第31話 夜の温泉街



「綺麗ですね」




咲宮さんの感嘆の声

思いつきの弾丸ツアーでたどり着いた温泉街



あたりはすっかり暗くなっていたが、周囲はライトアップされているので、視界は良好だ。むしろ別世界に迷い込んだような錯覚におちいる。



(あー、なんだこれ・・・千と千尋っぽい・・・)



いつも冷静な咲宮さんも若干子供みたいにはしゃいでいる様に見える。


ひんやりした気温、夜空に満点の星、近くを流れる小川、澄んだ空気、紅葉した街路樹と提灯の灯り、雰囲気に流されて、自分自身も疲れを振り切ってテンションが上がってきた。



「遠いトコから、遅くまでお疲れ様ですぅ」



笑顔で迎えてくれる女将さん

着いた宿は木造で趣がある。


長い黒い渡り廊下を歩いて部屋まで移動する。



「では、ごゆっくり」



出ていく女将さん、部屋に取り残される咲宮さんと俺・・・



・・・んん?なんで一部屋?




「当然、一緒に決まってるじゃないですか」



・・・そうか

・・・咲宮さんが言うなら、そうなのだろうか・・・



もう疲れ過ぎて、思考するという行為がおぼつかない。




あ、この宿は『部屋露天風呂』も付いてるんですよ。




部屋風呂?




部屋風呂と聞いて、俺と咲宮さんが一緒にお風呂に入る様なイメージが勝手に頭の中に生成される。



・・・いや、それ・・・流石に不味くない?・・・



さっきまでぼんやりしていた頭が再び再稼働を始めた。




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