第20話 そこに居る 美空社長 は本物か?
最近、死ぬほど忙しい。
朝、
通勤電車に揺られながらため息が出る。
会社に行きたくないが・・・そうもいくまいて
それもこれも、ウチの課長が
余計な仕事をたくさんもらってくるからだ。
咲宮さんとは課が異なる。
あっちの女性課長は優秀で、特殊な技術もあるから
収益の高い仕事を取ってこれるし、スケジュールも融通が利いて、残業も少ないらしい。
逆にウチの課長は技術がないから
雑務に近い仕事を、とにかく大量に取ってきて、上層部のご機嫌をうかがう事に必死なのである。
というかウチの会社もIT企業の中じゃ無名もいいとこだし
仕事も下請けの下請けの下請けの下請け仕事しか回ってこない。
ああ、この東京、上を見ればきりがない。
この間テレビで見た、IT界のカリスマなんて呼ばれる『美空社長』なんて
大豪邸に住んでたし、毎日毎日美味しいもの食べて、シャンパンとか飲んだりしてるんだろうな・・・
「わっしーくん・・・たっぷ・・・してくれんかね・・・」
下の方から、お婆さんが自分に話しかけてくる。
この方は『トメさん』、
龍宮寺が電車で出会った迷宮友達らしく。
電車に居ない時は、この人に頼るようにと俺を紹介したと聞いた。
はいはい、スマホスマホ
俺はお婆さんの方にスマホを差し出す。
「ありがとねぇ・・・これ・・・お礼の黒飴」
お婆さんがぷるぷる震えた手で差し出す飴を受け取る。
・・・
お婆さんを降りる駅で見送りつつ飴を舐める。
龍宮寺の奴、色んな人に俺の事を紹介し過ぎな気がする。
ちょっと注意しないとな・・・
この間も『美空社長と迷宮友達になったんだけど、すごくない?』なんて大嘘ついてたし
「君、わっしーくんだよね?」
美空社長なんて上級国民の貴族様が電車に乗っている訳がないだろうに
ああいう人は、運転手付きのリムジンに乗っているんだよ!
「あのーちょっと?」
ポンと肩を叩かれて振り向く。
「やぁ!」
眩しい笑顔の背の高い女性・・・
その姿は、間違いなくテレビてみた美空社長その人だった。
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