさんは混乱をしているようだ。俺にどういうことかと視線で助けを求めてくる。俺だって聞きてえよ!! マジであいつ何やってるんだよ。
「すいません、サティさん、こいつは俺の幼馴染なんですよ。久々にこっちに来たんで案内をしている所なんです」
「ああ、いつも手紙を送り合っている方ですね……その……アルトさんの幼馴染さんが、私に一体どんなご用なのでしょうか?」
「アルト兄が、素敵な人だって言っていたからどんな人か気になってさ……わたしの!! アルト兄がいつもお世話になっているみたいだから、挨拶をしておきたかったんだよね。それに、アルト兄も私とサティさんを会わせたがっていたみたいだし」
そういう風に笑いながら何故か「わたしの」を強調しながら言うアリシアは笑顔こそ浮かべているが、なぜか、妙なプレッシャーを放っているんだけど……ナニコレ怖ぃぃぃぃぃ。
そういえば昔っからこいつって俺が近所の巨乳のお姉さんとかにデレデレしていると、不機嫌になっていたよな……
「私のアルト兄……ですか……」
てか、アリシアのやついきなり失礼だよな……まあ、サティさんは大人だし、受付嬢という仕事柄こういう風に、いきなり話しかけられてるのには慣れているから適当にあしらってくれるだろうと思いながら、彼女の方を伺うと、何やら一瞬無表情になってぼそりと呟いた後に、いつかのような営業スマイルを浮かべて答えた。
「ええ、私もアリシアさんの事はよーく聞いてますよ、アルトさんが妹のように可愛がっているっていう幼馴染の方ですよね? 子供の頃からずっと一緒に育ったとか羨ましいです……でも、知ってます? 家族って異性として見られないらしいんですよ」
「な……結構言うね、サティさんだっけ? あなたとは仲良くなれそうだなぁ」
ねえ、二人とも笑顔なのに、なんか二人の背後にドラゴンと巨人がにらみ合っているように見えるんだが!! 全然仲良くできなそうなんだけど!!
てか二人は初対面だよな。なんでこんなに相性が悪そうなんだよ。やはり魔王と勇者の本能みたいなものなのだろうか?
「おー、修羅場か!! いいぞ、もっとやれ!!」
「やれやれー、てか、何でアルトのやつがモテるんだよ、死ね」
「あいつの幼馴染ロリ可愛いじゃねえかよぉぉぉぉ、なんでこの世界は不平等なんだ、死ね」
「サティーさぁぁぁん!! そんなクソ野郎の事は放っておいて私とご飯でも行きましょう。ブラッディな一日をあなたに提供しますよ」
「ごめんなさい、仕事の方とはプライベートではお会いしないようにしているんです」
「私は……模擬戦でぇぇぇぇぇl!! 二千百勝なのにぃぃぃぃぃ!! おい、お前ら今日も飲むぞーーー」
面白いもの好きな冒険者たちが喰いついてきて、いつもの様にサティさんに冷たくあしらわれているブラッディさんが叫び声をあげる。
そんな喧噪をよそにアリシアは話を進める。なにこれ、こいつの作戦ガンガン行こうぜなの?
「サティさん、仕事が終わったら私達と一緒にご飯でも行こうよ。色々と話したいし、確認したいこともあるしさ」
「ふふ、構いませんよ、楽しみにしてますね、アリシアさん。アルトさんも……色々聞きたいことがあるんで楽しみにしててくださいね」
「うん、じゃあ、また後でね。騒がしくなっちゃったし行こうか、アルト兄」
「え、ちょっと待って!? いつの間にか三人で飯を食べることになっているんだけど!!」
俺は状況のスピードについてこられずただ混乱する事しかできなかった。いや、最初は三人で飯を食べる予定だったけどアリシアが魔王を殺そうと思っているなんて知らなかったんだよぉぉ!!
そんな風に戸惑っている俺を引っ張ってアリシアが腕を取る。勇者の力に勝てるわけがなく俺がなすがままにしてると、豊かな胸があたりその柔らかい感触に一瞬顔がにやけてしまう。
それと同時に背後の受付の方から心臓をわしづかみにされるような殺気が俺を襲った。
ねえ、一体何が起きてるの?
俺は心の中で誰かに助けを求めるが答えるものは何もなかった。今、命のピンチっぽいんだけど助けてくれよ、エルダースライムぅぅぅぅぅ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます