ジャイアント・フィクション

辛間 庶務

陰キャの僕の周りが修羅場っている件について

幕の上がる前に

男は白い部屋にいや、ピンクだったか黄色だったか何色かもしれない部屋に立っていた。


 窓の外の天気は豪雨でひっきりなしに雪が窓を叩き、太陽が眩い光を部屋に投げかけている。


 何を言っているのか訳が分からないと思うが要するに天気の話は物語に関係ない訳だ。


「は?」


 おかしいと思わないか、物語に関わらない風景は描写をしなくて良いとは現実性に欠けるのでは?


 大体のラノベキャラは両親が登場しないがそれはおかしいだろう、人の子である以上両親は基本的に家に住んでいて主人公と日常生活を営むのが普通だ。


 何故作中に登場しない?


「そりゃ、登場したら使わないといけないからじゃないの?  映画の冒頭で意味深に登場したキャラが一切触れられないでスタッフロール流れたらどう思う?」


 多分、私は冒頭の事を覚えていられない。


「阿呆じゃん」


 国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。男は汽車には乗っていない。トンネルの闇が白雪に乱されるようにしんしんと雪が男の体に降り注いでいた。


「ちょっ、寒いって! さっきまで部屋だったじゃん、話の統合性が取れてないぞクソナレーターめ!」


 雪は男に触れた瞬間、形を無くした。


 男はこの極寒とも言える雪国で上半身裸、いや、全裸だったのだ。


「すいません、ナレーターさん。ヒーターの効いた部屋に戻してください」


 暖房の効いた部屋に男がいた。


「ありがとうございます」


 どういた。


「はぁ、さっさと今作の打ち合わせをしよう。今作は現実系の恋愛小説で、第1話は俺とヒロインがイチャコラするんでしょ?」


 第1話だけではなく全話イチャコラだ。


「やったぜ、現実系の恋愛はめちゃくちゃ役得が多くて嬉しいね。ちなみにヒロインは?」


 衝突した方言転校生、暴力系ツンデレ幼馴染み、病弱妹、婚期逃した女教師、お嬢様、厨二病ぼっちの6人だ。


 全員美人だ。


「属性多すぎ」


 仕方あるまい、一人一人のキャラクターが薄くても人数出せば物語を盛れる。


「キャラクターごとに事件とか物語がある方が好きなんだけどな。読者側だと」


 一応、お嬢様は家の問題で一悶着あるし病弱妹も何か問題が起きる予定だ。


 家柄のことで泣いているお嬢様を何かの拍子で発見してしまい、家庭にずがずがと首を突っ込み両親に文句を言いその勇気に免じて両親がお嬢様を許し、ついでに許嫁っぽくなる話を数十話後に予定している。


「ああいう偉い人は怖いんだよな……台本通りに上手くいかない場合があるし、失敗した場合、リカバリーがなぁ……」


 お嬢様の話よりも今は目の前の本番に集中してくれ。


「まかせろって、雑談ばかりでろくな打ち合わせ出来てないけどいつも通りで良いだろ?」


 主人公のキャラを立たせて幼馴染みと日常して


「街角で転校生と衝突する。了解」


 では頑張ってくれ、本番中は私の描写能力は常識や世界がおかしな方に動いてしまうから、極力使わない。


 私は物語を見て、心情や状況書き出すだけだから、くれぐれも物語が脱線しないように。


「了解」


 では。

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