第4話 不思議な先輩
「ねえ、君!何してるの?」
10分ぐらい経った頃にそんな声が聞こえた。
そうして、振り返るとちょっと茶色かかかったショートカットの先輩と思われる女の人がいた。
「雑用ですよ。先生にやらされて」
「君、一年生でしょ。いきなり、そんな事やらされるって何したのよ」
「寝てただけですけど」
「入学初日から寝るって凄いし面白いね
君、名前は?」
「如月零斗です」
「零斗くんかあ~」
君はやめてくれ。そう言おうとしたが、この人からそう呼ばれても嫌な気持ちはしなかった。むしろ、なんかしっくりきたのでやめて、もう一つの思ったことを言った。
「先輩の名前はなんですか?」
「
「ひどいなあ。でも正直、俺も苦しかったんでありがたい」
「お姉さんが手伝ってあげよっか?」
「平気。これは、俺の仕事。ふう先輩の仕事じゃない」
「ふう先輩……
せんぱい。いい響きだぁ」
「そっちかよ。ふうの方を気にするでしょ普通」
「あ、そっか。でも何となく分かるじゃん」
この人、凄いわ。言葉に出来ないけど。
「さっき君、私の仕事じゃないって言ったよね?
違うよ、しっかり私の仕事。私の部活だよ」
「部活?」
「そう、部活。
「うきぐもぶ?なにすんのソレ?」
「空に浮かんで自由きままに彷徨う雲のように学校を彷徨い気のむくままに部活の助っ人とか困ってる人を助けたりするの」
「ふう先って、優しいんだ」
「優しくなんてないよ。ただ、家に帰ってもする事ないから学校にいてやりたいようにするだけ、さっきはカッコつけたくて人助けなんていったけどそれも暇つぶしに良さそうだったからしただけだよ。ってなによ、ふう先って。私は、空飛ぶゴムじゃない」
「ごめん、ごめん。でも、そんな部活よく先生に認められたもんだ」
「それに関しては私が先生と仲良かったっていうのと結果として学校の助けてになるからいいってさ」
「できとうだな、おい」
「どうする?私は君の事が気に入ったから、もっとお喋りをしたい。そのついでにさ、その雑用してあげる」
「なら、ありがたく頼む」
「はい、任されました。何したらいいの?」
そうして俺は、小木先生から頼まれたデスクを説明した。デスクとか意識高い系かよ。脳内で言っただけとはいえ恥ずかしい。
そこから15分ぐらい、ふう先と喋りながら仕事をしていると残りは数学の教科書といわゆるワークが残った(あの人、教科書っていってたのに、ワークとか参考書とかまであった。許さん)
「あと、ちょっとだね」
「ふう先、ありがと。残りは俺1人でできるからもう帰っても大丈夫」
「ちょっと、なんで私の行動を君に決められないといけないのよ。言ったでしょ、私はやりたいようにしてるだけ。だから、最後までやるよ」
「じゃあ、お願いするわ」
そこから、最後はふう先が俺の中学時代のことを色々、聞いてきた。俺の通ってた中学は県内でもそこそこ有名なところだったので、どんなものか気になったんだろう。
「それで、それで?」
「あっ、終わった」
「そうだね……。ねぇ、零斗くん。ちょっと、私に付き合ってくれる?」
今まで手伝ってもらったのだから断るわけにはいかないので
「大丈夫。何すればいい」
と、肯定の意を示した。
「じゃあ、付いてきて」
言われるがまま、ふう先についていった。
辿り着いたのは、職員室だった。
何で職員室?そうきこうとしたが、その前に
「ちょっと、待ってて」
そう言って、ふう先は職員室にまった。
ふう先の考えてることが全く分からないので、それを考えているとあっという間にふう先が戻ってきた。なにやら、手には一枚のプリントを持っていた。
「なにそれ?」
「何だと思う?」
「分からないから聞いたんだよ」
「いいから、いいから。当ててみて」
「うーん。
まさか、さっきの行動にキレた。小木先生が集めた、俺の退学に関する署名書みたいなものか」
「そんなわけないじゃん。それだけのことで」
「しってる。言ってみただけ。で、答えは?」
「これはね。なんと」
「なんと?」
「入部届けでーす」
「入部届け?」
「うん」
