第12話 鑑定したら憧れのいつも優しい虚乳で魔王な受付嬢と仲良くなれました。

「サティさんおはようございます。この依頼を受けたいのですが……」



 翌朝、俺は冒険者ギルドの受付でサティさんを見かけたのでさっそく声をかける。平常心、平常心。彼女が聞いてはいないとはいえ、あんな恥ずかしい事をいってしまったのだ。

 だいぶ気恥ずかしいが、エルダースライムにいつものように接してくれと言われている。だから、俺はこれまで通りに接しなければいけない。胸が熱くなる気持ちを抑えて俺は平静を保っているふりをして声をかけた。

 だけど、俺の予想外の事がおきる。



「あ……え……その……おはようございます」



 えーーー? なんでだよぉぉぉぉ。サティさんに顔を真っ赤にして顔を逸らされたんだけど? おかしくない? あのクソスライム変な事をいってないだろうな? ちゃんと説明をしておくっていってたじゃん。これなんか俺が変な事したみたいになってんじゃん。すっごい気まずい感じになってるじゃん。



「アルト、貴様。まさか、サティさんに失礼な事をしたわけじゃないだろうな!! もしもそうならば神が許しても私は許さんぞ!!」

「ブラッディクロスさん!?」



 サティさんに顔を逸らされへこんでいる俺に声をかけたのはブラッディクロスさんだった。めんどくさい人がきちゃったぁぁぁぁ。しかもサティさんにアピールしようとしているのか、ちらちらとサティさんの方を見て決め顔をしている。

 くっそ、でも、今の俺が何をいっても無駄な気がする。俺はなんとかサティさんに救いを求めるように視線を送る。プルプル僕は悪いアルトじゃないよ。



「ああ、違うんです、ブラッディクロスさん。昨日はアルトさんとご飯を一緒に行って、そこで酔っ払って失礼な事をしてしまって恥ずかしくなっていただけなんです……」

「ああ、そうなんですか……アルトとサティさんとご飯に……私も行ったことないのに……死にたい……」



 願いが通じたのか、サティさんがブラッディクロスさんが事情を説明してくれる。

 サティさんの言葉でブラッディクロスさんから放たれていた殺気が収まる。良かった……何とか命拾いをしたぜ。



「昨日は結構酔っていましたが、あの後は大丈夫でしたか?」

「はい、アルトさん……家まで運んでくださってありがとうございました。その……私の部屋って変じゃなかったですか? 他の人を入れるは初めてだったもので……それにしてもなんだか恥ずかしいですね」

「え? 部屋……サティさんの部屋にはいったのか……嘘だ……これは夢だ……私はきっとアグニに殺されかけて変な夢をみているんだ……あはははは……」



 ちょっと恥ずかしそうにはにかむサティさんの言葉で何か誤解をしたのか、ブラッディクロスさんが顔を真っ青にしたままぶつぶつとつぶやいてどこかへと歩いて行ってしまった。大丈夫かな、あの人……



「いえいえ、とても可愛らしい素敵な部屋でしたよ。昨日はよく眠れたようでなによりです」

「そうですか……それで昨日の話は……」



 少し真剣な表情になったサティさんに俺をまっすぐ見つめて言った。まあ、あの闇深い本棚を見なかったことにすれば嘘ではない。レースとかあって可愛らしい部屋だった。まるで普通の女の子の様に……


 それよりも昨日の話と言うのは魔王としての彼女の事だろう。だったら俺の言葉はきまっている。曖昧だった感情もエルダースライムとの会話のおかげで、覚悟は決まったのだ。



「サティさんがいいならまたじっくりと話しましょう。俺はもっとサティさんの事が知りたいんです……それで、ついでに俺の事も知ってくれると嬉しいです」

「アルトさん……」



 俺の言葉に彼女は驚いたように目を見開いてから、これまでで一番眩しい笑顔を浮かべて俺を見つめ返してくれた。少し涙ぐんでいるのは目の錯覚ではないだろう。



「はい、私もアルトさんの事をもっと知りたいです。アルトさんがどうして冒険者になったのか、どんなものが好きで嫌いなのかとか色々気になります」

「じゃあ、よかったらまたあのお店でご飯でもいきませんか? 料理がおいしかったのでまた行きたいんです。でも、今度は酔いすぎないようにしてくださいね」

「もー、意地悪を言って!! 次は酔いつぶれたりなんてしませんって!! でも。これで今日もお仕事も頑張れますよ!! あ、またアルトさんに手紙が届いてましたよ。本当に仲良しですね」

「ええ、俺にとって大事な妹みたいなものですからね」



 俺が軽くからかうと、サティさんは拗ねたように唇を尖らした。だけど、その顔はどこか嬉しそうだ。魔王である彼女をこういう風にからかう存在はあまりいないのだろう。だけど、俺にとってサティさんは魔王である前に憧れの受付嬢で友人だ。これからもどんどんからかわせてもらおう。


 そうして、俺は幼馴染からの手紙を受け取って受付を後にする。俺の鑑定スキルのおかげで彼女が魔王だったり、パットだったりと色々な秘密を知ってしまったが、俺とサティさんは本当の意味で仲良くなれた気がする。

 つい、振り返ってさりげなくサティさんを見ると彼女もこちらを見ていたようで小さく手を振ってくれた。その姿が愛らしくて自分の胸がドキドキするのを感じる。それと同時に彼女の胸部がうごいてガッツポーズをした。

 いや、胸がガッツポーズってなんだよ、エルダースライム何考えてんの? 他の人にみられたら大惨事じゃねえか。



「でも、これからが楽しみになったな……」



 俺は冒険者ギルドでこれから待っているであろうサティさんとのやりとりや食事会を楽しみにしながら手紙に目を通すのであった。

 ああ、そうだな……サティさんも勇者に会いたがってたし、あいつを紹介するのもいいかもな。

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