第3話
出発は午前7時。
大きなスポーツバックには二泊三日分の着替えとゲーム、充電器、財布にタオル。
それだけあれば十分だった。
午前6時半。家を出る。
集合場所は電車で二駅ほどの駅前。
朝も早かったからか電車の人込みは疎らで、ゆったり座って移動することができた。
車はすぐにわかった。
黒い4人乗りのボックスカー。
駅前のロータリーに駐車された来る前のまえで赤い派手な頭で手を振る勇人が目印だ。
「ずいぶん派手に染めたじゃん」と言えば、太陽みたいな笑顔で「夏だもん」と元気に返ってくる。その後ろに40代を過ぎたぐらいだろうか恰幅の良い男性がたっていた。黒いポロシャツに火の焼けた肌。無精ひげが似合う。
「勇人が急にすまんね~」
笑うと目じりに深い皺が寄った。なんとも優しそうな人だ。良かった。
「弘は?」
まだ?と聞けば、途中で拾うのだ、と回答が返ってくる。
「そういえば、お前水着とか持ってきたか?」
輝く目で勇人がオレを見る。
「いや、持ってないけど……」
「なんだよ!せっかくの海なんだぜ!」
その言葉になんでこんなにテンションが高いのかようやくわかった。
「海なの?」
「海だよ!」
「なんだよ、勇人言ってなかったのか?」
笑いながらおじさんがいう。
「俺んところは小さい離島が連なる場所でな。夏だけ島を上げて民宿みたいな形で客を呼んでいるんだ。プライベートビーチ、とは言いが硬いがそれなりに綺麗に整った砂浜と綺麗な海が目玉でな。シュノーケリングやダイビングで有名な場所でもあるんだぞ」
そういっておじさんはごそごそと車からくしゃくしゃになったパンプレットを取り出した。
”行ってみようXX県、夏の楽園 シムラ島へ!!”
でかでかとしたゴシック体で書かれた文字の下にはコバルトブルーの浜辺においしそうな海鮮丼、温泉などの写真が踊る。
「暇な時間にはち海で遊んでもいいっていうし、温泉は入り放題だし、最近は若い女の子もいっぱい来てるらしいし!!いい思い出つくろーぜ」
女の子、のところに熱が入っていたのを苦笑しながら聞き流す。そんな、うまくいくかな、と思いながら。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます