サマーバイト
ワンス
第1話
その夏は、梅雨がほとんどなかった。
みーん、みん。
窓の外から蝉の声が響く。
クーラーの効いた部屋、布団の中からオレはその声を聞いていた。
午前11時。
家賃は親の補助付き、大学生向けのワンルーム。
一人息子のオレは過保護な父と母に育てられたと思う。高校の部活動は帰宅部。
たまに友人と遊んだり、勉強したり、平凡ながらも何不自由なく普通の高校生活を終え、周りに言われるまま進学した。
「大学生になったらやること沢山あるよ!お金貯めておいたほうがいいよ!」
仲の良い従兄の亨さんから聞いた助言を丸ごと信じた過去のオレは、高校生活の中で必死にバイトをしてある程度の財があった。親が必要な費用をすべて出してくれるので使う道がなかったということもある。
夏季休暇はその金を使って、友人たちと遊びまくろう――そんなことを安易に考えていたのだが、新しくできた友達はみな、アルバイトに必死だった。
自分がゆとりのある大学生だと知ったのは5人目の友人に笑いながら「余裕あるんだな」と言われた時だ。
大学生になって初めての夏季休暇は長い。
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