親しき中にも礼儀...
あこはいわゆるパリピ。話し方、ノリの良さ、仕草を見れば何となく母になる前の姿が浮かび上がるもの。
そう、いくら母の仮面をかぶってもね。
そんなあこがシェアホーム初日の夜のためのイベントを提案したの。
「他人家族が一緒に暮らすってなかなか神経つかうでしょ?でー思いついた!パジャマナイトしよう」
「パジャマナイト?」
「欧米でさっ女子集まってお泊りするやつよ。みんなパジャマで。飾らずに語り合いましょって」
さすがあこ様なかなか粋な提案ですこと。
「えっ。スッピンで?」ユリが心配そう。
「当たり前さっ。だって毎日気使って起きてから寝るまでメイクしないと顔合わせらんないとか地獄でしょ。あ〜あの人今すっぴんだから、あとにしよう〜とか、いやぁ私すっぴんだから今は無理〜とかさ。疲れるでしょ?」
パジャマナイトには全員参加とのお触れが出た。
+++
あちらこちらで引越し業者が出入りする中、悟さんもやって来た。本やら文房具やちょっとした衣類食器を持参したよう。
「もしかしてカナさん?」
「悟さん?」
二人はそれぞれ私からよく名前を聞くのですぐ分かったよう。
「綾、失敗したね。悟さんと結婚すりゃ良かったのに」
カナがニヤリと私を見て言ったのでした。そう.....誰が見てもそういうでしょう。
みのりが
「綾ー!Wi-Fiパスワードなに?」
そうでした。私はオフィス用のWi-Fiルーターを持参していて既にネットも引いておいた。
あっパスワード....hannyaだ。変えたほうがいいわよね。今パスワードはハンニャよって叫んだらみんなビックリするでしょうし。
パソコンを出して......あれパソコンどこ?
「パスワードはエイチエーエヌエヌワイエーだって!」
あ.....般若、何故パスワードを?
般若が私のパソコンを勝手に触っていた.....。
さっき設定画面開き、私のid passファイルも開きっぱなし。しかも、ありとあらゆるパスワードを私はhannyaにしていたの。忘れないように.....。
みのりも固まっています。幸い般若は、何も分かってない。もう一度変えましょう。パスワード.....。
「勝手にパソコン触らないで」
私はノートパソコンを持ちあげて素っ気なく言いました。
「なんだよ夫婦のものは夫婦のもんだろ」
これは私が仕事用に自分で買ったもの.....。というか何一つ買ってもらったことは無い。
私の結婚指輪も義理両親が買ったもの。味気なくて着けけないまま月日が流れ今はきっと何処かにしまい込んだまま......質屋に入れたいぐらい。
俺の物は俺の物、お前の物は俺の物!そういう考えでしたね......あなたはいつも。
夜がやってきました。みんな程よく疲れています。
「じゃパジャマナイトですよ!」
あこは大きな目をさらに大きく開けて元気なようでした。
「あれ?安藤さんは?」
キョロキョロ悟さんを探すあこに般若が
「あいつは仕事だろ。また明日にでも来るんじゃない?」
「えーパジャマナイト来るように言ったのに〜彼だって立派な住人ですよね?」
あこ.....住人ではないのよ。
「お邪魔しま〜す」
?!スウェット姿の悟さんがやって来ました。
「んじゃみんな寝る用意!ほらっちび共も!」
子供たちも母たちも寝る支度に一旦各家へ。
「まま!さとちゃんもいっしょにねるの?いっしょにねたい!」
「カイ.....さとちゃんは寝ないよ。パジャマのパーティーに来ただけ」
今回ばかりはかずぴの旦那様も出席。全員そろいました。
子供達は大はしゃぎです。少なくとも子供達にとってこのシェアホームは夢の家であるようで私もほっとしたところ。
何かつまむものをと、私はキッチンへ。誰かが背後に来ました。
「どうしようかな〜適当にフルーツとチーズとクラッカー買ったはず.....」と呟きあこかな?と振り返れば悟さん。
「あっ。お酒なら冷蔵庫に」
「手伝うよ。いやむしろ俺がするよ。綾は座っておいで」
ほんとに、気がききます。でも、シェアホーム発案者は私。おもてなし精神で、結局私達は二人で準備をします。
「おーいっ悟 座れよ。そんなもんうちの嫁にやらせろ」
般若が叫びます。冷たい視線が多方向から向けられるも全く気付いていない様子。
酒癖の悪い般若が今日は酔っ払らわない事を願う。あぁ別にもう、いいのでした。
般若が失態晒そうが私には知ったこっちゃないのです、このシェアホームでは。
「すっぴんでも可愛いね」
小さくそう囁き悟さんは般若の隣へいきました。
子供達はみんな幼稚園児。もう限界が近づきパタパタとリビングの隅に敷いておいた布団に眠りだします。
私達はそれがおかしくって笑い、子供達6人をちゃんと一列に寝かせました。
あこの旦那様が、子供達を眺めに来て「この顔が一番の癒やしですよね。だから頑張らないとって思えます」
あれ?あこはどうして、こんな旦那様と離婚したがるのでしょう。
般若は毎晩カイの寝顔すらみません。
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