第5話 考える第一声



「今日は死んでないぞ」




お昼休み

自販機の前に立っていた咲宮に放った第一声



今日の通勤中、再び咲宮に会ったら何を言おうかずっと考えていた。

「へぇ、咲宮さんもソシャゲとかやるんだー意外だなー」とか

「このゲーム面白いよねー」とか

「どんなキャラ使ってるの?」とか

色々案を出してみたものの・・・


自販機前に来て、彼女が何を買おうか人差し指を唇に当てて悩んでいる綺麗な姿を見た瞬間

頭が真っ白になり、会話案が吹っ飛んでしまい、無意識に出た言葉が『それ』であった。



「はぁ・・・そう、ですか」



こちらを見て

きょとんと目を丸くする彼女



何かしくじった気がして、恥ずかしくなってくる。



「ごめん、昨日はありがと」



そう言って踵を返して、自分の席へ向かおうとする。

(失敗、失敗)




・・・




動けない。

俺のシャツが何かに引っかかっている。


いや、咲宮燈華が俺の裾を掴んでいる。




「?」




「あの・・・今日は私の方が・・・」




申し訳なさそうに恥ずかしそうにそういう彼女

俺ははっと察してスマホを取り出す。


お互いのスマホを近づけて、ピロロッという音が鳴る。



スマホの画面を確認する咲宮・・・



蘇生できている事が確認できると「ありがとうございます」と言ってこちらに笑いかけた。



その上品な姿にドキドキしながら

なんとか平静を装いつつ、席に戻る。





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