超寝取られ烈伝 NTRドライヴァーネトル

ギアナ高地高地 新・床山スタジアム


『さあいよいよここまで参りました、第一回W.N.T.R.B.GP(ワールドNTRバトルグランプリ)!! 果たして初代優勝者の栄冠はどちらに輝くのか……』


 先程まで熱狂と歓声の渦中にあったスタジアムは、その実況の一声で静まり返った。


『泣いても笑ってもこれが最後、さあご覧ください二人の勇姿を!! この頂きまで登ってきたNTRドライヴァーのツートップ!!』


 スタジアムの中央、コロシアムに登る二つの影にスポットライトが差す。


『まずは東側、ご存知ない方はいないでしょう。若干12歳ながら世界一の研究者! NTRドライヴの開発者にしてNTRバトルの第一人者! IQ200オーバーの天才児!!!!!!』


 観客の騒めきが俄に大きくなる。


『床山マオだーーーー!!!!』


 その姿が壇上に出現すると同時に、スタジアムの歓声は最高潮まで高まり、凄まじい震動を巻き起こした。


『そして対する西側です。こちらも若干12歳。下町育ちの6年生が遥々ここまでやって来た!!!! NTRバトルに対する情熱なら誰にも負けない! 燃える炎の快男児!!!!!! 根鳥ネトルだーーーー!!!!』


 

 壇上に上がったネトルは、巻き起こる歓声等意に介さないかのように、相対するマオを真っ直ぐ見つめる。


「へへ、ようやくここまで来たぜ……マオ!!」


「フン、少しは出来るようになったようだな……根鳥!!」


「あの時偶然お前に出会っていなかったら、俺はここにいなかった……。だから、その恩! 今からきっちり返してやるぜ!!!!」


「フン、一時の気まぐれがまさか我が人生最大の好敵手を作り出すとはな……。これだからNTRバトルは面白い! 貴様の全力、真っ向から叩き潰してくれる!!」


二人の間に渦巻く因果はやがて弾ける火花となり、今まさに爆発しようとしていた。


『それでは二人とも、NTRドライヴを』


 実況解説のMr.ネトリストに指示され、二人は自身のNTRバトル専用デヴァイス──NTRドライヴを構え合う。


「「ヒロイン・プロジェクト・アクティブ!!」」


【アクティブ──〈新婚妻〉】


すると、二人の掛け声にNTRドライヴのシステムが呼応し、スタジアム上に今回の〈ヒロイン〉が出現する。


「ハン、ここに来て〈新婚妻〉とは……つくづく俺と貴様の間には、何か因果めいたものがあるらしいな」


スタジアム上の〈新婚妻〉は見るからに幸せそうな顔をしながら、2階で寝ている旦那を起こしに行こうとしている。NTRバトルにおいて最もスタンダードなヒロインの内の一人だが、この二人の間には、それだけに止まらぬ理由があった。


「忘れちゃいねぇ……俺とマオが出会った日……俺の初めてのNTRバトルのヒロインだ!!」


 一方、観客席。


「決勝に来て〈新婚妻〉……! こりゃ面白くなって来たで!」


「熟女系や学生に比べて〈新婚妻〉は防御力がかなり高い……ネトルはどうするんだろう」


関西代表のゴローと、北海道代表のピリカも、かつて敗れたライバル──ネトルの戦いを見守っていた。


「「S.A.O.アクティブ!!」」

 

 続けて二人のそれぞれのS.A.O.(竿)がアクティベートされる。ネトルの元には金髪のガタイがいい高校生が。


 そして、マオのS.A.O.を見た者達は、皆一様に驚きを口にした。


『こ、これは──自身と共に多くの戦いを勝ち抜いて来た、相棒とも言える百戦錬磨のS.A.O.、〈金髪高校生〉をアクティベートしたネトル選手ですが、それに対しマオ選手が選んだのは……』


