第8話 お買い物その2

さて、どこに行こう。自分のものならユニクロでいいんだが流石に他の人に渡す物をユニクロってわけにはいかないだろう。いや、知らんが。

そうだな、まあイオン本体のとこに行くとするか。


入りずらい。流石に、女物しかも目の前には下着コーナー。前にいるだけで、周りから変な視線が集まってるような気がする。勘弁してくれよ。

どうしたものか。

「あのー。お客様、どうなさったのでしょうか」

店員に声をかけられた。これは、恐らく、買い物の手伝いをしようかというニュアンスよりもこんなところで何やってんだこの変態がとっとと失せろ、そんな感じのニュアンスの方が主だろう。

「妹に、髪留めを買ってきてくれって言われたんですが、少し入りずらいんで」

女友達って言おうと思ったがなんか、はたして鈴佳は友達なのかと思ったから咄嗟に嘘をついてた。

すると、ふふ。

店員がそんな感じの反応をした。恐らく、さっきのは俺への最終警告のつもりでダメなら警察通報とか考えていたが、なるほどその可能性もあったのか私ったらうっかりみたいな感じの反応だろう。

「だったら、お気になさらなくても大丈夫ですのに。そういったお客様も時々いらっしゃいますよ。例えば、女の子の友達にプレゼントようにみたいな方とか」

まさに、俺のことじゃねぇか。とはいえ、さっき嘘ついたから俺もですとか言えないが

「そうなんですか」

「あら?お客様もそうではなかったのですか?」

バレてた。なんでだ。

「どうして?みたいな顔してますが、分かりますよ。だって、妹は普通、お兄ちゃんに髪留めなんて買ってきてなんて言わないですし。言うなら、お母さんですよ」

そうなのか。だが、この人の思いのままってのは腹立つな。

「いや、俺はホントに妹に頼まれたんですけど。うちは母が、こないだ母が死んだんで」

まあ、嘘だが

「言葉を選んで欲しかったです」

「これは、申し訳ありませんでした」

「嘘ですけど」

「はぁ、ぶっ殺すぞ」

店員が、客にぶっ殺すって言うかよ。まあ、俺が悪いんだけどよ。

「でも、そんな人もいるかもしれないから、さっきみたいなこと言わない方がいいと思いますよ」

「それは、そうですね。以後気を付けます」

いい顔だ。スッキリした。

しまった、この人と一緒に行けば周りから変な目でみられることはないのに。

「あの~。申し訳ないんですが、髪留め売り場まで一緒に」

「嫌です」

だよな~。

「因みに、髪留めはこの下着コーナーの奥にありますよ。では、私は他にも仕事があるので」

マジか、ここを通っていかなきゃならないのかよ。

「ありがとうございました。では」

うじゃうじゃしてても仕方ない。行くか。

うおおおおお

やっぱり、痛い。周りからの視線がヤバい。くそっ、あの店員は楽しそうにこっちをみてやがる。もう、二度くるもんか。

どんどん視線が集まってくる。だが、あと少しだ。あとちょっと、あとちょっと。もう少しでここから逃げれる。

「零斗?あんた、何やっての」

急に、肩に手を置かれたと思うと後ろには冷え切った目でこっちをみる越崎の姿があった。

あっ、コレ終わったわ。

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