「どうしてまた、そんなものを?」
「言ったじゃん。私、君の事が気に入ったって。だから、私の部活に入らない?」
断ろうと思ったがこの人なら鈴佳の件で何か力になってくれるかも知れない
「分かった。でも、一つ条件がある」
「いいの?」
「ああ。但し、条件を飲んでくれたらだが」
「いいよ」
「内容聞かないのか?」
「うん。言ったでしょ。私はやりたい事をやるだけだって。
今、私がやりたい事は君を浮雲部に入部させること。だから、私にできる事ならやるよ。あっ、でもエッチな事はダメだからね」
「そんな事しないわ。俺もそうならない様に気を付けるつもりだが、危険な事かもしれない」
「危険上等。私がいなかったら君は1人でそれをするんでしょ?2人の方がいざって時は安心だよ。それに、1人だったら困る事があるんでしょ?」
「ありがとう。助かる。でも、場所を変えたい。どこかない?」
「じゃあ、部室に行こう。
ついてきて」
ふう先についていくと着いたのは210教室。つまりはさっきまでいた部屋の横だ。
「せまっ」
「文句言わないの。こんなよく分からない部活に教室があるんだから感謝しないと」
「そんなこと、俺には関係ないだろ」
「なによ、文句あるの」
「ないです」
「なら、よろしい。それで、話があるんでしょ」
そうして俺は、鈴佳の事について話した。俺の幼なじみで二重人格かもしれないということ
…………
「分かった。手伝うよ。力になれるかどうか分からないけど出来ることからやってみるよ」
出来ることなんてないから諦めろ。もしかしてら、そう言われるかもしれないと思ってた。でも、ふう先の言葉は思ってたものと違った。
「無理だ。何も出来ない。そうは言わないのか」
「無理かどうかなんてやってみなきゃ分からないでしょ。何かあったら、取り敢えずはぶつかってみる。それが私のポリシーだよ」
「行き当たりばったりっていうんだそういうんだ」
「そのおかげで君は、ちょっと頼りないかもだけど1人の協力者を得られた。良かったじゃん」
「ホント、助かる」
「じゃあ、取り敢えず君は今から仮入部ね。それで、鈴佳ちゃんの件が解決したら本入部をする。でも、その前に私を役立たずだと邪魔だと、そう思ったのならその前にやめてくれていいよ」
「そんな事にはならない」
「じゃあ今から、本入部しとく?」
「それとこれとは、話が違う」
「全く君は」
「でっ、どうする。ふう先」
「私はちょっと考えが浮かんだけど先に、君の意見をきかせてよ」
「なら。俺の考えは、まずは鈴佳と同じ中学だった奴らに俺がいなかった時のことをきく」
「俺がいなかった時って……
なんだか、鈴佳ちゃんが君なしじゃダメな子みたいにきこえるよ」
「そんなつもりはなかったが。まあいい。で、次は少しの間、アイツの事をつけてみる」
「ダメー!
女の子をストーカーとか何考えてるの!ダメダメダメ」
「分かってるさ。それぐらい。でも、だったらどうするんだ」
「そのストーカーの目的は橘さんの人格と話をするって事だよね。だったら他に方法はあるでしょ。例えば、どこかでちょっと長めの合宿をするとか、他にも色々あるはずだよ」
「そのためだけだったら、俺もその方法を選んだと思う。でも、他に気にしないといけない事が今回はある。もう一つの人格の鈴佳が何人かの男と喧嘩をしてたらしい。それに怒ったそいつらが鈴佳を襲ったり、逆にもう一つの人格の鈴佳が他の奴らとまたやりあう可能性もある。そういう場合に俺が対処できる位置にいた方がいいはずだ」
「分かってるの君。それって、とっても危ない事なんだよ。君の力は知らないけど、何人もに攻められたら絶対に負けちゃうよ。君が傷付くのは嫌だよ」
まあ、正論だ。俺1人の力で出来る事なんて限られてる。だからといって、何も出来ない事はない。いざとなったら……
「大丈夫だ。危なかったら、鈴佳を連れて逃げるし、鈴佳が暴れてたとしても女のアイツには流石に負けない。多分」
「多分って……
はあ……。分かった。君のストーカーを認める。でも、私もついていく」
「心配しなくても、何もしない」
