第4話 意識がとぶのも慣れたもので
そうこうするうちに滝の麓までたどり着いた。遠くから見えていただけあって近くまで行くと異常に大きな滝であることがわかった。
「のう主人様よ。そろそろ水浴びでもしてこられ」
ニヤニヤ笑いながら扇子で滝壺を示し行ってこいと手をひらひらとさせる。エメラダ可愛い。
「・・・確かにもう1週間ほどは風呂に入っていないので臭いますよね・・・」
いささか恥ずかしくなった私は足早に滝壺に向かって走っていく。後ろでエメラダが爆笑している理由も知らずに。
目の前に広がるのはとても澄んだ水だ。神々しさすら感じる。急いで来ていた服を脱ぎ捨てると水面に向かって飛び込む。これでも泳ぎには自信があるのだ。
「・・・ふう」
水面に浮きながら体をタオルで擦るとボロボロと垢が出てくる。頭まで水に浸かり髪の毛や頭皮を擦ると周囲に汚れが広がっていく。滝からの水の流れがあるおかげで数分もすれば綺麗な水辺に戻るのが救いといえば救いか。
「なんかあったかい」
水温が温かいのかと先ほどまで思っていたのだが、全身が綺麗になると体の内側から暖かくなってくる。異常に喉が渇いたので顔を水面に突っ込んで水を飲む。その瞬間体の中の熱が加速する。異様なまでの体内の熱さと心地よい熱の奔流に私の意識はそこで途切れた。
「・・・・何回目かなぁ」
目を開けるとそこは知らない・・・いや知ってる胸の下だった。
「起きたかえ主人殿」
エメラダがそう聞きながら顔を覗き込んでくる。必然的に幸せで死にそうになるのだが、呼吸ができないので本気で死にそうになる。圧は強し。エメラダの胸の下から転がり出ることでことなきを得る。
「あれは
呼吸を整えながらそういう私に向かってエメラダは頷く
「あの規模の水量が全て
そう言いながら空中に光で周辺の地図を描いていくエメラダ。器用だ。
「主人殿が落ち着くまでの間に使い魔を飛ばして周辺を探索していたんじゃがの?どうやら15キロより上にはなんらかの力が働いておっていくことは叶わんかったのう」
エメラダが描いていくれた地図によると半径20キロほどの円柱状の山のから滝が流れていることは確認できたが、山の頂上には行けなかったとのこと。
「いや上空15キロまで続く円柱状の山て」
驚く私にいかにもいかにもと頷くエメラダ。
「さて主人殿よ今後はどうするかえ?」
空中で横になりながらエメラダはそう聞いてくる。どこから取り出したのか煙管からタバコの煙を燻らせている。あなたの胸の谷間は無限収納か。手を突っ込んでもいいですか。
ついつい意識がいってしまう胸元から目を離し周囲を見渡した私はあることを思いつきリュックからあるものを取り出す。
「・・・・・今から家を建てましょう!」
リュックから出てきた全高3メートルほどある無骨な鎧をバシンバシンと叩きながら朗らかな笑みでエメラダにそう告げた。ニコニコしながら手を叩くエメラダが可愛かったのは秘密だ。
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