戦闘 大嫉蛇

でかい。僕はその大きさに足を竦ませてしまう。


 その大蛇は僕に興味が無いように一瞬で食らいついてきた。捕食というよりただ僕を殺すように。僕は真っ赤な口の中に入るはずだった。


 でも、大蛇は僕を口に入る前に見えない壁に弾かれて来た道に吹き飛ばされた。


「こ、これが加護の力?!」


 吹き飛ばされた大蛇はすぐに体勢を直すとこちらを睥睨してきた。こちらを敵と見直したみたいだ。


 僕も弓を構える。弓なんか使った事なんか無かったけど自然と体が覚えている。これも加護の力で矢が外れる気がしない。


 矢を放って見るけど大蛇は鼻息を吹くだけで矢を吹き飛ばしてしまった。


 大蛇は僕の攻撃が通らないことを見ると体をくねらせて僕に巻きついてきた。


 加護の力のおかげで大蛇の体が直接僕の体に触れることは無いけどそれを取り巻きぐるぐると締め付けてきてる。


 跳ね返されたことを考えてか巻き付く力を徐々に入れているようだった。


 さらに大蛇は巻きついた上から僕を見て牙からゆっくりと粘ついた透明の液体を垂らしてきた。加護の力で僕の頭上で止まったとはいえ恐らく毒と思える液体が頭上にあるのは生きた心地がしない。


 僕はとりあえず蛇に攻撃してみることにした。ベルトに引っかかっていた剣を取り出し一心に構える。これも慣れ親しんだ感覚。剣なんか握ったこともないのに。


 僕はまっすぐと剣を振り下ろした。しかし、その分厚い鱗に阻まれて言葉の通り刃が立たなかった。


「ど、どうしよう」


 加護は相当硬いのかビクともしないけれど僕からも攻撃出来ることがない。このままいけば僕が餓死するのが当然だと思う。


「そうだ」


 僕は女神様に貰ったスマホで蛇の弱点を調べてみることにした。蛇のページを色々検索していく。


「これだ!」


 その蛇の記事を読んで勝つ方法は思いついた。でも、この状態じゃ…どうしようも出来ない。


 スマホから顔を上げて上を見ると大蛇の頭は他所を向いていた。何かに気を取られて僕から目を逸らしたみたいだった。


 今だ!


 僕は鱗に手をかけると登り始めた。いや、登るなんて物じゃない。使ってるのはほぼ足だけ、器用に鱗に足を引っ掛けて登っていく。頭上に体積した毒は僕の加護に反発するように退けていく。


 大蛇はこちらに気づいて頭を突っ込もうとしたがもう遅い。


 僕は突っ込むタイミングで大きく跳躍して大蛇の頭に乗った。僕は目当ての窪みを見つけるとベルトにかかっていた酒瓶を辺りに撒いて、そのまま火を放った。


「キシャーー!!」


 大蛇は苦しむように体を大きく暴れさせる。


 僕が火を放ったのはピット器官と言う蛇の器官だ。蛇は目が悪く代わりに温度を感知して物を見ている。その目とも言える部分に火を放った。


 大蛇は苦しむように暴れ狂っている。僕は加護の力で振り落とされる気は全く無かった。


 僕はしがみついたまま移動をして、目の部分で剣を出した。


 全身鱗だらけでも蛇は瞼がない。これもスマホで出てきた情報通りだった。僕は剣を大きく振り上げると目に突き刺した。


「ギャァァァァ!!」


 大蛇は体を震わせると暫くのたうち回る。その間も僕は加護の力でしがみついて堪える。すると、頭の中に声がした。


「羨ましい! 俺は嫉むぞ! 羨むぞ! 狡い! 艶羨する! 猜むぞ! セコい!」

「なんで俺にはそれが無かった?」

「なんで俺にはあれが無かった?」

「なんで俺はお前に負けたんだ?」

「なんで?なんで?なんで?」

「それ寄越せ!!」


 僕は反射的にこの大蛇からの声だと思った。そして力が抜けていく感覚。


 あっ、と思った時には手は離れていた。


 僕は暴れた勢いのまま大蛇の頭から振り落とされ発動するはずの加護が発生せず地面に叩きつけられた。強い衝撃から意識が朦朧とする。僕は誰かの叫び声を最後に意識を無くした。

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