第7話 行きつけの店
彼女の案内で後をついていくと、街の少し外れた方へと向かっていった。あれだよな、このまま口止めに捕まって拷問とかされないよな……
サティさんは何やら上機嫌に鼻歌を歌いながら隣を歩いている。その姿はどこか冒険者ギルドで会う時よりも楽しそうで、まるで……そこら辺を歩いている普通の少女のようだ。
「こんなところに飯屋があったんですね」
「はい、外見はアレですけど、結構おいしいんですよ」
彼女がつれてきたのは、町はずれにある今にも崩れそうなレンガの作りの薄汚れた建物だった。なんだろう、飯屋というよりも、悪党の基地のようである。
「あの……ちゃんとした料理が出てきますよね?」
「どうでしょう? 魔物のお肉が出てきたりして」
「うげぇ……」
「冗談ですよ、私が味は保証はしますから」
俺の呻いた声がよっぽど面白かったのか、サティさんは本当に楽しそうな笑顔を見せた。そういや、魔王の食べ物ってなんなんだろうな? 処女の生き血とかじゃないよな。
「いらっしゃい、あれ、サティが珍しく他の人を連れてきた!? あんたにも友達がいたんだねー。よかった、よかった」
「な、失礼ですね、グレイは!! 私だって友達くらい……いますよ……?」
グレイと呼ばれた店主らしき女性に、反論をするサティさんだったが、どんどん声色が小さくなっていく。もしかしてこの人は友達がいないのか? 受付嬢としての仕事はきっちりとやっているし、人望も厚いので、職場の人たちと普段遊んだりしているのかと思いきやそういうわけでもないようだ。
もしかして、実はぼっちなのか……俺かなんかいたたまれなくなり、助け舟を出す。
「そうですよ、俺はサティさんの友達ですから」
「アルトさーん、そうですよ、私にはアルトさんがいるんです!!」
口をはさんだ俺に対して救世主を見るような目で見つめながら、満面の笑みで手を握ってくるサティさん。この魔王可愛すぎない?
「ふーん……」
反比例するようにグレイと呼ばれた女性は俺を観察するように上から下から見てきた。おかえしとばかりに俺も観察をする。
グレイと呼ばれた女性は。まるで商売女のような胸元の開かれたドレスを着た金髪の色白の美女だ。豊満な谷間は、どこかの魔王とは違い本物だと主張している。
だが、その姿は決して下品ではなく、むしろ高貴さすら感じさせる。その顔の美しさは彫刻のようで、どこか人間離れしている……人間離れしている? まって、本当に人間なのか? 嫌な予感をした俺は彼女に鑑定スキルを使った。
名前:グレイ=ノーブルブラッド
職業:吸血鬼
戦闘能力:5352
スキル:吸血、魅了、料理人の直感
料理スキル:上級
備考:冷たい感じの雰囲気とは裏腹に照れ屋でコミュ障。目つきが鋭いため誤解されやすい。他人に料理を振舞うのが好き。実は一人一人を観察して、その人が好きそうなものを考えて作っている。
うおおおおお、吸血鬼って超レアで強力な魔物じゃん。しかも戦闘力が35ブラディクロスくらいあるじゃん。この人一人で街を滅ぼせるんだが?
でも、むっちゃいいひとだった。いや、人じゃないけどさ。観察をしているのは俺が好みそうな料理を作るためなのかよ。
「ふふん、久々の新しいお客さんだ。腕によりをかけるから楽しみにしてなさい」
俺を観察し終わったのか、グレイさんは無表情だけど、どこか温かみのある声で扉の奥を指をさして示す。そうして俺とサティさんはご飯を一緒にするために食堂の扉をあける。
「え、なにこれ?」
俺は開かれたとびらの前で思わず驚愕の声をもらしてしまった。
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