第29話 バスケで点を取れる確率
星城高校バスケ部
俺が入部した頃は、新コーチの指導のもとメキメキ強くなっていった時期だった。
彼の指導方針の一つに「1 on 1で各個人が高い得点率を持つ事」という指標がある。
バスケットにおいて、『5人全員が得点』できる事が、相手へのプレッシャーになり、戦略を練るための大前提となっていた。
今まで何となくバスケを続けていた鷲尾も、その得点方法を模索する必要に迫られる。
バスケにおいて得点率100%であるのは、ダンクシュートだが、これは自分では不可能だった。助走つけないと飛べないし、ゴール前は密集してるし。
ドライブでの切り込み。これもへたっぴだったな。
次にロングレンジのシュート、これも相手が居ない状態では、そこそこ入るが、マークに着かれると途端に確率がガタ落ちする。マークの手が邪魔だし、特に相手が強豪校になる程に壁が高くなりとてもじゃ無いがまともに打てなかった。
走ってマークを振り切って、パスをもらって打つのが基本だが、移動の加速を殺しきれず、やはり静止状態に比べて入る確率がガタ落ちした。
高校時代はそんな『無理ゲー』に攻略の糸口が見つからず、悩み続ける日々だった。
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ダンクを見られた後
咲宮さんは、こちらにやってきて私も混ぜて欲しいとお願いされた。
二人でパス回しをする。
1回目のオフ会の時点で察していたが、やはり咲宮さんはバスケ経験者だ。女子なのに良いパス放るなぁと感心する。
「じゃあ、体も温まったので、1 on 1 やりますか」
私守備には自信あるんですよと話す咲宮さんはやる気満々だ。
攻撃側の鷲尾はゆっくりボールをドリブルして様子を見る。ジリジリと距離を縮める咲宮さん
(・・・学生時代を思い出すな)
近寄られる前に一気に体を引いて、後ろ足に体重をかけてロングシュートを放つ。
ボールはゴールに吸い込まれる様にすぽっと入る。
「・・・」
沈黙、
いきなりのロングシュートは空気読めて無かったかなと鷲尾が謝ろうとした瞬間、
「今のフェイダウェイ、凄いです!」
目を輝かせる咲宮さんにほっと胸を撫で下ろす。
フェイダウェイは、1 on 1 ばかり練習させられる高校時代、苦肉の策で練習しまくった得意シュートである。マークされていてもある程度は確率良く入る。
「もう一回、お願いします」
咲宮さんは負けず嫌いの様だ。
鷲尾がボールを受け取ると今度は間髪入れず距離を詰めてくる。
だが、その場合の対処法は簡単で、逆をついてドライブで抜くのは容易い。
「く・・・」
・・・
何回か1 on 1 が続く。
ずっと自分がオフェンスでいいんだろうかともいながらも、咲宮さんのディフェンスは、徐々に自分の動きに対応してきてマークが厳しくなってきた。
というか・・・
胸・・・
咲宮さんの大きな胸が凄く近い。
がしゃんとシュートを外す。
「あれ?・・・さっきから、シュート率下がってません?」
咲宮さんの鋭い指摘に、鷲尾は必死に誤魔化した。
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