第23話 邪悪な予感の話

告げれたその対戦カードに俺達は動じることなく受け入れることが出来た。


むしろついに来たかと言わんばかりで、イルとシオンは目を合わせる。


大会は個人戦トーナメント。


優勝するということは同じチームメイトにも勝つ必要がある。


個人的には楽しみでもあり、不安でもある。


どちらも勝って欲しいし、負けて欲しくない。


どちらかが勝つということはどちらかの負けた姿を見るということ。


俺は覚悟していたが変な感覚に襲われ、ギュッと拳を握りしめた。


そんな俺の心を読んだのかリップがジャンプして俺の背中をバシッと叩く。


その目には〝しっかりせい〟というメッセージが込められていた。


そうだ、むしろ俺が1番見なくてはいけない試合なのだ。


どちらかが負けるという結果を受け入れる戦いをしなければ!


俺はリップの頭を撫で小さな声で〝ありがとう〟といった。


そして当人達もそれぞれの戦いを始める。


「ついに来たね、私絶対負けないよイル。」


先にシオンがイルに宣戦布告をする。


「私もそのつもりよ、戦うならアンタがいいと思ってたから。」


イルは凛とした笑顔で答える。


「それは私の実力を認めてるってこと?」


シオンはそう問いかける。


「いや、アンタなら勝てそうってことよ」


イルは余裕そうな笑みを浮かべてそう返した。


「なんだって!決めた、絶っっっっっ対勝つから!!」


早くもバチバチと火花を照らす2人であった。








その日の夜中俺は何だか胸騒ぎがして寝付けなかった。


俺は寝室を出て、縁側へと向かった。


そこにはビエーブとリップが先に腰掛けていた。


「アレンも眠れないんですか?」


ビエーブは俺を見つけるとやっぱいといった表情でそう言った。


「2人も何か感じたのか?」


考えてみれば感知能力の高い2人が揃っていた。


「ええ、なんだか変な感じがして………上手く言葉では言い表せないのですが…」


リップもビエーブも曇った表情で空を眺めた。


「なんだが、黒くておぞましいオーラを感じます。とても凶悪な……」


ビエーブもリップも緊張で顔を強ばらせている。


俺もなんだか胸騒ぎが収まらない。


凶悪なオーラ……まるであの時のような。








【大会当日】

相変わらず会場は多くの観客で溢れかえっていた。


イルとシオンはもうゲートに向かっており、俺とビエーブとリップはいつもの席に座っていた。


すると誰かが俺の肩に手を乗せる。


「やぁ、ロゼッタの謎の男君。」


聞き覚えのあるその声、振り返るとそこにはハイセンが立っていた。


ハイセンは少し微笑み軽く手を振っていた。


「あなたみたいな人が僕なんかになんの用でしょう?」


俺は警戒心を高める。


まさか俺の正体がバレてしまったのだろうか?


それとも仲間を2人ともウチが倒したからなんか物言いに来たのだろうか?


俺は目の周りに力を入れハイセンを眺める。


「そんなに警戒しないでくれ、ただ少し忠告しに来ただけだよ。あっ君はビエーブだね、昨日はウチのが色々とお世話になったね。」


なんだか掴みどころのないやつだ。


「それで用とは?」


俺は早くその場を切り上げたかった。


ハイセンなんかの有名人と長く絡んでいると、とても目立つ。


ハイセンは俺の考えが分かったのか、少し残念そうな顔をした。


「もう少し君とは話してみたかったんだけど、まぁ迷惑をかけに来た訳ではないからね」


そう言うとハイセンは顔を俺の耳元までグイッと近づけると


「今日多分良くないことが起きる、その時は君にも力を貸してほしい。」


と囁いて人混みに紛れてその姿を消した。


良くないこと……


昨日の妙な胸騒ぎと何か関係があるのだろうか?


今日のイルとシオンの試合が無事に終わればいのだが。








その時同時刻、武闘会会場の遥か遠くの森に魔物数百体の群れを観測。


その群れを率いる一際凶悪なオーラを放つ魔物が居た。


「今日は偉大なる1歩になる。」


そう呟きその魔物は飛び立った。



{あとがき}

次回は明後日9月4日の20時投稿予定です。


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今回は短めになってしまい申し訳ありません。

m(_ _)m

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