第5話 韻夢の家へ
今度こそ、ふう先も帰ったし韻夢の家にいくか。と、その前に何かコンビニで買ってから行くか。アイツに同じ事言われたらキレる自信がある。
そうして、俺は某営業時間詐欺店に行った。そこで、おにぎり2つとパンを1つと、ポテチを1つ買った。因みに何故、弁当を買わなかったかというと、この店は弁当の量が年々、減っていっているのでこっちの方が腹が膨れるからだ。
「うまい、うまい」
おにぎりは俺の好きな鮭と新発売のたこめし味を買ってみた。それが思いの外、うまかった。これはリピート確定やわ。パンの方は逆にちょっと残念だった。外から見ると具材がはみ出て旨そうだったのに、残念ながらそれは具材を前に寄せてたからだったらしく寧ろ内容は少なかった。くそ、失敗した。不味くはなかったので口直しではないが、近くの自販機で好物のメロンソーダを買っていった。
「じゃまあ、するぜ」
バタバタバタバタ。鍵が掛かってなかったのでインターフォンも押さず入ったからだろう、韻夢が走ってきた。
「はあ、はあ。なんだよ。来るなら連絡ぐらいくれよ」
「悪い、悪い。でも、お前との連絡手段ないし」
「そうだったな。はぁ、仕方ない今回は許すが今度からはちゃんと連絡くれよ」
「ああ、ならLINE交換しよう」
「お前、LINEやってたのか意外だな」
「俺も、LINEぐらいやってるよ」
ついさっき始めたばかりだけど
「そうか。だったら、交換するか」
さっきのふう先とやったのと同じようにこいつとも交換した。
「なんだよ、アイコン初期設定のままかよ」
「そうだよ」
「はあ、やっぱりお前は生粋の淫夢中だな」
「お前に至っては名前がいんむだろ」
「これに関しては親に言ってくれ。できちゃった婚を自分たちがしたから、淫らなことから離れた存在になるように淫夢。それはちょっとアウトだから韻夢にしたって、てきとうとかそんな話じゃないだろ」
夢とは現実から最も離れたものだから、離れる事を意味するってわけじゃないのに、寧ろ逆に近付こうという意思すら感じる。コイツの親を馬鹿にするつもりはないが、キラキラネーム(韻夢はキラキラより汚いだと思うが)をつける親はもっと子供の事を考えてられないのかと思う。
「でも、そのおかげで俺と話すようになったんだろ。良かっただろ」
「まあな」
ふざけて言ったのに、真顔でそんな事を言われたら困る。
「ほれ。土産だ」
話を逸らすために買ってきていたポテチを出した。
「サンキュー。零斗」
ポテチはコイツの大好物だ。初めてコイツの家に遊びに行ったときも腹減ったとか言いながらポテチを食っていた。
「あんまり、食い過ぎると太るぞ」
「太るだなんて、男の子にそんなこと」
「太るっていったらダメなのは女の子だろ」
「そうだったっけ」
「そ「そうだよは止めろよ」」
くそ、行動パターンバレてんじゃねぇか
「やりますねぇ」
おふざけはここまでにしてちゃんと本題を話すか
「なあ、韻夢。鈴佳の事だけど」
「何、お前。鈴佳のこと好きなの」
「違うけど。ちょっと気になる事があってな」
「何があったんだよ」
「分からないか」
「正直ピンときませんね」
もし、二重人格について知ってるならここで何か言ってただろう。コイツ、割と勘はいい方だから。
「で、何があったんだ」
「今は、まだ話さない。お前の力が必要になったら話すさ。お前の使い所はちゃんとわかってる」
「なら、俺に出来ることは何だ。珍しく、お前が動くって事は中々、大変なことなんだろ」
「おい、おい。その言い方だとまるで、俺が今まで数多くの難題を解決してきたヒーローみたいな言い方じゃねぇか」
「はは。それ、誰だよ」
「そんな奴じゃない事は自分でも分かってる。だったら、何であんな事を言ったんだ」
「果たせなかったあの約束を果たすため。かな」
何の話だ。全く分からない。
「なんだよ、あの日の約束って」
「覚えてないか」
韻夢が少し悲しそうな顔をする。
「悪いな」
「お前が気にする事じゃないよ」
「でも」
「いいんだよ。零斗。それで、お前はいいんだよ。それよりも鈴佳の事だろ」
「そうか」
ホントは思い出さないとダメなんだが、正直それより鈴佳が優先だ。
「じゃあ、アイツが放課後いつも何をしているか知ってる限り教えてくれ」
「……分かった。アイツは……」
「いや、お前なんでそこまで知ってんだよ」
「まさかストーカーか?」
「ちげえよ。ココに来るのが俺とアイツの2人だけだったから、色々話してただけだ」
「そうか」
「そうだ」
「よ」
「……はぁ?」
また、やった。淫夢の癖、どうにかしないといけないな。
「あっ、いつもの奴か」
「そうだよ」
「……もういいよ。用はそれだけか。なら、折角だから何かしないか」
何かって、いわれてもな。正直、それより鈴佳の事だが、協力してもらったんだから断りにくい。ちょっとだけやったらすぐ帰ろう。確か、コイツは野球を小4ぐらいの時に一年ぐらいだけやってたハズだ。
「なあ、韻夢。お前、まだグローブ持ってるか?」
「もう捨てたよ。流石に小さくなった」
そうか。なら何をしようか。そういえば最近みた、アニメでバスケをみて久しぶりにやりたいと思ってたしこれにするか。
「じゃあ、バスケはどうだ?」
「なあ、バスケって2人でやって楽しいか」
あっ、そうか。ならどうしようか
「お前、こういうところでバカになるよな」
「なんだとお前。今まで、俺にテストで勝ったこと殆どないだろ」
「バーカ。そういう話じゃないわ
まあいいや、じゃあゲームしようぜ」
「いいぞ。何するんだ」
「これだ」
韻夢が出したのは有名な格闘ゲームだった。これは、俺が小さい時にハマってたゲームの最新版のようだ。あんまり、操作法とかは変わってないから十分楽しめそうだ。
「ほら、コントローラだ」
「負けた方は今度ジュース奢りな」
「のぞむところだ」
勝負事でコイツに負けるのは腹立つ。負けられねぇ
が、結果は8勝12敗で俺の負けだった。流石に、ブランクが長すぎたようだ。
「零斗。もうそろそろ、親が仕事から帰ってくるだけど」
「えっ、もうそんな時間か?」
「時計、見てみろよ」
「6時かよ。早いな」
「そんなもんだろ」
「お前が来たのが4時過ぎだったし。途中、ちょっと勉強もしたし」
コイツの家に想定より長居していたらしい。ふう先に明日にはどうするか伝えないといけないのに。速くかえらないと。
「じゃ、また明日な」
そう言って家から出ようとすると
「あんまり、無茶な事するなよ」
淫夢に一声かけられた。
「俺が自ら危険な事なんてすると思うか?」
「そりゃ、そうか。じゃあな」
「ああ」
今度こそ、俺は韻夢の家をあとにした。
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