13 機体強化&スキル育成

「そういえばさぁ……。機体や武器を購入するのにはクレジットってお金が必要なのに、それらを強化するのには技術ポイントが必要ってどういう理屈なわけ?」


 パソコンに向かって機体強化や武装強化の項目をちらっと見ながら、どの程度のポイントが必要になるものか確認しながらマモル君に聞いてみた。


「ああ、それ……、βテストの時にユーザーからユーザー補助AIに質問が多かったんでこじつけたみたいですけど、確か『プレイヤーが撃破した敵機を回収してリサイクルしてる業者の大本が各プレイヤーのとこに出入りしてる外注の整備業者と一緒で、その企業が整備業者で使えるポイントという形で撃破者に還元してる』だったかな?」


 マモル君はペットボトルの炭酸飲料をちびちびと呷ってはその度に顔を顰めていたが、表情が緩んだ時には美味しそうな顔をしているので炭酸が嫌いというわけではなさそうだ。

 優先順位がどうなっているものやら、少しずつコーラを喉に流し込む合間に私の質問に答えてくれた。


「……なんで、極端な話、ガレージの現場監督に頼めばクレジットでも強化してくれるらしいですよ? でも……」

「ああ、そんな事してたら、いつまでたってもクレジットが貯まらないと」

「そういう事です」


 基本的には技術ポイントを使って強化をしていくという都合上、あくまでクレジットは機体や武装の購入やら後は飲食だとか細々とした物に使われるようなゲームバランスで価格設定がなされているのだろう。


 あるいは整備業だけではなく、破壊された機体を回収してリサイクルに回すという業務を行っているという事は結構な大企業のように思えるので、技術ポイントの値付けは顧客の囲い込みのために割安になっているというのも考えられそうだ。


 あとはどうしても技術ポイントが少しだけ足りないという時なんかは現場監督に交渉して不足分をクレジットで補うなんて事もできるかもしれない。

 まあ、今はそんな切羽詰まった状況というわけでもないのでしばらくはそんな手は使う事もないだろうけど。


「まあ、いいわ。とりあえず最初は……、っと!」


 現在、ニムロッドが装備しているライフルは初期配布機体のおまけで付いてきた物であり当然ながら性能は低い。


 次回のミッションの報酬で上位品の購入ができそうなので、武器の強化は今回は無し。


 マウスを操作して機体強化の画面に進むとさらに各部位の項目が出てくる。


 ▷ジェネレーター

 ▷スラスター

 ▷冷却器

 ▷駆動体

 ▷センサー類

 ▷装甲

 ▷プロセッサー

 ▷機体フレーム

 ▷固定武装


「ねえ、マモル君。駆動体ってのは何?」

「ええ、HuMoの全身を稼働させる、人間で言うなら筋肉とか神経の役割を果たす物ですね。サーボモーターやらガス圧やら油圧のシリンダーにそれらの制御基板とか配線などをひっくるめた物ですね。嫌でしょ? そういうのが個別に強化しなきゃいけなかったら」

「ああ、それは確かにそうね……」


 となると後回しでいいか。

 筋肉とか神経の役割をするものとなると、強化したらニムロッドの身体能力が向上するのだろうけど今のところその辺で困った事はないし。というか素早く動きたくなったらスラスターを吹かしているのだから、もう少しHuMoの操縦に慣れて強化の必要性を感じてからでもいいだろう。


 同じように現状で不満を感じていないのはジェネレーターに冷却器にセンサー、プロセッサーあたりも後回しでいいかな?


 2回目のミッションで戦闘ヘリに側面に回られたりしたのはレーダーなどのセンサーの問題ではなく、敵が丘の陰に隠れてきたからだ。ならばセンサーを強化したって障害物の向こうが見えるようになるわけでもないだろうし変わりは無いだろう。


 また必要が無いとまでは思わないけど、あまり気乗りがしないのが装甲の強化だ。

 1回目のミッションで操縦に不慣れなためにけっこうなダメージを受けてしまったが、ニムロッドは同陣営製の同格機体オライオンに比べて装甲が薄く、代わりに機動力が高い機体であるので短所を潰すよりは長所を伸ばす方が私の好みである。


 あとは機体フレームを強化したらどうなるものかと画面の項目をクリックしてみると、さらに「搭載可能重量の増加」と「抗堪性(HP)の強化」という小項目が表示されるがこれも後回し。


 ライフルの対空炸裂弾の存在を知った今となっては固定武装のCIWSの強化も優先順位は低い。


「ならスラスターの強化か。お、だったら……。マモル君、パイロットスキルの『スラスター制御』をレベル2にしてくれる?」

「はい。機体強化で推進力自体を強化して、パイロットスキルで推進剤の消費を抑える。シナジーがあっていいのではないでしょうか? お姉さんにしては珍しく良い考えだと思います」


 マモル君は何か毒を吐くノルマでもあるのだろうか? それともキャラ作りに必死なのか?

 今さら気にするものでもないので聞き流して私はパソコンを操作する。


 ▷スラスター

 →推進力強化

 ・推進剤搭載量の増加


 スラスターの項目をクリックすると先ほどと同じように2つの小項目が現れる。

「推進剤搭載量の強化」はパイロットスキルでカバーできるので今回は「推進力強化」一択だ。


 →推進力強化

 機体本体に装備されているスラスターの推力を5%向上する(この機体は4段階まで強化可能)。

 オプション装備のスラスターユニットに対しては適用範囲外。

 必要技術ポイント:50


「え、消費ポイント50? け、けっこう使うのね……」

「高ランクの機体ほど強化にかかる必要ポイントは多くなりますからね」

「ま、それもそうか……。よし、女は度胸! ポチっとな!」



 悩んでもいてもしょうがないと実行ボタンをクリックするとプレハブ事務所の外が騒がしくなる。

 作業指示を受けて整備業者さんたちが動き出したのだろう。


 これで残る技術ポイントは50。

 推進力強化の二段階目を実行するには125ポイントの技術ポイントが必要になるようだ。

 雑魚敵からでも入手できる分、消費が激しいという事だろうか。


「それじゃマモル君、次のミッションをお願い! 試しに手頃な『難易度☆☆ホシニ』はないかしら?」

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