第14話 魔剣お披露目の話

「シャロル・シャーリーだと」


俺は登場したその不気味な仮面と鮮やかな紫のローブを着けた謎多きその魔術師のことを知っていた。


「知ってるの?どんな人?」


イルが俺に尋ねてくる。


「シャロル・シャーリー、アイツは現在もっとも長く生きている魔術師と言われている。滅多に人前に出ないやつが、どうしてここに…………」


「なんか凄く強そうですね。魔力コントロールが完璧なのか、とても洗練された美しい魔力を感じます。」


ビエーブはシャロルの魔力を強く感じているようだった。


シャロルは掴みどろの無いやつで、何を考えいるのか分からないところが結構ある。


だけど頭が良く経験が豊富なため、勇者時代は時折助けられたものだ。


だけど、やつは味方でも敵でもないと言っていた。


俺はシャロルについて話し始めた。


「シャロルは魔術師でありながらメイクウィズの素養も併せ持っているんだ。」


「魔術師兼メイクウィズなんてそんな人存在するの!?」


イルもビエーブもかなり驚いていた。


「ああ、そして何を隠そう俺が刺された宝剣シャーリーの製作者だ。」


「そんな!?話を聞く限りとてつもない能力を持っている剣が人の手によって作られたのですか!?」


「そうだ宝剣は〝子宝の剣〟とも言われ、人の手によって生み出された魔剣に匹敵する力を持った剣のことなんだ。」


「そんな凄い人がどうして代打出場なんて…と言うか代打出場ってなによ!そんなのルールにないじゃない!?」


イルはかなり憤慨していた。


それもそうだ代打出場なんて本来認められていない。


なのに急遽代打出場を認め、しかも相手はシャロル。


他の冒険者ならまだしも、アイツはハイそうですかと人の言うことを聞くようなヤツじゃないぞ。


誰がなんの目的で送り込んだんだ?


俺の頭にイルを賞賛していた時のレックスの顔が思い浮かぶ。


レックスが………いや、でもアイツもシャロルの厄介さは知っているはずだ。


やつならもっと手頃なやつを使うだろう。


それに恐らく黒幕の狙いはロゼッタが全員が、本戦出場することを食い止めること。


シオンは運良く今までC以上の冒険者とは当たっていない。


俺が黒幕だったら、当たりよく上がってきたプラス魔法が使えないということからシオンを狙うだろう。


そんなことをレックスがして何になる?


俺への嫌がらせのつもりか?