 そこに現れたのは、中肉中背としか言いようがない、覇気も何もないどこにでもいそうな普通の青年だった。


「〈フリーター〉……ッ!? 本気かマオ……面白ぇ!」


「俺はいつだって本気だ、ネトル!」


「いくぜえぇぇぇえっっっ!!!! 完全燃焼だあぁぁぁぁぁぁぁっっっ!!!!」


『そ、それでは決勝戦……NTRバトルスタンバイ!!』


「「NTR、ゴー!!!!!!」」


 先手を取ったのはネトルだった。


「スキルパッチアクティブ……〈ジム〉!!」


 NTRドライヴァーのスロットにセットされたスキルが発動し、フィールドにトレーニングジムが現れる。


『ネトル選手、早速自身の得意なフィールドに持ち込む!!』


 フィールドでは、新婚生活の幸せ太りを気にした〈新婚妻〉が、バイトの〈金髪高校生〉からジムのレクチャーを受け始めている。


『すご〜い! こんな重いもの持てるんですねぇ』


『ハハハ……お姉さんはとりあえず2kgでやってみますか。脚挟まないでね』


「新婚と言えど、歳の近い男から向けられる若い性欲には弱い……シンプルやけどネトルらしい、いいタクティクスや」


 観客席のゴローも喉を唸らせる。ネトルのタクティクスはいつだって単純明快だ。


 対するマオは……動かなかった。〈フリーター〉も自分の部屋から出る気配が無い。


「へへ、どうしたマオ。俺の〈金髪高校生〉は止まらないぜ?」


『さあ気付いたら既にネトル選手、ヒロインの家にピットイン寸前です!!』


「フン、流石の攻撃力だ……ならば俺は『これ』を使おう」


そう言って満を辞してマオがアクティベートしたのは……


「スキルパッチアクティブ……〈堕落〉!!」


「!」


「何!?」


観客がどよめく。


『こ、これは……なんとマオ選手、ここでダウングレードパッチ、〈堕落〉を使用ーーーーーッ!!』


〈堕落〉によって〈フリーター〉は〈ニート〉になってしまう。誰がどう見ても悪手だ。


(マオの事だ……何か策があるに違いない!)


この時既にネトルの中には嫌な予感が渦巻いていた。それをかき消すように叫ぶ。


「ならばその策が出る前に……ドッキングする(勝負を決める)ぜ!!」


〈金髪高校生〉は既に〈新婚妻〉を自宅まで送る関係まで行っており、ピットイン(家に上がる)は時間の問題だった。


『ネトル選手、さながら炎のような猛攻です!!! ピットイン(家に入る)を狙いつつ、〈金髪高校生〉の得意とする話術によってじわじわとマオ選手のNP(泣きシコポイント)を削っていきます!』


「〈新婚妻〉相手ならピットインはほぼドッキング(合体)と同義……。ネトルの奴、噛み合っているな」


「せやけどネトルの顔を見ぃ、アレが有利なヤツの顔か?」


観客席のゴローとピリカも、ネトルの焦りに感づいていた。


『このまま勝負は決してしまうのか──!?』


 その時だ。〈新婚妻〉が動いた。


 帰宅の際に誤って、自宅マンションの、隣の部屋のチャイムを押したのだ。


 そしてそれを、その一瞬を逃さない男がいた──マオだ。


「今だ……スキルパッチアクティブ、〈隣人〉!!」


マオ擁する〈ニート〉が、瞬時に〈新婚妻〉の家の隣に入居する。


『マオ選手、ついに動きました! 使用スキルは〈隣人〉です!! チャイムを押された〈ニート〉が顔を出す!』


『あ、お隣の……』


『ごめんなさい、お部屋間違えました! ……って、あなたボロボロじゃない! ちゃんとご飯食べてる?』


「ま、まさかこれは……ッ!」


 そこからはあっという間だった。〈新婚妻〉が、何かと理由をつけて〈ニート〉の部屋に入り、世話を焼き始める。


「やっと気付いたか、俺のタクティクスに!」


『これは……マオ選手、いつの間にやらネトル選手のピットインを阻止し、自身の領域に〈新婚妻〉をピットインさせています!』


「この〈ヒロイン〉において一番大事なファクター……それは旦那!!!! 考えろ、腐れニートと華のある学生、どちらに寝取られた方が旦那のダメージは大きい?」


「し、しまった!!! その為にわざわざダウングレードを……!」


「〈新婚妻〉が世話焼きタイプなのは織り込み済みだ! この布陣なら確実に『家に入ってくる』!!」


マオの策は、〈新婚妻〉を無理やり口説くのではなく、母性本能に訴えかけるものだった。


「確かにお前の〈金髪高校生〉は強い……。だがその強さの本質はあくまで『汎用性』!! 後輩にも人妻にも教師にも、あらゆる〈ヒロイン〉に対応できる万能さだ!!!!」


「グゥッ!!」


『ウィーッス』


「そう、つまり浅く広い……器用貧乏なんだ……! 認めよう、だからこそ、お前は俺が見て来た中では最強のNTRドライヴァーだ!!! だが、俺の〈フリーター〉……いや、〈隣の部屋のニート〉なら、『部屋に入る』というハードルを容易く飛び越え、新婚妻の庇護欲を最大限に刺激しつつ、無理なくNTRできる状況に持っていける!!!!」


「クソッ!! やばい、汚い部屋に二人というシチュエーション、そこらに落ちてるティッシュとか人妻モノのエロ本で俺のNP(泣きシコポイント)がガンガン削られていく!!!!」


「〈新婚妻〉が俺の〈隣の部屋のフリーター〉の部屋に入った時点で……お前の負けだ!!!!」


『逆転!!!! 圧巻の逆転劇です!!!! 万策尽きたかと思われたマオ選手、戦況を一気に覆しました!!!!』


ネトルは思わず膝をついてしまった。


「強ぇ……これがマオ! 凄まじい強さだ……ッ!」


膨大な計算による完璧な智略。このフィールドを掌握しているのは、既にマオだった。


「ダメなのか? もう……ッ!」


 その時、ネトルの脳裏に、幾つもの思い出が浮かび上がってきた。それは今まで戦ってきた強敵達の背中だ。そしてその先に──共に幾つもの戦いを並び立ってきた、〈金髪高校生〉の背中があった。


