一章 使命の中で生きる少女
少女……刹那がやってきたのはとある世界では乙女ゲームとして有名な惑星。そこは地球によく似ていて時代背景は大和大国が栄えていたころの弥生時代に似た所である。
「さて、この世界に散らばっている「影」がいくつあるのか定かではない以上世界を旅する必要がある。一番手っ取り早いのは瑠璃王国の姫に近づき共に旅をする事だけど、今すぐに接触すると怪しまれる可能性がある。時が来るまでは一人で「影」を探して消滅させることが一番安全だね」
ちょっと前に自分とは別の使命をもってこの世界へと送られてきた緑の髪の少女を連れて帰っていった瑠璃王国の姫の事を思い浮かべながら考えをまとめた。
「……この世界の事についていろいろと知らなくてはならないことが山積みだ。まずはこの世界の知識を叩きこまなくてはね」
彼女は言うと情報を集めるために最も最適なのは大きな町に行くことだと思い、ここから一番近い南の地へと向けて旅立つ。
「にしても、この淀んだ空気……この世界を包み込むこの気の正体は一体誰のものなんだ。ま、誰であろうと僕にとっては関係のないことなのだけど、それが「影」が絡んでいる事なら放置しておくことはできないし……この世界の事が総て記載されていると言われる予言書。それを入手する必要があるね」
淀んだ空気に眉をしかめながら刹那は言う。そして予言書を手に入れるための作戦を考えながら歩き続けた。
彼女が訪れたのは酒と女に溺れた暴君が治める南の地。町の様子や人々の話からこの地域の大体の状況を把握した少女は情報収取を切り上げ予言書探しを始める。
「やはり、領主の館……そこが一番怪しいな」
町にある本屋には預言書の模造品すらおいていない様子に、この世界にとってそれは極秘書物として部類されていると考えた刹那は領主の館へと忍び込むことを決めた。
「お嬢さん。お困りですか」
「……」
領主の館に忍び込もうと思った矢先に黒いローブ姿の仮面を付けた男に声をかけられる。彼女は見覚えのあるその人物へと無感動な瞳を向けた。
「この世界の事について知りたいのでしょう。こちらをお貸しします。とても大事な物ですので、読み終わりましたらすぐにお返しください」
「君が自ら接触してくるとは……よっぽど僕に興味があるのか。それともこれも「彼女」のためかな」
怪しさを醸し出すその仮面の男に警戒した様子もなく、刹那は薄っすら微笑みを浮かべた顔で尋ねる。
「お察しの通りです。「あの方」をお守りしてもらう代わりに、あなたが必要とする情報を提供する。等価交換というわけですよ」
「それ全然等価交換になってないよね。まあ、いい。僕のやることに干渉しないという約束ができるなら君達の望みを叶えてあげるよ」
お互い微笑み合っているが全然穏やかな空気は流れておらず、うわべだけの笑みを浮かべて交渉を続けた。
「では、俺との遣り取りに了承してくれたものとみなして、こちらの預言書を貴女にお渡しします」
「まあ、ちょっとそこで待ってて………」
男は満足そうに微笑むと予言書を差し出す。それを受け取った刹那はものすごい速さでページをめくり瞬きの間にそれらを頭に叩き込む。
「そういうことか……はい、これもういらないから返す」
「流石にこんな数秒でたたき込むとは思いませんでした。貴女は本当にただの人間(ひと)ではないのですね。……それよりも、そんなに雑に扱わないでください。貴女にとってはただの紙切れでもこの世界にいる人にとっては大事な予言書なのですから」
予言書を読み終えた彼女は興味を失ったようで先ほどまで必要としていたものであったそれを乱暴に突き返す。
男は刹那の記憶力の良さに驚いたものの、預言書をゴミ同然のように扱う彼女に困った口調で諭した。
「さて、この世界について理解ができたしそろそろ「影」の所に行くとしよう」
「……では、ご武運を」
全く話を聞いてくれない刹那の様子に溜息を吐きたそうな様子で数拍黙るとそう言って立ち去っていく。
「行こう。領主マグダムの下へ」
そう呟くと領主の館へと向けて再び歩き出した。
彼女がどうしても見つけ出し消滅したい「影」という存在と、刹那が廻る運命と罪の償いとはいったいどういう因果があるのか。それはまた別の物語でお話しよう。
ともかく、この世界での彼女の役割は「影」を全て消し去ること。そしてこの世界を元々の「
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