いやでも、俺がロゼッタにいることすら把握していないはず……


俺は大方の目的は分かったが、レックスが黒幕とは確信出来なかった。


ロゼッタが本戦に出場することを嫌がる人物……









観客席は代打出場という前代未聞の出来事に全員が困惑していた。


そして少しずつ抗議の波が広がる。


「おいおい!そんなのありか!?」


「それ認められるんだったらなんでもありじゃあないか!?」


「でも全員ロゼッタ本戦出場もなんか癪だな」


「いいぞーそのままやっちまえ〜」


「おいBの代打はせめてBだろ!?」


「不公平だぞ!?」


「シオンの勝ちでよくね?」


そんな声が観客席から飛び交う。


俺達はそんな光景見て正直驚いていた。


今までだったら全員ロゼッタを潰せの方向に声を向けていたはず。


けれど観客の中には不公平さを訴える者もいたのだ。


それはつまり俺達の存在を認めてくれる人達が増えたということ。


今までの活躍から俺達を選手として認めてくれる人達もいるということ。


「すご、ちゃんと抗議してくれるんだ……」


「ええ、正直誰もシオンの味方になってくれとは思ってませんでした。」


イルもビエーブもその光景に呆気に取られていた。


だけど、俺達は今抗議してくれている人に申し訳ない気持ちになる。


だってシオンは、あのバカは恐らく………


「ハイハイ!私戦いたいでーす!!」


シオンは腕をピンとのばして綺麗な挙手をしてそう言った。


観客席は騒然とする。


イルがAランクに特殊な条件でやっと勝ったのに、自分からしかも魔力を持ってないシオンがAランク魔術師と戦うなんて自殺行為にしか見えないだろう。


「シオーン何やってんだ!」


「不戦勝でお前の勝ちだろー!?」


「こんなとこでバカを発揮すんな!!」


観客席から助けてるのか罵倒しているのか分からない声が上がる。


だけど、すまない観客のみんな。


シオンは絶対そう言うと思っていた。


きっとイルもビエーブもリップも分かっていたのだろう。


みんなやれやれと言った顔で首を振っていた。


恐らく何を言っても無駄だろうと。


「魔術師ってことはすごい沢山魔法使えるってことでいいですか!?」


シオンは大きな声でシャロルには話かける。


もちろん返事はない。


「言うまでもないってことだね?よしきた!」


シオンは自分の中で話を完結させ、今まで1度も取り出さなかった、小刀を取り出す。


そしてそれを俺の方に向けてブンブンと振り回す。


「ハイハイ、それを使うのね………」


何故か俺が恥ずかしい気持ちなる。


「ねぇ、ずっと気になってたんだけどあの剣一体何なの?鍛錬してる時1度だって使ってるとこみてないわよ。」


イルが当然の質問を投げかけてくる。


「まぁ、見てればわかる。けど1つ言えるのは今のシオンにとって魔術師は最高の相手だな。」


「最高の相手?いやでもシオンは魔法が使えないから魔術師って1番相性悪いのではないのですか?」


ビエーブの質問に待ってましたと言わんばかりの得意顔で俺は答える。


「フッフッフッ、私がそこを対策しないとでも思うてか!?」





シャロルは無言でリングまで上がると、杖を取り出す。


その杖は真っ直ぐではなくグネグネと曲がりくねっていた。


「うわぁその杖取り出すとき引っかかって大変そうですね?」


シオンは緊張感のない会話を繰り広げる。


「私魔法使えなくて、ずっと剣と体術なんです!」


何が楽しいのか無言の相手にひたすら話しかける。


「でも負けません!?………あ、私シオンって言います以後お見知り置きを」


シオンはしっかりと頭を下げて礼をする。


その時カーンとゴングがなった。


雷系魔法アレル


シャロルはそう言うと杖を3回ほど振る。


その声は若い女性の声のようだった。


シャロルの魔法により礼をしているシオンの3メートルほど上空に複数の魔法陣が出来る。


「危ない!?」


ビエーブは気付くとそう叫んでいた。


その魔法陣から落雷が降り注ぐ。


それはシオンの姿が見えなくなるほどの量だった。


「そんな直撃だなんて……」


イルもビエーブもリップもその光景にショックを受けていた。


だが


「大丈夫だ、ほらよく見てみろ」


俺はシオンを指さす。


シオンは全くの無傷であった。


その光景に会場がどよめく。


「今の完璧にあたってたよな!?」


「シオン避けてる感じしなかったし」


「外したのか!?」


「バカ、Aランク冒険者がこんな距離で外すわけないだろ」


俺以外のロゼッタのみんなももちろん驚いていた。


「今の練習だったら完全ヒットですよ」


「何が起こったのよ。」






「ふぅーめちゃくちゃ急にはじめますね!静電気ヤバそう、私今日金属触れないかも………ハッまさかそれが狙いで………」


ひたすら喋るシオンを無言で眺めるシャロル。


確かに当たったはずだがこの様子。


一体何が起こったのか長く生きてきた自分でさえ分からなかった。


そしてもう一度魔法を放つ今度は確実に仕留めるために。


水流系魔法喜槍


今度はシャロルの周りに無数の小さな魔法陣が出来上がり、そこから槍の形をした水がシオンに襲いかかる。


「うわぁ!」


シオンはそう言いながら後ろに飛び跳ねる。


喜槍の何本かは地面に突き刺さる。


しかしあと数本が空中にいるシオンに向かって飛んできた。


捕らえた。


誰もがそう思ったはずだ。


俺とシオン以外は。


シオンはずっと左手に持っていた小刀で喜槍に切りかかる。


「魔法は切れないわよ!」


ビエーブがそう叫んだその時


スパンという快音が会場に響き渡る。


すると真っ二つに切れた喜槍が力なく消えていく。


「え?」


会場のみんなそう言いうと、口をあんぐりと開けて身動きひとつとらなかった。


「魔法を切った?」


ビエーブ、イル、リップは目を丸くしてその様子を見つめていた。



{あとがき}

次回は明日の20時になります。


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今回は少し短いです。すみません。

次回はシオンの魔剣の力が明かされます!

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