持ちつも持たれず?

 朝は不機嫌対決よ。

寝起きの悪いカイと、出勤前はイライラの般若。

「ままー、ごあん食べれないー多いよぉ」

眠くて泣くカイに

「うるせっ。黙って食え」

小声で「朝からうるせぇ泣きやがってガキ」とも言った。

それを聞いた私の目はスワル。

「綾ー俺の靴下は?」

「さぁ....無い?」

「ちっなんでないんだ 腹立つなーどいつもこいつも」

私がどいつなのかこいつなのかはどうでも良いですが、私は般若の衣食住のうち、衣は関わらないの。

洗濯はするけれど、パンツはクタクタのもの、靴下は行方不明なら行方不明のまんま。

本人が買い足すか、買ってくれと言うまでは買わない。

洗濯したパンツを取り込む時までつまんで取って、ふわりと畳む。接触をパンツとさえも最短時間に抑えるの。

これ、本物の本人のお尻触れって言われたらきっと気絶するわ.....ね。


 イライラが止まらない般若は、ぶっきらぼうに小さな声で「じゃ行くから」

私も遠くから聞こえるか分からない声で「行ってらっしゃい」


私は嫌われる努力を朝からも実践中!


「さっカイ〜幼稚園行くよ〜」「はい!ままー」

私達は般若が居なくなるとご機嫌なの。


 朝から受注処理をし、アルバイトさんの女の子に仕事を依頼する。みんな在宅でしてもらっています。

午後からはバーの準備。任せきってもいいのだろうけど、空いた時間は顔を出さなくてはね。

それに、私が忙しくする理由がひとつあるの。

般若一家の会社に入社させられない為。昔一度入って、痛い目にあったわ....般若の家族もまた般若。


「おつかれさまぁ」

「綾さん!おつかれさま。」

「そういえばっ。あの家どうなったんですか?建てるんですか?」

「まだ返事の期限が明日だから。」

「じゃ、空きが出たら社宅にしてくださいよ」

「ははは 考えときます。たっくんどう?やっていけそう?」

「あっはい。」

たっくんはお客さんの頃からこんな感じ。

物静かで話しかけても返事は一言。働きたいって言われたときはびっくりでした。


 在庫チェックをしてる私に、ジュリーがあれやこれや世間話を振りかける。彼は逆にお喋りが止まらないわね。

「綾さん!聞いていいですか?」

「はい.....」も〜っ。数数えてんのに。

「綾さんって浮気したことないんですか?」

カウントが止まります。

「え?なんで?無いですよー1度も」

「ふぅ〜ん」

「なによそれ。」

「こないだの建築の人!」

「が、何か?」

「もーっとぼけちゃって。絶対なんかある!なんかあった。いや、現在進行形と俺は見た!」

後ろでテーブル拭いてたたっくんまで早ワザで振り返ります。

「ジュリー、お客さんの話聞きすぎて女はみんな浮気すると思ってない?」

「へへ。そうかも。でも綾さんがもし浮気するなら、それはきっと本気ですよ。」


 ジュリーの言った本気という言葉に少しばかり、心が揺れました。30を過ぎて2年が経ち女として母である前に.....。

般若は、子供が産まれたら私は黙って何でも許し、何でもこなし、家庭を守ると思い込んだよう。

だから安心しきって、好き放題。生活費はくれず、自分は海外に4年行ったり来たり。海外で起業するからと、私からお金も借りました。もちろん起業はすべて失敗よ。



夫婦関係はギブアンドテイク。与えて与えられるもの。今のところ私はギブアンドギブ。そのうち、ギブアップするかもしれないのです。


 夜、般若の帰宅。

「ぱぱー!ままね、僕に怒る時。『ままの目見て見て!』ってすんごい目開くんだよ。面白いから見てぱぱも」面白いから....。

私がギブアンドギブ出来るのはカイにだけ。

子供には無償の愛を受ける資格がある。般若にはないのです。無くなったのかもしれません。


「ふぅん。」

スマホゲームに夢中で愛想のない般若。せめてカイだけには、優しくして欲しい。その為だけに貴方は存在するのだから。

精子あって良かったわね。


眠ろうとしたら昔からの親友 カナからメッセージ。

『夢の家すんごい気になるし!絶対行くわ。あのさぁ、ダメンズ見抜くコツある?』

カナは独身。誰か気になる殿方でも出来たのかしら。


『洗い物するよって言って、スプーンとか箸とか洗いにくい小物だけシンクに放置プレイのヤツ』

『勉強になりました。』カナは私のたらしっぷりも、般若の話も知っているの。きっと私は反面教師ね。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る