「それも心配だけど、私が心配してるのは君の事だよ。私、こうみえてもスポーツ少女だったんだよ。多分、何かの役に立つ」
「そんな危ない事、ふう先がする必要なんてない」
「あれ?言わなかったっけ。私はやりたい事をやるだけ。だよ」
多分だけど、断る事はできないだろう。この人は折れないだろう。それに、この人なら、なんかなんでも出来そうな気がする。一人じゃなにかと困る事あるし。
「はぁー。分かった。じゃあ、今から作戦会議をしよう」
「☆作戦会議☆いいね。やろうやろう」
「取り敢えず、今日のうちに鈴佳の家とか、通っている塾とかを調べてみようと思う」
(ホントはアイツの家の場所は知ってるけど、なんかそれを言ったらまたふう先に何か言われそうだから知らないふりをする事にした)
「やってること、本物のストーカーじゃんか」
「やめてくれ。自覚はちゃんとある」
「でも、鈴佳ちゃんと君は仲良いんでしょ。多分、許してくれるよ」
「俺もそう願うよ」
「ねえ。単なる思い付きだけど、鈴佳ちゃんにその事を伝えてみるっていうのはどう?」
「それはダメだ。優しいアイツなら人の事を気付けたことにショックをうけるはず」
「そっか。君、鈴佳ちゃんの事よく知ってるんだね」
「そうだ…じゃなくて、ああ」
危ない、危ない。淫夢発動するとこだったわ。
「さっきのなに?」
「気にしないでくれ」
「まあ、いいや。その件に関しては君に任せてもいい?」
「もちろん。必要以上にこのこと広げたくないからな」
「じゃあ、頑張って。バイバイ」
ふう先が手を振ってたので振り返した。
「ダメだよ、君。ちゃんとバイバイとか、さようならとかちゃんと言わないと」
「じゃあ、バイバイ」
「よくできました」
「ガキじゃないから」
「ふふ」
ふう先輩は年上の余裕のようなものを感じさせる爽やかな笑みを残して去っていった。
「さあ、ここからどうするか。取り敢えず、淫夢と連絡とるか」
そう思ったけど、そういえばアイツのLINEもってなかったわ。いや、アイツどころかそういえばインストールもしてなかったわ
「しゃあ、ない。直接、家に行くか」
そう思い、部室(仮)から出ようとすると勝手に扉が開いた。
「そうだ君。君のLINEもらってなかった。ちょうだい」
「あ、悪い。LINEやってないんだ」
「うっそ、ありえない。君って本当に高校生になってるの」
「そんなこといったって」
ぐぅー
あっ、なんでこんな時に腹がなるんだよ。そういえば、もうこんな時間なのにまだ昼飯、食べてなかった。
「ん?どうしたの?」
ふう先はきょとんと不思議そうな顔をしている。良かった。気付かれてない。
「いや、なんでもないよ。今から、インストールするから待っててくれ」
そういって、俺はLINEをインストールした。その際中にも、腹が何度もなっていた。超恥ずい。
「おっ、できた」
「じゃあ、もうすぐだね」
名前を入力してっと。アイコン?まあ、めんどくさいから何もしなくていいか
「オッケー?」
「ああ、多分。オッケー」
「じゃあ、この右上のボタンを押して」
「分かった」
「じゃあ、私がコード出すから。君が読み込んで」
へぇ~。LINEってこんな感じでやるんだ。そんな事を考えている余裕はなかった。腹がなるのを塞ぐのに精一杯だ。
「ふうちゃん?自分で、ちゃん付け?」
「いいでしょ別に。他の子だって、やってるよ」
ブゥー
着信音と共に、ふうちゃん笑からメッセージが届いていた。
『そういう、君は硬すぎるよ』
直接言えよ。
『しゃあねぇだろ。初めてなんだから』
「よし、これでLINEも交換できたし今度こそ帰るよ」
ふぅ。どうにか、気付かれずにやり過ごせた。
「あっ、そうだ。君、さっきからお腹なりすぎ」
きこえてたのかよ。
「そういうのは気付かないふりを最後までするか、その場でいうかどっちかにしてくれ」
「ふふ。じゃあね」
今度はさっきよりも悪戯な笑みを残して、ふう先は帰っていった。
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