面の皮を己で剥ぐ
子供達の寝息をよそに大人の夜は続く。やっぱり男性陣は仕事絡みの話になるよう。般若が一番敏感な話題ね。
あこの旦那様たけしさんはIT系
かずぴの年下旦那様ともゆきさんは飲食フランチャイズ営業
ゆりの旦那様まさしさんは脳外科医
みのりの旦那様ひろかずさんは銀行員
般若はもう既に酔ってるようですね。かずぴ旦那様ともゆきさんが若いからって調子に乗ったようでお出になりました失礼な他人をさげすむ般若が。
「俺さー飲食のやつはあんまり好きじゃないんだよな〜調子いいだけでなんか軽い感じしてよ。」
顔から笑顔が消えるともゆきさん.....。
「私も飲食ですけどね。ともゆきさんは営業ですけど私はもろ接客もしてるわ。なかなか素敵な仕事よ」
たまらず、私はともゆきさんに攻撃が向かないように口を挟んだ。
「女は口ばっかりうるせーな」
すぐこれです。女はうるせー。般若が一番うるせーと言いたい、言いましょうか?
「ピッチ早すぎたな。寝たら?みんなに迷惑かける前に。」
その後、悟さんのヘルプで結局般若だけ先に家へ。
「さっ飲み直すよっ」
あこが場を和らげようとしてくれる。
「皆さんごめんなさい。陽介はあんな調子で。でも綾はとってもいい人間だと思うから懲りずにお願いします。」
「安藤さんがずっと居てくれたらいいのにな」
ともゆきさんが冗談で悟さんに言った。
みのりの旦那様ひろかずさん
「なかなかいいキャラですよ。陽介さん。僕は大歓迎ですよ。なぁみのり」
みのりが微妙な笑顔で
「そうだねー。でもヒロ君があの発言したらぶっ飛ばすからね」
「ハハハハハ」
ゆり まさし夫婦はとっても無口。
そんな無口で硬派なまさしさんが
「旦那様、陽介さんは昔からですか?急に変わったとか
」え?診察のような静かな問いかけに戸惑いつつも私は答えます。
「子供が生まれる前、正確には結婚したらですね。昔は今ほど高圧的ではなかったです」
「ん~そうですか。」
考え込むまさしさん。何か気になったのでしょうか。または、ゆりいわく まさしさんは大変神経質だそうで、般若に腹がたった故にアイツはビョーキだって言いたいのかもしれません。
皆さんはその後他愛もない話で楽しそうですが、私は初日の夜から実はかなり疲れていました。
こっそりとアルコールを飲まずしのいでいましたのに、
「おっなんでなんで、私より弱い綾がシラフ?おかしいーやろ!」
あぁ......一難去ってまた一難です。
もう一人酒癖がよろしくないお方が覚醒されました。あこ様です。
「おいっあこ 飲みすぎだろ」
たけしさんが言うも、ビールを渡すあこ。私は一本だけね......と、ビールを開けました。
「明日休みだしいいやろいいやろ〜」
酔っぱらいあこは私からすれば可愛いのですが、一瞬みせたたけしさんの顔が物凄く冷たくて私は驚いたのです......まるで自分を見ているようで。
結局二人目の脱落者を出しお開きとなりました。
残ったメンバーで片付けていると、まさしさんは明日早いのでお帰りに。
他の旦那様にも帰るよう促します。あ、ひとり居ました。旦那様でない方が。
私は洗い物の途中でトイレへ走りました。リバースです。
酔が回るも、ある程度は平然を装える術も大人ならでは.....でしょうか。
私はシャキッとしてまたキッチンへ。
「安藤さん帰りますか?それとも上?」
みのりがききます。
「あぁ。帰りますよ。マンションに。」
「じゃ、綾 下まで見送りなよ」
「ありがとう」と言い残し私達は下へ。
「疲れただろ 綾」
「悟さんこそ 陽介があんなんだからごめんね」
「綾は大丈夫なのか?」
なにが大丈夫?と?
「大丈夫。酔ってない」
「違うよ。あいつとの、その、暮らし 大丈夫?」
暮らし?大丈夫なわけない。だからこうなりました。
「うん.....いや。」
「溜め込まず、俺ならいつでも聞くよ。秘密も守るよ......じゃぁ おやすみ」
私はみんなに迷惑かけてしまうのだろうかなんてふと思いました。ロクデナシ般若と関わらせ、他の人に私が言えないことを言わせてしまうようで。
私が般若に皆の前で怒鳴り散らしてもまた気を使うでしょうし。
柄にもなくちょっと罪悪感です。
上へ上がると、すっかりキレイになったテーブルでかずぴとみのりが残っています。
「ありがとう」
「ね!安藤さん。すんごい優しいよね。鈍感なのは般若だけだな!」みのりが力強く言ったのを聞いて私はつい、
「朝起きたらいきなり般若が悟さんに代わってないかな〜そんな薬あったら欲しい」
「その表現ちょっと怖い」
あら怖いかしら。
―――翌朝
また般若の罵声が飛びます。
何やら仕事でトラブルがあり、八つ当たりです。
家のまだ片付いていないカイのおもちゃを蹴り飛ばす般若に私は
「ものに当たらないで!」
カイが泣き出しました。あぁなんという悪循環。
「うるせっ泣くな 俺は泣き声がいちばんキライなんだよ!!お前と居るからこんな育ち方なんだろが」
カイの泣き声は更に大きく......。私はカイを連れ、外へ出ました。
プランターに花を植えていたゆりが
「こういう時こそ、外じゃなく3階に行こうよ」
ゆりの顔が穏やかでまるで花のように見えました。
他のみんなが3階に居て、カイはすっかりご機嫌に遊びだしました。
般若の声は外まで聞こえていたそう.....。
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