第2話

「陽菜起きてたんだ。おはよ。」

「うん…」


コンコンと部屋の扉を叩かれて目を開ければ、幼なじみの折山琉羽が顔を覗かせる。

彼は、休みでも構わず毎日私を起こしに来る。


「陽菜、今日の予定は?」

「何もないから寝かせてよ…土曜日まで起こしに来なくていいんだってば。」

「じゃあおれも一緒に寝る。」

「それはダメ。」


琉羽はムッとした表情をして寝ている私の布団に腰かける。


「今日はおばさん出かけるって。」

「琉羽は私のお母さん大好きだね。土日は会いに来てもいないよ。いい加減覚えなよ。」

「美紀(みき)さんに会いに来てるわけじゃないよおれ。」

「はいはい。おやすみ。」


もう一度夢の世界に旅立とうとした私を琉羽の右手が引き止めた。

「陽菜さ、おれたちが高校に入ったころから冷たくなったね。」


手を握りながら頬に長いまつ毛を触れさせてくる。


「やめてくすぐったいから。」

「くすぐってるんだよ。構ってもらえるように。」


琉羽は私の母が好き。いつも私を口実に母に会いに来る。

母に触れることは出来ないから、よく似た私に手を出しているのを分かっている。分かっていながら、幼い頃からこの男に好意を抱いてしまって、こっそり傷つくこともある。

それでも、彼のスキンシップに心は高鳴ってしまうのだ。

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