神仏に縋る臆病者

 私は現在、自身の住居を築いている。これで何回目か……分からない。

 簡単な作りの安普請だが、暮らすには十分だ。

 日課の偵察。周りに敵はいないようだ。

 私は緊張を解き、息を吐いた。

 そんな時、微かな感触が。仕掛けに獲物がかかったらしい。

 私もこんな方法で生き長らえることは潔しとしていないが、これが己に定められた運命なのだ。

 

 罪悪感を消すために、祈りは欠かさない。

 臆病な私ではどうすることもできない。

 我らが神は何故私にそうまでして生きろとお命じになるのか。

 静かな林の中で、私は広大な空を見上げた。

 こんなちっぽけで醜い姿の私が、尊い命を犠牲にしていいのだろうかとしつこく疑う。

 そうしていると、いきなり床が、いや住居全体が揺れ始めた。


「一体、何が……!」

 必死に身を屈め、しっかりと掴む。

 先程まであんなことを言っておきながら、結局死が怖いのではないか。

 いくら待っても、揺れは収まらない。

 もしかすると……奴らの仕業かもしれない。

 近隣の同胞が住処と共に絶命したと聞いた。

 死ぬのは構わないとしても、奴らに殺されるわけにはいかない。

 それが私の唯一のプライドだ。

 しかし、抵抗虚しく私の憩いの場所は呆気なく破壊され、私は地へと堕とされた。


「くっ……」

 何としても逃げなければ。そして奴らに復讐しなければ。

 死んでいった者たちの為にも。

 自分を捨てて、種の尊厳を守るのだ。

「はっ……!」

 気付いてももう遅い。既に私は影に覆われていた。

 これが自らの業への報いならば、なんて神は無慈悲なのだろう。

 せめて一本の糸だけでも垂らしてもらえないものか。

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