「〈金髪高校生〉……ッ!」


『ウィッス』


〈金髪高校生〉はこちらを振り向かずに、静かに頷く。


「そうか……ッ! そうだよな、俺が諦めてちゃ、だめだよな!」


ネトルの瞳に、再び勝利の炎が焚べられる。


「一緒にアイツを倒すぞ!」


『ウィーッス』


「うおおおおおおおおッッ!!!! 燃えろ、〈金髪高校生〉ーーーーーッ!!!!」


「な、なんだこのプレッシャーは!?」


〈金髪高校生〉がバルクアップをし、ボディビルダーのような体型を手に入れる。


『風前の灯かと思われたネトル選手、ここに来て再び立ち上がったーーーーーッ!!!!』


「フン、だがもう遅いッ! やれ! 〈隣の部屋のニート〉!!!!」


「いっけぇーーーーーッ!!〈金髪筋肉高校生〉ーーーーーッッッッッ!!!!!!」


凄まじい爆風と熱気がフィールドを覆う。二人の熱いNTR魂が共鳴し、NTR力場を形成しているのだ。


『お姉さん偶然っすね笑俺配達のバイトもしてるんすよ笑笑』


『えー、本当に偶然!』


『部屋着も可愛いっすね』


『またそんなからかって……お茶でも飲んでく?』


「「うおおおおおおおおおおおおおおーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!」」







「そこまでだ!! 哀れなNTRドライヴァー共!!」


 その時、上空から何かが飛来した。


「何ッ!?」


「貴様らは……ブラックNTR軍団!!!!」


 それは、黒装束に身を包んだ、闇のNTRドライヴァー達だ。


『お前ら、NTRバトルで世界を支配するとか言ってる……!!』


「左様! 我々はNTRバトルを現実まで拡張させ、NTRが罷り通る世界を作り出す!!」


闇のNTRドライヴァー達が、改造NTRドライヴを掲げながらそう宣言した。


「チクショウ、アイツらまだ生き残ってたのか!!」 


『観客の皆、避難誘導に従って逃げてくれーッ!』


「キャーーーーーーーッ! 寝取られるーッ!!」


「みんな逃げろーッ!!」


「こっちや!」


「押さないで!」


Mr.ネトリストや観客席のNTRドライヴァーが一般人の避難を指示する一方で、マオとネトルは黒衣のNTRドライヴァー達に相対していた。


「どうだ、根鳥ネトル、床山マオ。貴様らも我らと共に、NTRが罷り通る新しい世界を楽しもうではないか」


と勧誘する闇のNTRドライヴァー。


「フン、話にならんな」


「ああ、その通りだぜ。お前ら全然燃えねぇよ」


卑劣な勧誘に、二人の目に怒りの炎が灯った。


「何? 貴様らもNTRが好きだからこそ、NTRドライヴァーなどやっているのだろう?」


ネトルの、NTRドライヴを握る手が震える。


「くだらねぇ、実にくだらねぇぜ……そんな事で俺達の決闘に水を差しやがって……!!」


ネトルの周りの温度が上昇し始める。


「実際にやったら犯罪だろうがーーーーーーッ!!!!」


「よく言ったネトル! その通りだ、こういうのはフィクションで楽しむものだ!」


マオが、ニヤリと笑いながらNTRドライヴを構える。


「行くぞマオ! ユニゾンアタックだ!!!!」


「ああ、見せてやろう! 俺達のNTRを!!」


 二人のNTR魂の共鳴によって、ドライヴが光り輝く。


「「うおおおおおーーーーッッ!!!!〈3P〉ッッッッッッッッッッ!!!!」」


『あ、お兄さんも次使っていいよ笑』


『ううっ……ごめんなさい、奥さん……』パンパンパンパン


 NTR魂が質量となって、天まで届くほどの、唸り、荒れ狂う力場を形成し、邪悪なNTRドライヴァー達を吹き飛ばしていく。


「バカなァァァーーーーーーーッッッッッ!!」


須臾の静寂。


 そして、歓声が戻って来た。


「うおおおおおおお!!!」


「すげぇぇぇぇ!!!!」


「ユニゾンアタック……なんてヤツらや、ホンマ」


観客達もゾロゾロと戻ってくる。


「フン、やはりいいものだな、NTRは」


と、マオが何の気無しに呟いた。


「ああ、こんなに熱くて心が燃えるジャンル、他にないぜ!」


ネトルも笑顔で返す。


『ああ、まさか伝説の〈3P〉を拝める日が来るとは……! 私泣きながらシコってました』


Mr.ネトリストも晴れやかな顔で戻って来た。


 それを確認した二人は頷き合うと


「じゃあそろそろ」


「ああ、決着を付けようか」


再びお互いの顔を見合った。


「〈金髪高校生〉!」


『ウィーッス』


「〈隣の部屋のニート〉!」


『はい……』



『それでは皆さんご一緒に……』


「「「「「「「NTR、ゴー!!!!!!」」」」」





NTRドライヴァー達の戦いは、終わらない!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る