般若の首を取ったよう?

 般若が出ていって1週間以上経ったけれど何の音沙汰もなし。嵐の前の....ね。

私はジュリーに甘えっぱなしも悪いので母にカイを預けてバーに出た。母は般若は?って不思議そうにしたから兄は珍しく言ってないのでしょう。


「綾さん!」

「ごめんね。任せっきりで」

「大丈夫ですか?もービックリしましたよ。」

「色々あってね。しばらくは迷惑かけるかも」

「俺は綾さんの迷惑なら買ってでも受けますよっ」

「また〜ありがとう」

「たっくんもごめんね。」

「いえ」


「綾さん、あのとき結局あの彼んちいったんですか?ほら建築の悟さん?安藤さん」

「ああ。行く当てなかったしね。別に何もないよ」

「いや、あるでしょ。どーみても」

「もう!仕事しましょ」

「はあい」



+++


翌日 兄がやって来た。急ぎだからと3階には行かずうちのリビングで。

「綾、たっくんて呼んでるバイト、あいつ仲間なかま 武久たけひさだな?」

「うん。そうだけど.....」

「調べたら、高野家の従業員だ」

「え.......」

「ずっと綾を監視させられてたんだろ。悟のことはジュリーは?仲間 武久には?漏れてないか?

あー、しまった。俺ジュリーに口止めせずに悟をあん時行かせたから。なんか言ったかなあいつ。」


 なんてこと.....般若がそこまで。こんな騒ぎになる前から。私は昨夜の店でのやり取りが不安になった。

兄にそれを告げると急ぐように去っていったのでした。


 さらにその晩、般若からのメールを見るやいなや、私は悟さんの事務所へ走った。


 事務所には、既に般若がいたわ......。


「お前ら、あの晩一緒にいたのか?」


般若の面がさらに分厚くなったようにみえた。

たっくんの報告は早かった......。


「あぁ」と悟さん。


「スパイ置いてたなんて用意周到ね」


「うるせえ 質問にだけ答えろ。デキてんのか?ヤッたのか?」


「気持ちだけよ、私がね。」


「はっ。気持ちねぇ。悟は昔から好きだろ 綾が。」


「あぁ お前がいつか綾を苦しめるまでは、手出さないって決めてた。陽介、お前は友達だから。何より綾は俺にとって大事だから。苦しめたくない」


「友達?人の嫁に色目使ってか?どーでもいーわ。お前には社会的に死んでもらう」


「悟さんは関係ないでしょ。悟さんに昔からどれだけあなたも助けられたのよ」


「全部、綾が欲しかったからだろ?綾をものにしたいからだろ?」


 はあ やっぱり話がつうじません。

「はあ やはりあなたには話が通じませんね。私は長年耐えてまいりました。もう限界でございます。

ご自分の行いには目を瞑り他者ばかりを攻める。その上にあなたのような人物は成り立つ。そうしなければ自己を肯定できない。歪みきったわね、その頭んなか。もはや人の心持たず。


異論があるようなら出るところへ出て、お話いたしましょう。最近は離婚理由に認められる内容も多様化してますし。

あなたが社会的に殺すと言うならば、こちらもそのように致しましょうね。

今日はお帰りください。目障りですので。」


「......綾?どうした?」と悟さんがきょとんとしています。

あっ心の声がついに出てしまいました?


般若は出ていきました。お帰りになりました。

私が一番異常者ですか?


「あ 私 つい」

「ワハハハッ」

笑い出す悟さん

「陽介もびっくりしてたね。あの雰囲気で淡々と言われたらそりゃ困ったんだろな」

そう。いつもの私が発する単語の何倍もいきなり発射したのでした。


兄も悟さんの事務所にやって来た。

「あれ?」

「綾が撃退したよ」

「え?どうやって?」

兄は長い棒状の機械を出し部屋中動きまわる。

もう私達兄妹は、随分とイカれています。


すると、ウィーンウィーンと音がしました。

「あったぞ。ホコリもこれだけ着いてない。多分さっき付けたんだろ。スパイ置くぐらいだ。何でもしてくるだろう....気をつけろよ。二人とも」

兄は盗聴器を発見した。念の為シェアホームも店もチェックしたがそのひとつだけだった。


私は離婚準備に入るのでした。

母に報告すると「やっとね。やっと決めたのね。なんでも手伝うわ。」と言っていました。誰も止めようとはしません。般若以外は。

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