第2話

「なあ、暇ならバイトしねえ?」


友人から連絡があったのは7月も末にかかった頃だった。


「8月10日~13日の3日間。二泊三日で旅館のバイト。食事も出るし、温泉もつくってさ。知り合いから頼まれて男手がどうしても欲しいらしい」


「飯も出るの?それ最高じゃね!」

「そうそう、なかなか今どきないよこんなバイト。日給一万五千円!おじさんが車出すから交通費もかからないし!とにかく夏場のリゾートで人手が今すぐほしいぐらいなんだと」

「へえ、そんな割の良いバイトあるんだなあ…俺と勇人だけなの?」

「いや、俺たちだけだとちょっと心配だから弘も誘った!」


さすがの展開の速さにオレは感心した。


友人――遠山勇人と江崎弘は大学に入ってから知り合ったやつらだった。

勇人はとてもポジティブで活動的、弘は冷静沈着、思ったことはズバッと言う。

なかなかバランスの取れた二人だ。どちらかというと場の雰囲気に流されやすいオレからするととても助かる二人組だった。


「お前、いいとこのお坊ちゃんだと思ってたけど思った以上に坊ちゃんだな!

すごいのんびりしているというか、自由気ままなとことっても良いと思うぞ!

!」


出会って3か月。勇人に言われた言葉だ。貶されているのか褒められているのか微妙な表現だったが、彼の性格からすると”良い意味らしい”と後で弘から聞いた。


世間知らずなオレのことをフォローしながらちゃんと面倒よく見てくれる、二人。


彼らがいれば安心だ、と条件の良いアルバイトに時間も暇も持て余していたオレはすぐに快諾した。



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