第10話

「まず、痩せるのはいいとして、スキンケアとメイクを教えてください先生。」


メモ帳を広げ、期待に満ちた目で文音を見れば、彼女は得意げにエアメガネを押し上げた。


「よろしい。陽菜にはさっき一緒に買った化粧水と乳液がおすすめ。…ってビューティーアドバイザーの人教えてくれたからね。」

「びっくりした。テカリって脂性肌だからなるとは限らないんだって。私は混合肌覚えました。」

「うん。これは私のやり方だから陽菜はやりやすいようにやりなよ?まず、洗顔の時は、テカリが気になるところに泡を置く。あ、泡立てて洗顔してる!?しなきゃダメよ!それで、その他は泡が乗ってる時間をなるべく少なくする。洗顔が終わったら、化粧水から。はい、手出して。」


手を出すと数的の化粧水が落とされる。


「それを肌に乗せたらそのままぎゅっと押さえる。ハンドプレスって言うらしいよ。私は浸透してる感じがこのやり方はするから、こうしてるの。それをもう1回か2回やるんだよ。」


この他にも文音はたくさんのことを教えてくれた。

私にメイクを教えながら、"友達にメイクをするのが夢だったんだ。"と楽しそうな彼女はとても可愛らしい。


「よし。あとは、これもダイエットと同じくらい長期戦だけど、陽菜の天邪鬼を直さないといけないね。理解できないけど折山は女子に人気だから、早いとこ素直にならないと誰かに取られちゃうよ。」

「でもどうやって…?意識して天邪鬼やってるわけじゃないよ?」

「じゃあ折山に対して、1日1回はお母さんの代わりにされていると思うのを否定することから始めようか。」


"折山がちゅっちゅしてくるのは単に陽菜に懐いてるだけかもしれないし。"とウインクされる。


「そんなことある?」

「あると思いこみなさい。振り向かせたいんでしょ?自己暗示から始めようよ。」

「頑張る。」


グッとにぎり拳を突き上げた私の頭を文音は優しく撫でてくれた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る