第11話

「おかえり〜って陽菜ちゃんじゃない久しぶりねぇ!いつも琉羽がお世話になってます〜。あがってあがって!」


目の前には、人の良さそうな女の人。琉羽のママだ。


家出少女と化している私がなぜ琉羽の家にいるのかという理由は、数時間前に遡る。


「陽菜メイク上手くなってきたんじゃない?」


休日の今日は、文音のママにおつかいを頼まれ、買い出しに来ていた。


「そうかな?」

「うん。ナチュラルになったと思…ちょっと待って陽菜。お母さんから電話。」

「うん。」

「もしもーし。うん。買い物は終わって帰り道だよ。え?うん。うん。分かった。まだ駅前にいるよ。うん。すぐ行く。」

「どうした?」


電話を切った文音に話しかけると、少し焦った顔を抑えるように小さく息を吐いた。


「おじいちゃんが倒れたって。お母さん迎えに来るって言うから駅のパーキングの近くに行こ。」

「えっ文音だけ行きなよ。そんな家族の大事な時に私が邪魔することできないよ。」

「大丈夫…?」

「早く行きな。」

「落ち着いたら連絡するからね。」


そう言って文音は荷物を持ったまま走っていく。


「さてどうしようか。」


送り出したはいいものの、やっぱりまだ家には帰りたくはない。


「陽菜〜!」


名前を呼ばれ目線をあげると、向かいのバス乗り場で手を振っている人がいる。

あのテンションの高さはきっと琉羽だろう。

特に逃げる必要は無いので、大人しくその場にとどまっていると、やっぱり琉羽が走ってくる。


「何してるの?」

「文音とおつかいに来てたの。」

「今はなんで1人?」

「家族の方に色々あって、私は遠慮したの。」

「じゃあ今日は帰るのか?」

「…帰りたくなくて困ってた。」

「じゃあ行こうか。」


急にそう言った琉羽は、私の手を引いて歩き出す。

そうして着いたのがこの折山家だったというわけだ。

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