異世界で出会った仲間たちは最高です!
あびす
異世界で出会った仲間は最高です!
「……ついに、ここまで来たな」
四人が、ゴクリと息を飲む。
三年前、いきなりこの世界に連れてこられた時はかなり驚いたが、今ではもう懐かしい記憶だ。普通の会社員だった俺は突如異世界転移し、そこで勇者として世界を救う事になった。
初めの頃は大変だったが、レベルを上げ、信頼出来る仲間を集め、そしてとうとう魔王の元までやってきた。
「トウシ、お前は俺の一番古い仲間で、俺が出会った中で一番強い戦士だ」
「そしてライヒ、お前は優れた回復や蘇生で俺たちを助けてくれた」
「最後にシュジィ。お前はいつも俺たちがピンチな時に魔法で援護してくれた」
「俺たちが一人でもかけていればここへはたどり着けなかっただろう。俺は最高の仲間と出会えた。つくづくそう感じているよ」
「何言ってんだよ、ケンジ。そんな俺たちをいつもまとめてたのはお前じゃねえか」
トウシが照れまじれにそう言う。
「そうよ、ケンジ。私たちこそ、あなたがいて良かったと思う」
いつも厳しいライヒだが、今日は素直だ。
「ケンジさんがいて良かったと私も思っております」
シュジィは変わらず真面目だな。
本当にいい仲間だ。俺はこいつらたちと一緒に旅を出来たことをずっと誇りに思うだろう。
「この三年間、色んなことがあったよなあ……」
「俺とケンジが旅をしてて、そこにライヒとシュジィが加入してパーティになって」
「ケンジったら、毒キノコでも構わずかぶりつくんだから。今でも生きてるのは私の回復魔法のおかげなんだからね」
「あの時は死ぬかと思ったよ…本当に感謝してる、ライヒ」
「服用する薬を間違えた時は本当に焦りました」
「あの時、シュジィがすぐに気づいてくれて助かった」
「危険なダンジョンでも飛び込んでいくもんだから肝が冷えたぜ」
「それはお前も一緒だろう、トウシ!」
俺たちは顔を見合わせ、大声で笑う。いつまでもこの時間が続けばと誰もが思っていた。
だが、俺たちは前に進まなければいけない。こんな時、先頭に立つのはやはり俺だ。
「そろそろだ。みんな、覚悟はいいか」
「ああ。必ず魔王のやつをぶっ倒して、世界に平和を取り戻す!」魔王用に揃えた装備に身を包んだトウシが叫ぶ。
「故郷のみんなに自慢してやるんだから!」ダンジョンから手に入れた伝説の杖を構え、ライヒも意気込む。
「気を引き締めていきましょう」いつもの白衣のシュジィもつぶやく。
俺は、この仲間たちと巡り会えて、本当に幸せだと思う。俺たちが揃えば、出来ない事なんて何も無い!
「さあ、行こう!魔王を倒して、またみんなで朝まで騒ぎまくろうぜ!」
そして俺たちは、魔王城へと足を踏み出した。
「先生、三号室の患者さんの様子はどうですか?」
「ああ、山田健二さんか。うん、悪化はしてないんじゃないかな。相変わらず勇者だの魔王だの言ってるけど」
「彼は、本当に自分が物語の主人公だと思い込んでいるんですよね?」
「そうだね。彼にとってはそれが真実なんだ。仕事とかで過度なストレスを受けすぎると、たまにああなっちゃう人がいるんだよ」
「これから治る見込みはあるんですか?」
「はっきりとした事は言えないけど、彼の中で物語が一区切りついた時に、いきなり正気に戻るっていう可能性が高いと思う。こういう患者さんの場合は、否定するんじゃなく、話を全て肯定してあげるのがいいんだよ。僕も勝手に登場人物にされてるみたいだしね」
「正気に戻った時に、彼はどんなことを思うんでしょうね……」
「そうだね…… もしかすると、一緒正気に戻らないのも、ひとつの幸せと言えるのかもしれないね」
異世界で出会った仲間たちは最高です! あびす @abyss_elze
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