第3話

「で、この土日も流されてちゅっちゅされてたわけね。」


親友の文音はため息まじりに呆れている。


「されてない。」

「まだされてないの?」

「まだって何よ。」

「まだはまだでしょ。あんな人気者にくっつかれて勘違いしない人いないよ?」


メイクをしながら気だるげに言う。


「私はしないぞ。」

「頑なだねぇ。好きな男相手だと言うのにさ。」


勘違いしないのは当たり前だ。彼が今まで誰とも付き合わなかったのは、母のことが好きだから。

彼は、多くの女子に好かれているし、告白された数は数えきれない。と思う。気遣いが出来るから近所のみんなからも好かれている。クラスでは元気で明るいムードメーカーだ。例えるなら人懐こい大型犬。

だけど。

2人の時の彼は例えるなら、例えるならそう狼だ。

私たち二人の間にあまり会話はないけれど、ただじっと見つめてくる時がある。

彼は、人懐こいその瞳に少しの憂いを含めて私を捉える。大抵、こういう時は息の仕方を忘れた魚の気分になる。

もちろん、魚になったことはないけども。


「期待するだけ損なんだよ。」

「なんで?ありゃどう見ても陽菜大好きじゃん。」


私がよく似ているお母さんが好きなだけ。

私の事なんか眼中にない。

中学生のあの日、そう悟った。

期待なんかするから傷つくし、心が痛む。だからもうそれはしないことにしたんだ。私は。

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